購入後に腰を据えて読む時間がなかった『トップ10』Vol.1を、連休中に読み終えました。
“第二次世界大戦に出現して以降、芋づる式に増えたヒーローとそのライバルたちは、
その存在が大きな社会問題と化し、戦後のベビーブームは事態をさらに悪化させた。
やがて一般人との軋轢を避けるため、スーパーヒーローとスーパーヴィランだけが住む
巨大都市「ネオポリス」が建設され、この街を取り締まるための警察組織が結成された。
これが多次元警察機構第10分署、通称「トップ10」と呼ばれる組織である・・・。”
こんな設定で繰り広げられるのは、登場キャラクターすべてがユニークな超常能力を持つ
なんとも奇妙な街の警察ドラマです。
道ばたで子供が目からビームを出してアリをイジメているかと思えば、ゴジ〇の甥っ子が
ストリートギャングのボスに納まっているという、ある意味でデタラメなネオポリス社会。
その平和を守るのは核兵器装備のおばさん刑事に隠れヌーディスト、さらに同性愛者に
マザコンのカウボーイから“犬のおまわりさん”に至るまで、こちらも揃ってユニークかつ
クセのある連中ばかりです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/9d/3d56e0c471006e1ff2e5c22e3cd57ac6.jpg)
そんな愛すべき「トップ10」のメンバーが夫婦喧嘩から麻薬売買、そして娼婦連続殺人と
様々な事件に対峙する日々が、ドタバタギャグと小ネタ満載で綴られていくこの作品。
作画担当のジーン・ハーの絵柄も、ロイドやギボンズよりはとっつきやすいので
これまでのムーア作品よりはかなり読みやすくなってると思います。
さて、変人ぞろいの同僚たちに比べると、ヒロインのロビン・スリンガー刑事(トイボックス)は
“手製の玩具を手足のように操れる”という能力面も含めて、結構フツーな感じの娘さん。
(といっても見た目は完全にパンクっ娘ですが、周囲があまりにも個性的なので・・・。)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/b9/f12e39c52b86fb37595b6af13876b084.jpg)
でもその普通さこそ彼女の個性、そして普通人の我々が『トップ10』を読んだときに
一番共感しやすいキャラでもあるわけですね。
こういうところにも、たぶんムーアなりの計算が十分に働いているハズです。
とはいえ、とっつきやすいだけでは終わらないのがムーア先生。
複数のエピソードが同時進行で語られつつ、やがて繋がりを見せてくるという構成の冴え、
暴力と皮肉が巧みにブレンドされた作風、そして各コマのなかに描き込まれた圧倒的な
情報量は、この作者ならではの持ち味といえるでしょう。
(ムーアは全ての作画について、綿密な指示をすることで知られてます。)
ここでひとつ、我が家を荒らすスーパーマウスに唯一法律で許可された駆除法というのが
スーパーキャットの導入だったという小エピソードを例にしてみましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/2b/cd7203db184335b70c4ae1773fc97814.jpg)
これって単なるバカ話みたいですが、役所の決めたルールって確かに融通が利かないし・・・
などと思い返してみれば、この話も意外とリアルで生々しいネタに思えてきます。
そう考えると、実はネオポリスばかりがヘンな場所とは言えないのかも・・・?
そしてこれについては、ネオポリスの超人的な市民たちにもあてはまると思います。
たとえ超能力を持っていたとしても、まわりの連中にも同じような能力があったならば
それは宗教や思想、人種や性別と同じ「個性」のひとつにすぎません。
大きく誇張されてはいるけれど、ここに描かれているのは毎日を懸命に生きている
我々と変わらない「人間たち」の姿なのです。
本書の巻頭に収録されている、通常人のフリーライターであるアラン・ムーア(!)が
トップ10を取材して書いたという記事「押し止める力:第10分署と超・社会管理」には、
これを的確に表現した一文が載っています。
「だが、彼らを羨む事はないだろう。それでなくても人生は過酷なのだ。
あなたがどんなケープを纏っていようとも。」
ムーアはこのヘンテコな街をおもしろおかしく描きつつ、その裏でこれまでと変わりなく
「人間(らしさ)とはなにか」という根源的な問いを発し続けているのでしょう。
スーパーパワーと引き換えにネオポリスに縛られ、様々な制約の下で生きる人々は
かつて『Vフォー・ヴェンデッタ』のラークヒル収容所で命を落としたマイノリティたちが
作品の枠を超えて転生した姿なのかもしれません。
ちなみにVol.1で私が一番好きな話は、世界の神々が集うバーで起きた“殺神”事件。
とにかくバカバカしい話なのですが、これがまるっきり北欧神話のエピソードの再現なのが
笑うに笑えないところなんですよ。
しかもこの神話が某世界的宗教の原型とくれば、ムーアの矛先が結局どこに向いてるかは
自然にわかるというもので・・・この傍若無人な皮肉屋っぷりがステキすぎる(笑)。
そして10月後半には、エピソード完結編となる『トップ10 Vol.2』が発売されます。
殺された麻薬の運び屋が隠した放射性物質、取調べ中に自殺したネオポリス創設者の謎、
そして街を騒がす超能力お触り魔(!)といった事件は、どんな解決を迎えるのでしょうか?
