神奈川県立近代美術館の葉山館で、究極映像研究所のBPさんに教えてもらった展覧会
「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」を見てきました。

開催期間は4月10日から6月27日までですが、せっかく葉山に行くんだったら
晴れた日に海でも眺めたいな~と考えて、連休明けのこのタイミングを選びました。
そしてこの日はまさに狙ったとおりの陽気。海風と陽光が心地よかったです。

葉山沖に浮かぶ名島の鳥居、右手は葉山灯台(別名:裕次郎灯台)。
もやってなければバックに富士山も見えるらしいのですが、今回は残念でした。
逗子駅から車のすれ違いもままならないようなほっそい道をバスでくねくね登って行くと、
会場の神奈川県立美術館 葉山館につきました。


周囲の緑の木々と海の青に映える白い箱のような建物は、葉山という土地柄にぴったり。
かつては高松宮家別邸だったということで、海と山に囲まれた絶好のロケーションです。
館内に入ると「話の話」にでてくるオオカミの子が迎えてくれました。

…おや、オオカミの子の位置がBPさんの写真と違ってるぞ?
展覧会タイトルが「ノルシュテイン&ヤールブソワ」となっているとおり、作品の多くは
ノルシュテイン夫人であるヤールブソワの手になるものです。
このあたりの経緯は究極映像研究所でも書かれてますが、ノルシュテイン作品は基本的に
夫妻の共同制作で、ノルシュテインの発想をヤールブソワがエスキース(下絵)などにまとめ、
それをもとにアニメーションを撮っているみたい。
ちょっとシャガールを思わせるノルシュテイン作品の絵柄は、本来ヤールブソワのものなんですね。
キャラづくりで例えるなら、ノルシュテインが原案、ヤールブソワがキャラデザと作画監督かな?
DVDパッケージの「古い家の戸口に立つオオカミの子」も、実はヤールブソワの油彩画だと、
今回の展覧会ではじめて知りました。

パッケージ説明ではジャケットの作画が「ユーリ・ノルシュテイン」となってます。
場内の展示は、ノルシュテインによるアイデアスケッチや原画(特に「外套」のがすごい)と、
それを美術的にまとめたヤールブソワのエスキース、そして実際に撮影で使った切絵などを
スライド状に重ね、ガラスの箱に収めた立体模型「マケット」などで構成されてました。
ナマの線や色の重ね方が見られる絵画もいいのですが、やはり立体的なマケットが圧巻。
ノルシュテインアニメの視覚効果が、箱に収まって凍結されているように感じられます。
量・質とも充実していたのは「話の話」や「霧の中のハリネズミ」そして「外套」ですが、
個人的には、ロシア・アバンギャルドの影響が色濃い「25日-最初の日」が好きなので
これに関するノルシュテイン自身の原画が見られたのがうれしかったです。
「街」のエスキースなんて、それだけで一枚の抽象芸術といえるほどの描き込みでした。
展示物を見たあとは、できあがった映像作品の鑑賞会場へ。
私が見たのは午後3時からのプログラムで、ラインナップは次のとおり。
「アオサギとツル」
「話の話」
「冬の日」(発句)
「外套」(部分)
このうち「冬の日」は今回が初見、「外套」は断片しかみたことがありませんでした。
「冬の日」は芭蕉の句をもとに、二人の俳人が木枯らしの中で出会う様子を描いたもの。
まるで国産アニメのような自然さで、侘び寂びの情緒が心に染みて来ます。
ノルシュテインやヤールブソワの絵は、日本の文人画の感じに近いものがありますから
掛軸とかにしてもかなりイケそうな気がしますね。
そして着手から30年たっても完成しない、幻の傑作「外套」。
その映像の緻密さと濃密さは、市場向けアニメでは到底不可能なレベルのものでした。
特に主人公であるアカーキーが自宅で書類を書き写すシーンは、偏執狂的なほど粘っこく
ささいな仕草や表情の細部までを表現しています。
アニメーションによる「人間」の描写としては、現在のところこれが最高峰でしょう。
ちなみにアカーキーがお茶をティーソーサーに移して飲むシーンがありますが、
あれは当時の正しいお茶の飲み方だったはずです。
展示物だけでも十分見応えがあるし、会場で映像作品を見ることもできるのですが、
できれば事前にアニメを見てから行ったほうがより楽しめる内容。
にもかかわらず、2010年5月現在「ノルシュテイン作品集」DVDが入手困難なのは
なんとも残念な話です。
まだ中古価格が高騰してないのは救いですが、ぜひ一般流通でも入手できるようにして欲しい。
会場のグッズ売り場で「霧の中のハリネズミ」捜してる人がガッカリしてましたから。
「話の話 ロシア・アニメーションの巨匠 ノルシュテイン&ヤールブソワ」を見てきました。

