《あらすじ》
ギルドンの代わりに矢を受けたチャンフィ。
ノ尚君は信じられない出来事に、呆然とする。
史曹判書は、射られたものが王子だと見当をつけていた。
チャンフィは毒矢にやられていた。
傷は浅いが、解毒剤を使わねば死をまぬがれない。
薬を持っているのは謀殺を命じたノ尚君だが、
彼女は史曹判書に疑われ、身動きできずにいた。
史曹判書は、ギルドンと共にいたイノクの姿を見ていたのだ。
ヨンムンとギルドンらの関係を疑う判書の前で、ノ尚君は部下との接触も禁じられた。
一刻もはやく、王子に解毒剤を飲ませなければ手遅れになる……。
ギルドンは王子の看病をイノクに頼み、解毒剤を取りにむかった。
チャンフィは苦しい息の下、イノクと言葉をかわす。
前にも、同じようなことがあった。
その時、眠っているイノクを殺そうとしたが、できなかった。
イノクだけは殺せないと気付いたとき、彼は人間になったのだ。
「お前に影響されて無謀に振る舞い、このざまだ。
私がこうなったのはお前のせいだ……」
「ごめんね、私が悪かったのよ……」
イノクの顔は涙でぐしゃぐしゃだ。
「泣くな。泣いてばかりのお前を、また私のせいで泣かせたくはない。
大丈夫だ、簡単には死なない」
「当たり前よ、私は運がいいんだもん。私と一緒なら死んだりしないわ」
「そうか、なら、ずっと私のそばにいろ。
お前の運にあやかれるようにそばにいろ」
「わかった、若君にもツキがまわるように、そばにいる!」
「約束だぞ……」
しかしチャンフィの体はどんどん冷たくなる一方だ。
イノクは彼の体を抱いて、必死に祈る。
ヨンムン商団に疑われずに出入りして、ノ尚君から薬を受け取れるもの。
そう考えて、ギルドンはウネに助けを求めた。
ノ尚君をはじめ、ヨンムンの手のものが史曹判書殺害まで決意したそのとき、
ウネが来客として客間へ通された。
「女性特有の腹痛に効く薬を受け取りに来たのです」
ウネの用向きをきいて、史曹判書もノ尚君の退席を許した。
ノ尚君と堂々渡り合って薬を手に入れてきたウネは、
自分も仲間に入れるよう、ギルドンを脅す。
「あなたが一線を越えさせたのよ。ここで突き放さないで」
「いいだろう。ここで突き放したりしないさ」
ギルドンもあっさりウネの提案を呑む。
解毒薬はぎりぎりのところで間に合い、チャンフィは一命をとりとめた。
ノ尚君も史曹判書を退け、ヨンムンの秘密を守った。
しかしまだ安心はできない。
なんとか王子を連れて根城に戻らなければ。
ウネは、自分が彼らの脱出を助けようと申し出る。
彼女は左議政の娘。
大妃を焼き殺したかたきの娘だ。
王子は恨みを忘れていない。
しかし不本意ではあるが、彼女はいまや彼の命の恩人でもあるのだ。
王子を脱出させる手はずを整えたギルドンは、
自分を殺そうと狙ったノ尚君に会いに行った。
「あいつはあなたをかばって、誰のしわざか口を閉ざしている。
だが命を狙われた俺としては黙っていられない」
「王子がなぜお前を助けたかは知らぬが、お前の話など聞く気はない!」
ノ尚君はギルドンへの怒りを隠さない。
「あなたにとって彼は王子であり、息子だ。
そして彼にとってあなたは忠臣であり、炎の中で別れた母のかわりだ。
それなのに、なぜ彼を信じない?」
「王子の邪魔になるものは何者であろうと容赦しない」
「それがあいつのためになると思うのか?」
嫡子であるから、と王になるために多くの人を殺していけば、
今の王のようになりかねない。
チャンフィは迷いながらも踏みとどまり、民を守れる王を目指すのだ。
