Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

メディア芸術祭で見た『マイマイ新子と千年の魔法』、そしてアニメーション部門シンポジウムなど

2011年02月14日 | マイマイ新子と千年の魔法
文化庁メディア芸術祭最終日、会場の国立新美術館に行ってきました。

今回ばかりは何をおいても『マイマイ新子と千年の魔法』の優秀賞受賞が大きく、結果としては
アニメ部門以外はほとんど目に入らない・・・という感じになってしまいましたが、個人的には満足。

この日はアニメ部門受賞者シンポジウムとして『四畳半神話体系』の湯浅政明監督、『カラフル』の
原恵一監督、そして『マイマイ新子と千年の魔法』の片渕須直監督が登壇、さらに『マイマイ』本編の
上映もあるということで、整理券確保のため朝から出動、首尾よく確保することができました。

その後は、まず講堂で上映された『マイマイ新子と千年の魔法』を鑑賞しました。



40回以上の猛者には及ばないものの、10数回目の鑑賞となればさすがに細かい点にも気がつきます。

今回はDVDによる上映ということで、斜めの線にややジャギーを感じるところもありましたが、
発色のよさに関してはフィルム上映を大きく上回るものがありました。
大画面で見る草いきれのしそうな麦畑の青さ、やわらかい日差しの描写、そして淡い虹や七色に輝く
シャボン玉など、大画面で見るとハッと息を呑むような美しさです。

ああ、やっぱりブルーレイで『マイマイ』出して欲しいなぁ。そしていつかは劇場でのDSP上映も
実現して欲しいなぁ。
・・・いや、それを実現するまで応援するのが、ファンの使命であり生きがいというもの。
いつかその日が来ることを期待しつつ、一層マイマイを応援し続けようと固く心に誓うのでした。

なんてことを書いた後、片渕監督の「β運動の岸辺で」を読んだら「今回はデジタルベータカムのデータを
プロジェクタで上映」との記載が!
つまりDVDじゃなく、そのマスターテープだったのですね・・・道理で発色がキレイなわけです。

マイマイ上映後は昼食もとらず、タワーレコード新宿店へと移動。
こちらではコトリンゴさんのインストアライブを堪能させていただきました。

コトリンゴさんが歌うカバー曲を聴いて感じたのは、どの作品も原曲の持ち味を残しつつ、
見事なほどのコトリンゴ・スタイルに再構築されているということ。
だから他人の歌を歌っているという不自然さが全然なく、まるで持ち歌であるかのように
すーっと染み込んでくる感覚がありました。
特にバグルスの「ラジオスターの悲劇」のキュートな歌いっぷりには、意外な驚きが。
あのテクノポップが、こんなに綺麗でかわいい歌に変身するとは思いませんでした。

ライブ終了後のサイン会では、コトリンゴさんに「さっきメディア芸術祭で『マイマイ』見て、
「こどものせかい」聴いてきました!」とご報告。
パッと笑顔になったコトリンゴさんの表情と「片渕監督によろしくお伝えください」とのお言葉は、
CDジャケットにいただいたサインとあわせて、私のたからものになりました。

その後は昼食を食べる合間にウィスキーの試飲をしたりもしつつ(おいしかったー)、
午後4時からのシンポジウムを聞くため、新美へととんぼ返り。
シンポジウムでは今回のアニメ部門で選考委員を勤めた氷川竜介さんの司会進行により、
各受賞者から製作の裏話や今のアニメ業界にまつわるお話を聞くことができました。

シンポジウムの様子はメディア芸術祭の公式サイトからUstreamで見られるので、細部は省略
・・・と思ったら、もう動画見られなくなってました。文化庁もやることがセコい気がするなー。
ということで、代わりに「クリティカルヒット」さんが文字に書き起こした記事をご覧ください。

中でも一番強く印象に残ったのは、お三方とも製作サイドから持ち込まれた今回の作品企画に対して、
自分なりのテーマ設定を持って真摯に取り組んでいた、という点です。
そして作り手自身が迷いつつも自分を見失わないことによって、作品にしっかりとした芯が形作られ、
そこに共鳴した観客から強く支持されたのではないか、などとも思いました。

さて今回の文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門受賞の商業3作品を見たときに感じるたのは、
“表現の差はあるものの、3作とも「日常への回帰」というテーマを扱っている”ということ。
そしてこれについては、やはり社会の動きと切り離せない部分があると思います。
・・・ということで、受賞作について自分なりに考えてみたことを、少しまとめてみました。

そもそも20世紀の後半ぐらいまでは、日常というのはそう簡単に崩れないほど強固なもので、
多少ゆるぎはしてもひっくり返ることはないだろうという前提があったように思います。
だからこそ「平凡な日常」は、当時のアニメにとってはむしろ「挑むべき既成概念」であり、
常に超えなければならない壁であったはずであり、その手段としてロボットやアクション、
そして魔法や超能力といった要素が作品に持ち込まれていったのではないでしょうか。

