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Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

マイセン磁器の300年展

2011年02月19日 | 美術鑑賞・展覧会
東京ミッドタウン内のサントリー美術館で開催されている「マイセン磁器の300年展」を見てきました。


マイセンといえば高級洋食器のトップブランドであり、西洋磁器発祥のメーカーとしても有名ですが、
その辺に関心がないという人でも、美術好きなら必見の展覧会です。
白い器に施された浮き彫り、細やかな絵付けと微妙な色彩の妙、そして磁器製フィギュアの精巧な造形。
この展覧会ひとつで、彫刻と絵画と工芸品の傑作をまとめて見た感覚を体験することができました。

マイセン磁器とは、そもそもザクセン公国の国家プロジェクトから作り出されたもの。
ゆえに初期の作品は王家とそれにゆかりのある一部の貴族のために作られたものと、外交目的で
諸国の王家に贈呈されたものに限られます。
つまり、その出来ばえに国家の威信がかかってるわけですから、製造技術にも常に最高レベルを
追求してきたわけで、その結果が今のマイセンの名声へとつながっているわけですね。

そして今回のマイセン展で展示されるのは、国立マイセン磁器美術館の所蔵品。
この美術館自体が「過去の名作磁器とその製造技術を、後世に継承する」という目的で設立されており、
持ってる作品の質・量ともに、他とは比較になりません。
つまり今回の展示物こそ、マイセン300年の歴史と、その到達点を示す最高レベルの作品たちなのです。

とにかく見るもの全てが驚きの連続というほどの名品ぞろいですが、まずは「メナージュリ動物彫刻」と
「スノーボール貼花装飾」に圧倒されました。

「メナージュリ」とは王侯貴族の私設動物園をさす言葉ですが、マイセンではザクセン王の命によって、
白磁の動物を大理石像のように堂々とした彫像に仕立てています。

動物造形の名手といわれたケンドラーによる「コンゴウインコ」。大きさも子供の背丈ぐらいあります。

「スノーボール貼花装飾」は、小さな磁器の花をアジサイのようにびっしりと器に貼り付けたものです。

薩摩焼などにも貼り付け技法はありますが、金細工との組み合わせは西欧ならではと言えるでしょう。

どちらの作品も、ある意味で「わざわざ焼き物でここまでやるか!」という妄執めいたものすら感じます。
しかし思い返せば、西洋白磁の誕生もまた、東洋陶磁に対する「妄執」の産物ですから、裏を返せば
これらの作品こそ、最も「マイセンらしい作風」と言えるのかもしれません。

絵付けの美しさと色の美しさについては、博物学の図譜にも使えそうなほどの精密さです。
例えるなら、ルドゥーテの描くバラをそのまま食器に移したかのような見事さ。
一部の作品については、真ん中よりも縁取りにびっしりと描かれた植物の描き分けがすばらしいのですが、
ひとつの花が米粒くらいの大きさしかありませんので、見に行くときは単眼鏡の持参をおすすめします。

後半部の展示では、王政終焉の後に生み出されたマイセンの名品が並んでいました。

この展覧会の看板作品、ゆるく溶いた粘土を重ねてカメオのようなレリーフ模様を表現した「神話図壺」。

また陶板のランプシェードに浮き彫りと彩色を施し、光を灯すと絵が浮き上がる「リトファニー」など、
新たな表現方法も次々と生まれており、技術的にはひとつの頂点を迎えた時期とも言えるでしょう。
他にはアール・ヌーヴォーからアール・デコを経て現代に至るまで、それぞれの時代を象徴するデザインを
取り入れた作品も展示され、変化と伝統の間でバランスを保つつ、現在までトップブランドであり続けた
マイセンの歩みを示しています。

この中で特によかったのは、パウル・ショイリッヒによる磁器の彫像「落馬する女」。
粘土を自在に操ったという造形の名手は、馬から振り落とされそうな貴婦人の姿を、現代アートにも通じる
大胆な造形で表現しています。

作品の豪華さや美しさはもちろんですが、どこでどのように作られ、またどこの王室に由来するものかなど、
歴史的な見所も多い内容でした。
また、元は東洋の模倣から始まったマイセンも、独自の技術と表現方法をたゆまず追求することによって、
本家以上の評価を勝ち得ることができたという点では、どこか日本のものづくりに通じるような気もします。

サントリー美術館での展示は3月6日まで。以後のスケジュールは次のとおりです。

松本市美術館     2011年4月16日(土)~ 6月12日(日)
兵庫陶芸美術館    2011年9月10日(土)~11月27日(日)
大阪市東洋陶磁美術館 2012年4月 7日(土)~ 7月22日(日)


美術ファンだけでなく、造形作家やものづくりに携わる人にも、ぜひ「マイセン磁器の300年展」を見て、
大いに刺激を受けて欲しいと思います。きっと学ぶところが多いはずです。

ひとつ残念だったのは、お土産で買えるほど安いマイセンが売ってなかったことかな・・・。
展示を見た後では、お高いのも納得ですが。

うちに1個だけあるぐいのみは無地なので、いつかはブルーオニオンが欲しいなーと思ってます。
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