ギルドンはノ尚君に、チャンフィの本質を見誤らぬよう、忠告するのだった。
「ギルドンを助けてくれてありがとう」
根城でゆっくり体を休める王子に、イノクはあらためて礼を言う。
ただ何も考えずに飛び出しただけだと彼は答えた。
「照れないで。偉いわ、若君」
「みながそう見てくれれば、人を守れるだろうか。
切に守りたいものを正面から見据えて、望まれる人になり、
失うことを恐れなければ守れるのだろうな」
「守りたいものって何?」
「大勢でもあり、ひとりでもある」
チャンフィの謎かけのような言葉に、イノクは首をかしげる。
「それってギルドン?」
「彼は共に闘うものだ。守りたいものではない。切なる思いもないしな。
彼には、奪われそうで怖い」
「ギルドンが何を奪うの?」
ますますもって、イノクには不可解だ。
「お前は相変わらずだな。
バカなお前を忘れようとしたが、思いはつのるばかりだ。これからは正直になる……
今日はもう疲れた、話すのはよそう。眠りたい」
「あ、ごめんね、出て行くからゆっくり休んで」
離れようとしたイノクを、王子が引き留める。
「そばにいろ。約束しただろう?ツキがまわるようにそばにいると」
「死にそうだったからそういっただけよ」
「眠っている間に死ぬかも知れないぞ。無事に眠っているか、見守ってくれ」
「わ、わかった。見てるからゆっくり眠って」
イノクには、王子の心の中はよくわからないが、とにかくそばにいてやることにした。
一方ウネは、ギルドンと話をしていた。
「まさかここで帰れとは言わないでしょ?」
「言っても無駄だろ」
ウネはわがままをいう気はないが、ただ一杯のお茶を所望した。
「無理ならお湯でも、水でもいいわ」
「ひかえめだな」
「わたしは立ち回りがうまいから」
ギルドンは、ウネのために温かい湯を持ってきてやる。
「はじめて優しくしてくれたわね。
あなたは優しくなって、わたしは正直になる。最初からこうだったらね」
心があたたかく満たされるウネに、ギルドンの言葉は冷たかった。
「悪いが、これが最後だと思ってくれ」
ギルドンはウネに、自分の居場所へ帰るように言う。
彼女は兄の許嫁だし、自分を陥れようとした兄が憎かった。
身分を偽っていた彼女のことも憎かったから、道を外れても放っておいた。
煩わしいから終わらせたのに、いざとなったら助けを求めて利用した。
「俺のような悪党にいいようにされて、悔しいだろ?もう利用されるな」
「わかってたわ。私だってバカじゃない」
ウネの目から涙がこぼれる。
手の中の湯が、急に冷たく感じられる。
「今日は泊まって、明日帰れ」
ギルドンは部屋を出て行った。
ウネは泣きながら決意する。
「いいわ。明日帰る。私は線を越えたりしない。
あなたに越えさせる。私のものにするわ。そのあとは、どうしようかしら」
ギルドンのいれてくれた湯は飲まれることなく、冷たい床に吸い込まれた。
イノクはウネと一緒にいるギルドンのことを気にしていたが、
手当のための薬を用意している間に眠ってしまった。
ようやくイノクのところに来たギルドンは、がっかり。
「なんだよ。あちこち痛いのに。これは応急処置が必要だぞ」
ギルドンは、眠っているイノクの唇に、そっと口づける。
「あ……治ったや」
史曹判書は、イノクの身元を調べるよう、家の者に命じた。
ヨンムンとギルドンを結ぶ唯一のものだ。
翌朝、イノクはチャンフィのために薬を煎じている。
「あんたのもやるから待っててよ」
「いらん。苦い薬は若君にやる!
