「ナチスが月から攻めて来た!」というスゴイ設定のSF映画『アイアン・スカイ』を観てきました。

ちょうど先日、テレビ東京の深夜枠で『ブラジルから来た少年』を観たばっかりですが、
こちらはナチスの残党がその科学力で「ヒトラーのクローン計画」を作り出そうとする作品でした。
そしてこの映画から34年後、彼らは遂に「月面第四帝国」を作り上げてしまったのです!(笑)
…時は2018年、アメリカは50年ぶりの月面着陸を計画する一方で、月に埋蔵されている
次世代エネルギー源のひとつであるヘリウム3の独占を目論んでいた。
しかし着陸船から降り立った宇宙飛行士が目にしたのは、ヘリウムの巨大採掘現場であった。
実は超科学力によって密かに地球を脱出したナチスの残党が、月の裏側に巨大基地を建造して
地球へ帰還する機会をうかがっていたのである!
生き残りの黒人宇宙飛行士ワシントンが持っていたスマートフォンの性能に目をつけたナチスは
これをさらに入手して、秘密兵器を完成させようと画策。
ワシントンと地球研究者のレナーテ、そして副総統のアドラーが地球へと出発する。
一方、アメリカでは月面着陸で支持率アップを狙っていた女性大統領が思わぬ失敗に激昂、
彼女の選挙参謀であるワグナーは窮地に立たされていた。
そこにレナーテとアドラーが登場したことで、事態は急展開。彼らと手を組んだワグナーが
選挙運動にナチス風の演説を取り入れたのが大当たりして、大統領の人気は大きく回復する。
次期総統の座を狙うアドラー、地球の文化に触れてナチス思想の正当性に疑念を持つレナーテ、
そして地球を狙う月面第四帝国と、戦争効果でさらなる人気アップを図る大統領陣営。
様々な思惑が入り乱れる中で、いよいよナチスによる「隕石電撃作戦」が始まった…!
予告映像では「月面の巨大な鉤十字」や「ナチの超兵器による侵略」といった部分が
強調されてましたが、映画自体はむしろブラックな社会風刺ギャグがてんこもり。
特に「ナチスとアメリカの類似」や「人種差別がらみのパロディ」は、バカバカしくも
かなり鋭いところを突いていて、笑いながらも「うーん」と唸らされるところが多いです。
権力へのシビアな目線、悪趣味と紙一重のギャグセンス、怪しいテクノロジー、そして歴史からの
縦横無尽な引用は、アラン・ムーアっぽいところもあるので、そちらのファンにもオススメしたいところ。
たとえば『ウォッチメン』の原作コミックが好きな人なら、さらにこの映画を楽しめるでしょう。
また、戦争を皮肉った傑作コメディ『チャップリンの独裁者』と『博士の異常な愛情』に対する
徹底したオマージュからは、ティモ・ヴオレンソラ監督の大いなる映画愛が感じられます。
映画愛といえば、ハウニブ(ナチスが実際に設計していたとされる円盤兵器)の飛び方は、
ランディングギアの展開も含めて「ミレニアム・ファルコン」そっくりでした。
さらに『スター・ウォーズ』の帝国軍はナチスドイツ軍が元ネタで、そのナチスの円盤が
反乱軍のシンボルとそっくりな飛び方をする…と考えれば、これは二重のヒネリが入った
高度なギャグなのかもしれませんね(^^;
また、ナチス基地のセットやメカのデザインが、鋼鉄と巨大なギアのイメージで統一されていて
スチームパンク(というよりクロックパンク)風なのも、SFファンにとってはたまりません。
しかしなんといっても特筆すべきは、やはりクライマックスの大宇宙戦争!
ナチスの大宇宙艦隊に対して、地球側はいかにして反撃を行うのかという疑問に対し、
ヴオレンソラ監督はあっと驚く(そして思わず脱力する)秘策を用意しています。
え、マジ?それやっていいの?的な展開に、宇宙開発史にその名を刻む偉大なアレまで登場!
ロケットや人工衛星に興味がある人なら、バカバカしくも感動すること請け合いです!
シナリオのゆるさや時おりスベるギャグ、ベタすぎるナチス観といった気になる部分もありますが、
そういうツッコミどころも大らかさに変えて、いろんな映画のオイシイ部分を大胆に継ぎ合わせたのが
『アイアン・スカイ』という映画の良さだと思います。
オリジナリティをうんぬんするより、まずはそのリミックスのうまさを評価すべきでしょう。
そしてこの映画がリミックスする対象は、現実の社会情勢にまで及んでいます。
どこまでがウソで、どこまでが現実か。そしてどこまでがギャグで、どこからがシリアスなのか。
そういう危うさを「ナチス」という素材に託して見事に描ききった意味でも、『アイアン・スカイ』は
『博士の異常な愛情』という傑作映画の、正統な後継者だと思うのです。
B級というより、「知的なバカ映画」と呼ぶほうがふさわしい、(もしかすると)SF映画史に残る
金字塔になる(かもしれない)作品、そして何より「映画への愛」を強烈に感じられる作品です。
SF好き、映画好きなら、一刻も早く観にいくべし!いつ上映が終わっちゃうかわかりませんよ!(笑)

ちょうど先日、テレビ東京の深夜枠で『ブラジルから来た少年』を観たばっかりですが、
こちらはナチスの残党がその科学力で「ヒトラーのクローン計画」を作り出そうとする作品でした。
そしてこの映画から34年後、彼らは遂に「月面第四帝国」を作り上げてしまったのです!(笑)
…時は2018年、アメリカは50年ぶりの月面着陸を計画する一方で、月に埋蔵されている
次世代エネルギー源のひとつであるヘリウム3の独占を目論んでいた。
しかし着陸船から降り立った宇宙飛行士が目にしたのは、ヘリウムの巨大採掘現場であった。
実は超科学力によって密かに地球を脱出したナチスの残党が、月の裏側に巨大基地を建造して
地球へ帰還する機会をうかがっていたのである!