さらに超大作『フロム・ヘル』も発売と、来月もムーア関連から目が離せません。
“第二次世界大戦に出現して以降、芋づる式に増えたヒーローとそのライバルたちは、
その存在が大きな社会問題と化し、戦後のベビーブームは事態をさらに悪化させた。
やがて一般人との軋轢を避けるため、スーパーヒーローとスーパーヴィランだけが住む
巨大都市「ネオポリス」が建設され、この街を取り締まるための警察組織が結成された。
これが多次元警察機構第10分署、通称「トップ10」と呼ばれる組織である・・・。”
こんな設定で繰り広げられるのは、登場キャラクターすべてがユニークな超常能力を持つ
なんとも奇妙な街の警察ドラマです。
道ばたで子供が目からビームを出してアリをイジメているかと思えば、ゴジ〇の甥っ子が
ストリートギャングのボスに納まっているという、ある意味でデタラメなネオポリス社会。
その平和を守るのは核兵器装備のおばさん刑事に隠れヌーディスト、さらに同性愛者に
マザコンのカウボーイから“犬のおまわりさん”に至るまで、こちらも揃ってユニークかつ
クセのある連中ばかりです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/9d/3d56e0c471006e1ff2e5c22e3cd57ac6.jpg)
そんな愛すべき「トップ10」のメンバーが夫婦喧嘩から麻薬売買、そして娼婦連続殺人と
様々な事件に対峙する日々が、ドタバタギャグと小ネタ満載で綴られていくこの作品。
作画担当のジーン・ハーの絵柄も、ロイドやギボンズよりはとっつきやすいので
これまでのムーア作品よりはかなり読みやすくなってると思います。
さて、変人ぞろいの同僚たちに比べると、ヒロインのロビン・スリンガー刑事(トイボックス)は
“手製の玩具を手足のように操れる”という能力面も含めて、結構フツーな感じの娘さん。
(といっても見た目は完全にパンクっ娘ですが、周囲があまりにも個性的なので・・・。)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/b9/f12e39c52b86fb37595b6af13876b084.jpg)
でもその普通さこそ彼女の個性、そして普通人の我々が『トップ10』を読んだときに
一番共感しやすいキャラでもあるわけですね。
こういうところにも、たぶんムーアなりの計算が十分に働いているハズです。
とはいえ、とっつきやすいだけでは終わらないのがムーア先生。
複数のエピソードが同時進行で語られつつ、やがて繋がりを見せてくるという構成の冴え、
暴力と皮肉が巧みにブレンドされた作風、そして各コマのなかに描き込まれた圧倒的な
情報量は、この作者ならではの持ち味といえるでしょう。
(ムーアは全ての作画について、綿密な指示をすることで知られてます。)
ここでひとつ、我が家を荒らすスーパーマウスに唯一法律で許可された駆除法というのが
スーパーキャットの導入だったという小エピソードを例にしてみましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/2b/cd7203db184335b70c4ae1773fc97814.jpg)
これって単なるバカ話みたいですが、役所の決めたルールって確かに融通が利かないし・・・
などと思い返してみれば、この話も意外とリアルで生々しいネタに思えてきます。
そう考えると、実はネオポリスばかりがヘンな場所とは言えないのかも・・・?
そしてこれについては、ネオポリスの超人的な市民たちにもあてはまると思います。
たとえ超能力を持っていたとしても、まわりの連中にも同じような能力があったならば
それは宗教や思想、人種や性別と同じ「個性」のひとつにすぎません。
大きく誇張されてはいるけれど、ここに描かれているのは毎日を懸命に生きている
我々と変わらない「人間たち」の姿なのです。
本書の巻頭に収録されている、通常人のフリーライターであるアラン・ムーア(!)が
トップ10を取材して書いたという記事「押し止める力:第10分署と超・社会管理」には、
これを的確に表現した一文が載っています。
「だが、彼らを羨む事はないだろう。それでなくても人生は過酷なのだ。
あなたがどんなケープを纏っていようとも。」
ムーアはこのヘンテコな街をおもしろおかしく描きつつ、その裏でこれまでと変わりなく
「人間(らしさ)とはなにか」という根源的な問いを発し続けているのでしょう。
スーパーパワーと引き換えにネオポリスに縛られ、様々な制約の下で生きる人々は
かつて『Vフォー・ヴェンデッタ』のラークヒル収容所で命を落としたマイノリティたちが
作品の枠を超えて転生した姿なのかもしれません。
ちなみにVol.1で私が一番好きな話は、世界の神々が集うバーで起きた“殺神”事件。
とにかくバカバカしい話なのですが、これがまるっきり北欧神話のエピソードの再現なのが
笑うに笑えないところなんですよ。
しかもこの神話が某世界的宗教の原型とくれば、ムーアの矛先が結局どこに向いてるかは
自然にわかるというもので・・・この傍若無人な皮肉屋っぷりがステキすぎる(笑)。
そして10月後半には、エピソード完結編となる『トップ10 Vol.2』が発売されます。
殺された麻薬の運び屋が隠した放射性物質、取調べ中に自殺したネオポリス創設者の謎、
そして街を騒がす超能力お触り魔(!)といった事件は、どんな解決を迎えるのでしょうか?
さらに超大作『フロム・ヘル』も発売と、来月もムーア関連から目が離せません。
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