もう薬はもらった。効果抜群で、ぜんぜん痛くない」
「何よそれ。そんなに効くなら、若君にもわけて」
「ダメだ。絶対ダメだ。俺のもんだ!マヌケ!」
「器の小さい大将ね」
イノクはわけがわからず、肩をすくめた。
回復したチャンフィは、商団に帰る前にギルドンと顔をあわせた。
「お前、俺を助けたんだろ。恩に着るよ」
「とっさの行動だったが、収穫はあった。もうお前は私を裏切れない」
チャンフィは満足げな表情だ。
「自信満々だな」
「そうだ。これで完全にお前を味方に付けた」
ギルドンは、ふっと笑った。
「今回も逆だ。俺は俺のために死ねるやつを俺が得たんだ」
「……互いを得たのだな」
ギルドンはチャンフィの言葉について少し考えた。
「なんだろな。照れくさくてしょうがねえ。もう行け」
「言われなくても帰るところだ」
ウネはイノクと話をしていた。
「ここにいる間元気でね」
「どういうこと?私はずっとここにいるよ」
イノクとギルドンの因縁を知るウネは、事実を明らかにしようと思っている。
それがどういう結果をもたらすか、わかっているつもりだから。
イノクは根城の入り口まで、王子を見送った。
「ムク犬さんが待ってるわ。気をつけてね」
「商団には来るな」
王子の一言に、目が泳ぐ。
「わ、わかった。行かないわ」
「私が会いに来る」
王子の言葉は、イノクには意外なものだった。
「あのもののそばにいたいのだろう。
私もあのものと手を携えることになった。お前と私も仲間だ」
「そうだった、私も王子の仲間になったんだよね」
「そうだ、私が側にいることを忘れるな」
チャンフィの声音に、何か感じているようなイノク。
「大切な人だと言ってくれてありがとう。
その言葉のおかげでもう少し耐えられそうだ。もう行く。元気でな」
王子を見送って、イノクはひとりごちる。
「ヘンだな……。なんだか若君に申し訳ないような気がする……。どうしてかな?」
チャンフィは無事に、ノ尚君のもとへ戻った。
「心配するな。私は大丈夫だ。
二度と勝手に動くな。約束しろ」
王子の無事な姿を見て、ノ尚君の声も震える。
「ならば王子も約束してください。
命を危険にさらすことは二度としないと」
「とっさのことで何も考えなかった」
「片時も忘れてはなりません。王子のために命をささげる私や臣下がおります。
亡くなった先王と大妃様、そして民がいるのです。
それを忘れて軽率に動いてはなりません」
「忘れたのではない、守るためだ」
ギルドンが、民の心を思い出させてくれる。
四寅剣に頼らず、民を守る王になりたい。
チャンフィの決意の固さを目の当たりにし、ノ尚君も折れた。
「二度と王子の許しなく、動いたりいたしません。
王子があのものを手放すまでお待ちします」
「手放さない。絶対にな」
ギルドンをかばったことで、チャンフィの株もあがった。
「両班だけど、いい人だね」
「あいつを信じるか?」
「志を貫く間は信じよう」
活貧党の人気は高まり、根城にやってくる人間も増えた。
ちまたでは、何があってもギルドンのしわざだと噂で持ちきりだ。
両班が幽霊に取り殺される事件が頻出しているが、
それも神出鬼没のギルドンのやっていることだとまことしやかに伝えられている。
一体なにがどうなっているんだ、と娼館に探りを入れに行ったギルドンは、
キーセンを殴る両班の若者をこてんぱんにしてやった。
その帰り道、なぜかギルドンを付けてくるものの気配が……。
もしや幽霊?本物?
廃屋に隠れたギルドンに、四方から女の幽霊が迫ってきた。
「お前の命をもらう……」
「チクショウ……怖いじゃないか……」
(つづく)
やっぱりギルドンかっこいい~!
かっこよくってかわいくってなんなの!この子は!
バカみたいにニヤニヤしながら見てしまいましたよ。
は~、イノクがギルドンの一番の薬なんだなー。
う゛あ~、でも王子にとっても一番の薬はイノクなんだよな~。
今回王子は、究極の禁じ手を放ちましたね。
死にそうな男に口説かれてうんと言わない女がいるか!
ま、いるだろうな~。
てか、気に入らない男だったら死にそうでもなんでも、うん、なんて言わない。
女って、そーゆー生き物だからな~。
もちろんイノクは、チャンフィ王子を憎からず思っているし、大事な友人を死なせたくない。
だから、そばにいろといわれて深く考えもせず、うんって言っちゃうんですね。
(おまるもらってウキウキしてたことだってあるわけで)
心許せる友は自分だけ、という自負もある。
1年あまりはギルドン抜きで一緒にいたんだし。
だからって王子、「そばにいろ、約束だ」なんてズルいですよ~。
死ぬかもしれないから告白しちゃうのかと思ったけど、
そこは理性が働いた王子はえらいけどさ。
あの状況では約束するしかないでしょ。
まぁ、王子は「ずっと」そばにいてほしいわけで、
でもイノクはそこまでわかってないですからねー。
言質を取った、みたいな状況になってて、やっぱりずるいですね、王子。
死にそうになっててもかっこいい。王子だから?
でもなりふりかまっていられませんものね。
かっこつけていい人ぶって、あがきもしないで好きな人をあきらめるなんて、
そんなの青春じゃないわ!