生き残りの黒人宇宙飛行士ワシントンが持っていたスマートフォンの性能に目をつけたナチスは
これをさらに入手して、秘密兵器を完成させようと画策。
ワシントンと地球研究者のレナーテ、そして副総統のアドラーが地球へと出発する。
一方、アメリカでは月面着陸で支持率アップを狙っていた女性大統領が思わぬ失敗に激昂、
彼女の選挙参謀であるワグナーは窮地に立たされていた。
そこにレナーテとアドラーが登場したことで、事態は急展開。彼らと手を組んだワグナーが
選挙運動にナチス風の演説を取り入れたのが大当たりして、大統領の人気は大きく回復する。
次期総統の座を狙うアドラー、地球の文化に触れてナチス思想の正当性に疑念を持つレナーテ、
そして地球を狙う月面第四帝国と、戦争効果でさらなる人気アップを図る大統領陣営。
様々な思惑が入り乱れる中で、いよいよナチスによる「隕石電撃作戦」が始まった…!
予告映像では「月面の巨大な鉤十字」や「ナチの超兵器による侵略」といった部分が
強調されてましたが、映画自体はむしろブラックな社会風刺ギャグがてんこもり。
特に「ナチスとアメリカの類似」や「人種差別がらみのパロディ」は、バカバカしくも
かなり鋭いところを突いていて、笑いながらも「うーん」と唸らされるところが多いです。
権力へのシビアな目線、悪趣味と紙一重のギャグセンス、怪しいテクノロジー、そして歴史からの
縦横無尽な引用は、アラン・ムーアっぽいところもあるので、そちらのファンにもオススメしたいところ。
たとえば『ウォッチメン』の原作コミックが好きな人なら、さらにこの映画を楽しめるでしょう。
また、戦争を皮肉った傑作コメディ『チャップリンの独裁者』と『博士の異常な愛情』に対する
徹底したオマージュからは、ティモ・ヴオレンソラ監督の大いなる映画愛が感じられます。
映画愛といえば、ハウニブ(ナチスが実際に設計していたとされる円盤兵器)の飛び方は、
ランディングギアの展開も含めて「ミレニアム・ファルコン」そっくりでした。
さらに『スター・ウォーズ』の帝国軍はナチスドイツ軍が元ネタで、そのナチスの円盤が
反乱軍のシンボルとそっくりな飛び方をする…と考えれば、これは二重のヒネリが入った
高度なギャグなのかもしれませんね(^^;
また、ナチス基地のセットやメカのデザインが、鋼鉄と巨大なギアのイメージで統一されていて
スチームパンク(というよりクロックパンク)風なのも、SFファンにとってはたまりません。
しかしなんといっても特筆すべきは、やはりクライマックスの大宇宙戦争!
ナチスの大宇宙艦隊に対して、地球側はいかにして反撃を行うのかという疑問に対し、
ヴオレンソラ監督はあっと驚く(そして思わず脱力する)秘策を用意しています。
え、マジ?それやっていいの?的な展開に、宇宙開発史にその名を刻む偉大なアレまで登場!
ロケットや人工衛星に興味がある人なら、バカバカしくも感動すること請け合いです!
シナリオのゆるさや時おりスベるギャグ、ベタすぎるナチス観といった気になる部分もありますが、
そういうツッコミどころも大らかさに変えて、いろんな映画のオイシイ部分を大胆に継ぎ合わせたのが
『アイアン・スカイ』という映画の良さだと思います。
オリジナリティをうんぬんするより、まずはそのリミックスのうまさを評価すべきでしょう。
そしてこの映画がリミックスする対象は、現実の社会情勢にまで及んでいます。
どこまでがウソで、どこまでが現実か。そしてどこまでがギャグで、どこからがシリアスなのか。
そういう危うさを「ナチス」という素材に託して見事に描ききった意味でも、『アイアン・スカイ』は
『博士の異常な愛情』という傑作映画の、正統な後継者だと思うのです。
B級というより、「知的なバカ映画」と呼ぶほうがふさわしい、(もしかすると)SF映画史に残る
金字塔になる(かもしれない)作品、そして何より「映画への愛」を強烈に感じられる作品です。
SF好き、映画好きなら、一刻も早く観にいくべし!いつ上映が終わっちゃうかわかりませんよ!(笑)
ストレンジラブ博士のパロディですよねww
あのシーンには、私もニヤリとしてしまいました。
ストレンジラブ博士がドイツからアメリカに帰化したという設定も踏まえると、
アフロ・アメリカンがアーリア人化されるというのは二重のパロディなのかもw
それとパンフにも書かれてますが、国連の円形会議場自体も
「博士の異常な愛情」の引用でしょうね。
終盤の大乱闘は、元の映画でカットされた某シーンへのオマージュかと…。
こういうネタを知らなくても楽しめる映画ではありますが、
知ってると面白さがさらにアップしますよね!