開催期間は4月10日から6月27日までですが、せっかく葉山に行くんだったら
晴れた日に海でも眺めたいな~と考えて、連休明けのこのタイミングを選びました。
そしてこの日はまさに狙ったとおりの陽気。海風と陽光が心地よかったです。

葉山沖に浮かぶ名島の鳥居、右手は葉山灯台(別名:裕次郎灯台)。
もやってなければバックに富士山も見えるらしいのですが、今回は残念でした。
逗子駅から車のすれ違いもままならないようなほっそい道をバスでくねくね登って行くと、
会場の神奈川県立美術館 葉山館につきました。


周囲の緑の木々と海の青に映える白い箱のような建物は、葉山という土地柄にぴったり。
かつては高松宮家別邸だったということで、海と山に囲まれた絶好のロケーションです。
館内に入ると「話の話」にでてくるオオカミの子が迎えてくれました。

…おや、オオカミの子の位置がBPさんの写真と違ってるぞ?
展覧会タイトルが「ノルシュテイン&ヤールブソワ」となっているとおり、作品の多くは
ノルシュテイン夫人であるヤールブソワの手になるものです。
このあたりの経緯は究極映像研究所でも書かれてますが、ノルシュテイン作品は基本的に
夫妻の共同制作で、ノルシュテインの発想をヤールブソワがエスキース(下絵)などにまとめ、
それをもとにアニメーションを撮っているみたい。
ちょっとシャガールを思わせるノルシュテイン作品の絵柄は、本来ヤールブソワのものなんですね。
キャラづくりで例えるなら、ノルシュテインが原案、ヤールブソワがキャラデザと作画監督かな?
DVDパッケージの「古い家の戸口に立つオオカミの子」も、実はヤールブソワの油彩画だと、
今回の展覧会ではじめて知りました。

パッケージ説明ではジャケットの作画が「ユーリ・ノルシュテイン」となってます。
場内の展示は、ノルシュテインによるアイデアスケッチや原画(特に「外套」のがすごい)と、
それを美術的にまとめたヤールブソワのエスキース、そして実際に撮影で使った切絵などを
スライド状に重ね、ガラスの箱に収めた立体模型「マケット」などで構成されてました。
ナマの線や色の重ね方が見られる絵画もいいのですが、やはり立体的なマケットが圧巻。
ノルシュテインアニメの視覚効果が、箱に収まって凍結されているように感じられます。
量・質とも充実していたのは「話の話」や「霧の中のハリネズミ」そして「外套」ですが、
個人的には、ロシア・アバンギャルドの影響が色濃い「25日-最初の日」が好きなので
これに関するノルシュテイン自身の原画が見られたのがうれしかったです。
「街」のエスキースなんて、それだけで一枚の抽象芸術といえるほどの描き込みでした。
展示物を見たあとは、できあがった映像作品の鑑賞会場へ。
私が見たのは午後3時からのプログラムで、ラインナップは次のとおり。
「アオサギとツル」
「話の話」
「冬の日」(発句)
「外套」(部分)
このうち「冬の日」は今回が初見、「外套」は断片しかみたことがありませんでした。
「冬の日」は芭蕉の句をもとに、二人の俳人が木枯らしの中で出会う様子を描いたもの。
まるで国産アニメのような自然さで、侘び寂びの情緒が心に染みて来ます。
ノルシュテインやヤールブソワの絵は、日本の文人画の感じに近いものがありますから
掛軸とかにしてもかなりイケそうな気がしますね。
そして着手から30年たっても完成しない、幻の傑作「外套」。
その映像の緻密さと濃密さは、市場向けアニメでは到底不可能なレベルのものでした。
特に主人公であるアカーキーが自宅で書類を書き写すシーンは、偏執狂的なほど粘っこく
ささいな仕草や表情の細部までを表現しています。
アニメーションによる「人間」の描写としては、現在のところこれが最高峰でしょう。
ちなみにアカーキーがお茶をティーソーサーに移して飲むシーンがありますが、
あれは当時の正しいお茶の飲み方だったはずです。
展示物だけでも十分見応えがあるし、会場で映像作品を見ることもできるのですが、
できれば事前にアニメを見てから行ったほうがより楽しめる内容。
にもかかわらず、2010年5月現在「ノルシュテイン作品集」DVDが入手困難なのは
なんとも残念な話です。
まだ中古価格が高騰してないのは救いですが、ぜひ一般流通でも入手できるようにして欲しい。
会場のグッズ売り場で「霧の中のハリネズミ」捜してる人がガッカリしてましたから。