恋だ愛だなんて、美しいものとは限らない。
けっこうぐちゃぐちゃしてみっともないものですよ。
みっともなかろうがなんだろうが、お前が好きで、手放したくないんだ!と
開き直った王子はここから強いかもしれませんよ。
あの鈍感イノクが「なぜか王子に悪い気がする。なんで?」と
何かを感じ取っているくらいですからね。
誰が見たって王子はお前に惚れてるんだ、と、こんこんと言って聞かせたい。
正直ノ尚君の気持ちもわからないでもない。
危険だよ、こういう女はさ。
でもねぇ、ギルドンがかわいいんだよね。
「俺の傷の手当ては後回しかよ」とすねて、
「寝ちまったのか!」とまたすねて、
でもこっそりイノクにキスして「あ、治ったや」なんて言ったりして。
もうなんて可愛いの!
「ふふん、でもいいんだ、もう薬はもらったから」ってすごく嬉しそうだったりして、
信じられないわー!
180センチ越えてる大男のくせに。
コム並にカワイイ。
もうイノクが大好きで大好きで大好きで仕方ないんだね。
王子がイノクを求める時って、どうしても悲壮感が漂うじゃない?
彼はつらい幼少期を過ごし、過酷な運命を背負って生きてきた人だから仕方ないかもしれないけど。
ひるがえってギルドンがイノクを愛するとき、底抜けに明るいんだよね。
ふたりが一緒にいると、ほんわかとあたたかく、しあわせな気持ちになるの。
だからやっぱり、ギルドンとイノクは一緒にいてほしい。
ああ!でもそしたら孤独な王子の側には誰がいるというの?
ムク犬さんとムク犬さんとムク犬さん?
なぜか今回ビジュアル的にイイ!
ふう、ウキウキしたり切なくなったり、見てるほうも大変です。
それもこれも、ギルドンとチャンフィ、どちらもものすごくいい男だからです!
普通は、王道カップルを応援したくなったり、二番手くんに入れ込んだり、
贔屓のひきたおしがあるものなんだけどね~。
このドラマに限っては、ダブルで!主演並み!
どっちかなんて選べないなー!
それでもイノクはギルドンを選んでる。
純愛だなぁ、子鹿よ。
王子とギルドンの関係もすごくステキです。
盟友同士ってタイトルがぴったり。
「無謀にもお前を助けたことで、私はお前を手に入れた。
お前はこれでけして私を裏切れない」と言い放つチャンフィ。
そのちょっぴり偽悪的な物言いに、
「今度も逆だよ。俺は俺のために死ねる奴を手に入れたんだ」と返すギルドン。
あらあらまあまあ、
お互い相手を信じて認めているくせに、素直じゃないんだからもー。
ギルドンの代わりに矢を受けたチャンフィ。
ノ尚君は信じられない出来事に、呆然とする。
史曹判書は、射られたものが王子だと見当をつけていた。
チャンフィは毒矢にやられていた。
傷は浅いが、解毒剤を使わねば死をまぬがれない。
薬を持っているのは謀殺を命じたノ尚君だが、
彼女は史曹判書に疑われ、身動きできずにいた。
史曹判書は、ギルドンと共にいたイノクの姿を見ていたのだ。
ヨンムンとギルドンらの関係を疑う判書の前で、ノ尚君は部下との接触も禁じられた。
一刻もはやく、王子に解毒剤を飲ませなければ手遅れになる……。
ギルドンは王子の看病をイノクに頼み、解毒剤を取りにむかった。
チャンフィは苦しい息の下、イノクと言葉をかわす。
前にも、同じようなことがあった。
その時、眠っているイノクを殺そうとしたが、できなかった。
イノクだけは殺せないと気付いたとき、彼は人間になったのだ。
「お前に影響されて無謀に振る舞い、このざまだ。
私がこうなったのはお前のせいだ……」
「ごめんね、私が悪かったのよ……」
イノクの顔は涙でぐしゃぐしゃだ。
「泣くな。泣いてばかりのお前を、また私のせいで泣かせたくはない。
大丈夫だ、簡単には死なない」
「当たり前よ、私は運がいいんだもん。私と一緒なら死んだりしないわ」
「そうか、なら、ずっと私のそばにいろ。
お前の運にあやかれるようにそばにいろ」
「わかった、若君にもツキがまわるように、そばにいる!」
「約束だぞ……」
しかしチャンフィの体はどんどん冷たくなる一方だ。
イノクは彼の体を抱いて、必死に祈る。
ヨンムン商団に疑われずに出入りして、ノ尚君から薬を受け取れるもの。
そう考えて、ギルドンはウネに助けを求めた。
ノ尚君をはじめ、ヨンムンの手のものが史曹判書殺害まで決意したそのとき、