しかし1980年代後半の東西冷戦終結あたりを皮切りにして、崩れるはずのない日常の根幹であった
「世界のあり方」が、徐々に緩みを見せ始めます。
そして1990年代の地下鉄サリン事件と阪神・淡路大震災という人災・天災により、日本社会にも
「安全神話の大きな揺らぎ」が生じました。
そして2001年に、あの同時多発テロが発生。この瞬間、我々が不変と信じていた「平凡な日常」は、
完膚なきまでに破壊されてしまいます。
そしてバブル崩壊に端を発した不況の長期化が追い討ちをかけることで、我々の感じる「日常」の足元は、
昔よりもずいぶんと不安定なものへと変わってしまいました。

そんな時代に、大きな変化のない「平凡な日常」の楽しさを描いたアニメが多く登場し、またそれらが
未来に不安を抱えた若いアニメファンに強く支持されたのは、むしろ当然のことだったのかもしれません。
なにしろバブルと同じく、それらは既に「失われた楽園」なのですから。
また逆に、その「平凡な日常」ですら受け入れられない自己の無力さを前提にしつつも、そんな自分を
中心とした狭い範囲に「世界の運命を決定する特別な資質」を求めようとする作品が多く現れたのも、
“「平凡な日常」が望めないなら、特別な存在になるしかない”といった、いわゆる「ゼロ年代」的な
焦燥感から来るものだったようにも思えます。

そんな「ゼロ年代」の終わりである2009年から2010年にかけて、時代の変化を告げるかのように
登場してきたのが、今回の受賞作である『マイマイ新子と千年の魔法』『四畳半神話体系』『カラフル』
といった作品でした。

これらの作品に共通するのは、設定や展開に他の作品にも見られるような非現実性を含んでいるものの、
物語の進展によって最後はそれぞれの主人公たちが「日常との折り合い」をつけることに成功し、さらに
その「日常」の中で生きていくための価値観や判断基準を学び取っている、という点にあると思います。

個人的に、優れた物語は「現実への批評性」を持ち、さらに「現実を変えていく力」を発揮するものだと
思っています。
しかし「ゼロ年代」は、世界の急激な変化に戸惑うあまり、一時的に物語そのものが「ひきこもり」の
状態にあったようにも感じます。
そしてようやく、物語がもう一度現実と対峙するための「力」を発揮するまでに快復してきたことで、
今回のような3作が生まれたのではないか、というのが、私なりの考えです。

もしそうであれば、シンポジウムで氷川さんが語っていた「ある意味で歴史的な作品」という表現は、
非常に的を射ていたと言えるでしょう。
そして、数ある商業アニメの中からこの3作品を選んだことに、まさしく『文化庁メディア芸術祭』の
大きな存在意義があったと言っても、決して過言ではないと思います。

まあ、この3作品のようなアニメが市場の主流になることは考えにくいけど「これからの日本アニメ」が
進んでいく道のひとつを示してくれたことは間違いないでしょう。
市場の動向は厳しくても、今回受賞のお三方が今後も自分のスタイルを貫きつつ「他の人には撮れない」
アニメ作品を作り続けられるよう、強く願っています。それがこのジャンルを照らす光にもなるはずだから。

そしてこのような作品を正当に評価し、また世の中に発信するための場として、文化庁メディア芸術祭には
これからも注目していきたいと思います。

ただ、せめてUstreamはもう少し長く公開して欲しい!お願いだから!
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2 コメント

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嘆願するにも・・・ (みゃっき!)
2011-02-15 08:56:24
うわぁ~★

読むにつけ、文化庁メディア芸術祭のUST観たかった★
んとに、何処に嘆願したらいいんでしょ?≡⌒⊥⌒;≡
せめて一ヶ月くらいは・・・ (青の零号)
2011-02-17 00:13:46
みゃっき!さん、いつもありがとうございます。

うちの記事はUstreamを見てもらうための前振り的なつもりだったので
元の映像がなくなっちゃって「なんだかな~」な気分です。

私としても、ぜひ実際に映像を見て聞いてもらって、
みゃっき!さんの感じたところを伺いたかったのですが・・・。

メディア芸術祭に関しての問い合わせ・要望は
以下のアドレスからフォームを開くことができます。
http://plaza.bunka.go.jp/site/inquiry.php

アーカイブ持ってるんだから、会期中といわず
1ヶ月程度は見られるようにしておくべきですよね。

特にこのシンポジウムは最終日だったので、
リアルタイム以外で見られた方はかなり少ないのでは。
さすがにこれは主催者の配慮が足りないんじゃないかと思います。

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