ウネが来客として客間へ通された。
「女性特有の腹痛に効く薬を受け取りに来たのです」
ウネの用向きをきいて、史曹判書もノ尚君の退席を許した。
ノ尚君と堂々渡り合って薬を手に入れてきたウネは、
自分も仲間に入れるよう、ギルドンを脅す。
「あなたが一線を越えさせたのよ。ここで突き放さないで」
「いいだろう。ここで突き放したりしないさ」
ギルドンもあっさりウネの提案を呑む。
解毒薬はぎりぎりのところで間に合い、チャンフィは一命をとりとめた。
ノ尚君も史曹判書を退け、ヨンムンの秘密を守った。
しかしまだ安心はできない。
なんとか王子を連れて根城に戻らなければ。
ウネは、自分が彼らの脱出を助けようと申し出る。
彼女は左議政の娘。
大妃を焼き殺したかたきの娘だ。
王子は恨みを忘れていない。
しかし不本意ではあるが、彼女はいまや彼の命の恩人でもあるのだ。
王子を脱出させる手はずを整えたギルドンは、
自分を殺そうと狙ったノ尚君に会いに行った。
「あいつはあなたをかばって、誰のしわざか口を閉ざしている。
だが命を狙われた俺としては黙っていられない」
「王子がなぜお前を助けたかは知らぬが、お前の話など聞く気はない!」
ノ尚君はギルドンへの怒りを隠さない。
「あなたにとって彼は王子であり、息子だ。
そして彼にとってあなたは忠臣であり、炎の中で別れた母のかわりだ。
それなのに、なぜ彼を信じない?」
「王子の邪魔になるものは何者であろうと容赦しない」
「それがあいつのためになると思うのか?」
嫡子であるから、と王になるために多くの人を殺していけば、
今の王のようになりかねない。
チャンフィは迷いながらも踏みとどまり、民を守れる王を目指すのだ。
ギルドンはノ尚君に、チャンフィの本質を見誤らぬよう、忠告するのだった。
「ギルドンを助けてくれてありがとう」
根城でゆっくり体を休める王子に、イノクはあらためて礼を言う。
ただ何も考えずに飛び出しただけだと彼は答えた。
「照れないで。偉いわ、若君」
「みながそう見てくれれば、人を守れるだろうか。
切に守りたいものを正面から見据えて、望まれる人になり、
失うことを恐れなければ守れるのだろうな」
「守りたいものって何?」
「大勢でもあり、ひとりでもある」
チャンフィの謎かけのような言葉に、イノクは首をかしげる。
「それってギルドン?」
「彼は共に闘うものだ。守りたいものではない。切なる思いもないしな。
彼には、奪われそうで怖い」
「ギルドンが何を奪うの?」
ますますもって、イノクには不可解だ。
「お前は相変わらずだな。
バカなお前を忘れようとしたが、思いはつのるばかりだ。これからは正直になる……
今日はもう疲れた、話すのはよそう。眠りたい」
「あ、ごめんね、出て行くからゆっくり休んで」
離れようとしたイノクを、王子が引き留める。
「そばにいろ。約束しただろう?ツキがまわるようにそばにいると」
「死にそうだったからそういっただけよ」
「眠っている間に死ぬかも知れないぞ。無事に眠っているか、見守ってくれ」
「わ、わかった。見てるからゆっくり眠って」
イノクには、王子の心の中はよくわからないが、とにかくそばにいてやることにした。
一方ウネは、ギルドンと話をしていた。
「まさかここで帰れとは言わないでしょ?」
「言っても無駄だろ」
ウネはわがままをいう気はないが、ただ一杯のお茶を所望した。
「無理ならお湯でも、水でもいいわ」
「ひかえめだな」
「わたしは立ち回りがうまいから」
ギルドンは、ウネのために温かい湯を持ってきてやる。
「はじめて優しくしてくれたわね。
あなたは優しくなって、わたしは正直になる。最初からこうだったらね」
心があたたかく満たされるウネに、ギルドンの言葉は冷たかった。
「悪いが、これが最後だと思ってくれ」
ギルドンはウネに、自分の居場所へ帰るように言う。
彼女は兄の許嫁だし、自分を陥れようとした兄が憎かった。
身分を偽っていた彼女のことも憎かったから、道を外れても放っておいた。
煩わしいから終わらせたのに、いざとなったら助けを求めて利用した。
「俺のような悪党にいいようにされて、悔しいだろ?もう利用されるな」
「わかってたわ。私だってバカじゃない」
ウネの目から涙がこぼれる。
手の中の湯が、急に冷たく感じられる。
「今日は泊まって、明日帰れ」
ギルドンは部屋を出て行った。
ウネは泣きながら決意する。
「いいわ。明日帰る。私は線を越えたりしない。
あなたに越えさせる。私のものにするわ。そのあとは、どうしようかしら」
ギルドンのいれてくれた湯は飲まれることなく、冷たい床に吸い込まれた。
イノクはウネと一緒にいるギルドンのことを気にしていたが、
手当のための薬を用意している間に眠ってしまった。
ようやくイノクのところに来たギルドンは、がっかり。
「なんだよ。あちこち痛いのに。これは応急処置が必要だぞ」
ギルドンは、眠っているイノクの唇に、そっと口づける。
「あ……治ったや」
史曹判書は、イノクの身元を調べるよう、家の者に命じた。
ヨンムンとギルドンを結ぶ唯一のものだ。
翌朝、イノクはチャンフィのために薬を煎じている。
「あんたのもやるから待っててよ」
「いらん。苦い薬は若君にやる!
もう薬はもらった。効果抜群で、ぜんぜん痛くない」
「何よそれ。そんなに効くなら、若君にもわけて」
「ダメだ。絶対ダメだ。俺のもんだ!マヌケ!」
「器の小さい大将ね」
イノクはわけがわからず、肩をすくめた。
回復したチャンフィは、商団に帰る前にギルドンと顔をあわせた。
「お前、俺を助けたんだろ。恩に着るよ」
「とっさの行動だったが、収穫はあった。もうお前は私を裏切れない」
チャンフィは満足げな表情だ。
「自信満々だな」
「そうだ。これで完全にお前を味方に付けた」
ギルドンは、ふっと笑った。
「今回も逆だ。俺は俺のために死ねるやつを俺が得たんだ」
「……互いを得たのだな」
ギルドンはチャンフィの言葉について少し考えた。
「なんだろな。照れくさくてしょうがねえ。もう行け」
「言われなくても帰るところだ」
ウネはイノクと話をしていた。
「ここにいる間元気でね」
「どういうこと?私はずっとここにいるよ」
イノクとギルドンの因縁を知るウネは、事実を明らかにしようと思っている。
それがどういう結果をもたらすか、わかっているつもりだから。
イノクは根城の入り口まで、王子を見送った。
「ムク犬さんが待ってるわ。気をつけてね」
「商団には来るな」
王子の一言に、目が泳ぐ。
「わ、わかった。行かないわ」
「私が会いに来る」
王子の言葉は、イノクには意外なものだった。
「あのもののそばにいたいのだろう。
私もあのものと手を携えることになった。お前と私も仲間だ」
「そうだった、私も王子の仲間になったんだよね」
「そうだ、私が側にいることを忘れるな」
チャンフィの声音に、何か感じているようなイノク。
「大切な人だと言ってくれてありがとう。
その言葉のおかげでもう少し耐えられそうだ。もう行く。元気でな」
王子を見送って、イノクはひとりごちる。
「ヘンだな……。なんだか若君に申し訳ないような気がする……。どうしてかな?」
チャンフィは無事に、ノ尚君のもとへ戻った。
「心配するな。私は大丈夫だ。
二度と勝手に動くな。約束しろ」
王子の無事な姿を見て、ノ尚君の声も震える。
「ならば王子も約束してください。
命を危険にさらすことは二度としないと」
「とっさのことで何も考えなかった」
「片時も忘れてはなりません。王子のために命をささげる私や臣下がおります。
亡くなった先王と大妃様、そして民がいるのです。
それを忘れて軽率に動いてはなりません」
「忘れたのではない、守るためだ」
ギルドンが、民の心を思い出させてくれる。
四寅剣に頼らず、民を守る王になりたい。
チャンフィの決意の固さを目の当たりにし、ノ尚君も折れた。
「二度と王子の許しなく、動いたりいたしません。
王子があのものを手放すまでお待ちします」
「手放さない。絶対にな」
ギルドンをかばったことで、チャンフィの株もあがった。
「両班だけど、いい人だね」
「あいつを信じるか?」
「志を貫く間は信じよう」
活貧党の人気は高まり、根城にやってくる人間も増えた。
ちまたでは、何があってもギルドンのしわざだと噂で持ちきりだ。
両班が幽霊に取り殺される事件が頻出しているが、
それも神出鬼没のギルドンのやっていることだとまことしやかに伝えられている。
一体なにがどうなっているんだ、と娼館に探りを入れに行ったギルドンは、
キーセンを殴る両班の若者をこてんぱんにしてやった。
その帰り道、なぜかギルドンを付けてくるものの気配が……。
もしや幽霊?本物?
廃屋に隠れたギルドンに、四方から女の幽霊が迫ってきた。
「お前の命をもらう……」
「チクショウ……怖いじゃないか……」
(つづく)
やっぱりギルドンかっこいい~!
かっこよくってかわいくってなんなの!この子は!
バカみたいにニヤニヤしながら見てしまいましたよ。
は~、イノクがギルドンの一番の薬なんだなー。
う゛あ~、でも王子にとっても一番の薬はイノクなんだよな~。
今回王子は、究極の禁じ手を放ちましたね。
死にそうな男に口説かれてうんと言わない女がいるか!
ま、いるだろうな~。
てか、気に入らない男だったら死にそうでもなんでも、うん、なんて言わない。
女って、そーゆー生き物だからな~。
もちろんイノクは、チャンフィ王子を憎からず思っているし、大事な友人を死なせたくない。
だから、そばにいろといわれて深く考えもせず、うんって言っちゃうんですね。
(おまるもらってウキウキしてたことだってあるわけで)
心許せる友は自分だけ、という自負もある。
1年あまりはギルドン抜きで一緒にいたんだし。
だからって王子、「そばにいろ、約束だ」なんてズルいですよ~。
死ぬかもしれないから告白しちゃうのかと思ったけど、
そこは理性が働いた王子はえらいけどさ。
あの状況では約束するしかないでしょ。
まぁ、王子は「ずっと」そばにいてほしいわけで、
でもイノクはそこまでわかってないですからねー。
言質を取った、みたいな状況になってて、やっぱりずるいですね、王子。
死にそうになっててもかっこいい。王子だから?
でもなりふりかまっていられませんものね。
かっこつけていい人ぶって、あがきもしないで好きな人をあきらめるなんて、
そんなの青春じゃないわ!
恋だ愛だなんて、美しいものとは限らない。
けっこうぐちゃぐちゃしてみっともないものですよ。
みっともなかろうがなんだろうが、お前が好きで、手放したくないんだ!と
開き直った王子はここから強いかもしれませんよ。
あの鈍感イノクが「なぜか王子に悪い気がする。なんで?」と
何かを感じ取っているくらいですからね。
誰が見たって王子はお前に惚れてるんだ、と、こんこんと言って聞かせたい。
正直ノ尚君の気持ちもわからないでもない。
危険だよ、こういう女はさ。
でもねぇ、ギルドンがかわいいんだよね。
「俺の傷の手当ては後回しかよ」とすねて、
「寝ちまったのか!」とまたすねて、
でもこっそりイノクにキスして「あ、治ったや」なんて言ったりして。
もうなんて可愛いの!
「ふふん、でもいいんだ、もう薬はもらったから」ってすごく嬉しそうだったりして、
信じられないわー!
180センチ越えてる大男のくせに。
コム並にカワイイ。
もうイノクが大好きで大好きで大好きで仕方ないんだね。
王子がイノクを求める時って、どうしても悲壮感が漂うじゃない?
彼はつらい幼少期を過ごし、過酷な運命を背負って生きてきた人だから仕方ないかもしれないけど。
ひるがえってギルドンがイノクを愛するとき、底抜けに明るいんだよね。
ふたりが一緒にいると、ほんわかとあたたかく、しあわせな気持ちになるの。
だからやっぱり、ギルドンとイノクは一緒にいてほしい。
ああ!でもそしたら孤独な王子の側には誰がいるというの?
ムク犬さんとムク犬さんとムク犬さん?
なぜか今回ビジュアル的にイイ!
ふう、ウキウキしたり切なくなったり、見てるほうも大変です。
それもこれも、ギルドンとチャンフィ、どちらもものすごくいい男だからです!
普通は、王道カップルを応援したくなったり、二番手くんに入れ込んだり、
贔屓のひきたおしがあるものなんだけどね~。
このドラマに限っては、ダブルで!主演並み!
どっちかなんて選べないなー!
それでもイノクはギルドンを選んでる。
純愛だなぁ、子鹿よ。
王子とギルドンの関係もすごくステキです。
盟友同士ってタイトルがぴったり。
「無謀にもお前を助けたことで、私はお前を手に入れた。
お前はこれでけして私を裏切れない」と言い放つチャンフィ。
そのちょっぴり偽悪的な物言いに、
「今度も逆だよ。俺は俺のために死ねる奴を手に入れたんだ」と返すギルドン。
あらあらまあまあ、
お互い相手を信じて認めているくせに、素直じゃないんだからもー。
もちろん覚えてますよー。
ってか、結構お邪魔して読み逃げしてます。ミアネヨ。
かずゆいままさんとこのコメントも読んでたし。
観ているドラマも似ていて、いつかドラマ紹介記事にも
コメントさしてもらおう、と密かにチャンスをねらっていました。
読みに来ていただいてありがとうございます。
しかもいっぱい褒めてもらってうれしいです。
えへへ、と思いながら記事を再読してたら誤字を見つけてさっき直しました。
ハズカシス。
あらすじ、本来ならもっと省略するか、忠実に書き起こすか、
どっちかだろうな、と思うのですが、ついついこんな感じで書いてます。
登場人物の気持ちとか、憶測になるのであんまり書かない方がいいのですけども。
楽しんでいただけたらさいわいです。
カン・ジファン氏、私もこれが初見ですが、ギルドン大好きです。
「がんばれクムスン」観ようと、現在画策中です。
Gyao!で配信中だけど今途中だから、再配信を待つか借りるか検討中。
あ、わたしも長くなっちゃった。
HARUさんのブログにもまたお邪魔しますねー。
次からは堂々とコメント残します!
ではまた!
若君切ない担当が板に付いてきましたよね。
本当に最後まで報われないんでしょ?
1回くらい、いい目をみせてあげたい……。
グンちゃんファンだったら身悶えして観てたでしょ?
「美男ですね」であんなに愛される役をやれてよかったよ、グンソクくん。
この回、やけにムク犬さんがかっこよく見えるのよ。
若君は彼で我慢してね……。
ウネちゃん、当初のわたくしの予想と違って、
なかなかしたたかなお嬢さんでした。
小鳥をにぎり殺しかねないあやうさ。
登場シーンから、こうした片鱗は垣間見えていたのね。
泣き寝入りなんてしない。根性すわってるわー。
あの、以前オタマジャクシのヘンタイの話でコメント下さったブログの者です・・・覚えてらっしゃいますでしょうか・・・!(ドキドキ)
かずゆいままさんのブログでコメントされてるのを目撃してましたが、今日ブログ村のギルドンの文字に誘われて知らずに訪れたらビスコさんのブログだったのでびっくりしました~!!!
たどり着いてめっちゃテンションあがりました~!!笑
てゆーか、小説かのようなこの素晴らしい作品紹介にたまげましたー!!!(*゜Д゜*)ォォオ~!!!
こういうのが「あらすじ」っていうものなんですね!
スゴイです!!!
ホンギルドンでジファン氏スキーになったので、
ギルドンギルドンv言って見てました(笑)
明るいシーンと暗いシーン両方あって忙しいけど
見応えもあるドラマですよね^^
脇役陣も味があって良いですし・・・v
あと、王子の側にはムク犬、のくだり笑いました・・・!
冷静な説明の中にところどころ入っているビスコさんのツッコミにほくそ笑みながら読ませていただきました笑
長々失礼しました~またお邪魔しますv
もう、あたしの心を代弁してるかのような台詞で共感度ばっちりよ!
若君はもう切ない担当なんだけど時折見せるあの笑顔が堪らん。
もちろんギルドンもせつねーって感じなんだけどイノクとのかけあいが可愛くてにやける。
もう二人に愛されてるイノクが羨ましい!
が!彼女はギルドン一直線女なんでね。揺れないところがまたよろしいわ。
やっぱり若君にはムク犬くんで我慢ですかのう。それはそれでまたいいんだけど。
しかしここからウネがなーーんか嫌な感じになってきましたよね。
こういう女は後が怖いからさ。大丈夫か?!ギルドン!
その前に幽霊にびびってるけどさ。(笑)