万引き

万引きを見た。
彼の年は30歳くらいだろうか。
店のデザート売り場でデザートを見ていたら、私が選んでいるあたりをスーツの男性が横から眺めている。
そうか、私が選んでいる場所のデザートを買いたいのねと思って、私は急いで選んで場所をよけた。
すると、彼は予想通りに私がいたところへ歩み寄り、あれこれとデザートを選び出した。
私は、横に並んでいた新製品に目を奪われていたが、彼が急に早足でレジとは反対方向の出口に向かうのが目に入った。
あーっ、万引きだぁ！
私も出口に数歩歩み寄ったが、何もせずにただ、勝ち誇ったように店を出てゆく彼の背中を眺めていた。
だって、何もできないよぉ。
何か取ってたけど、どの商品だったのかはっきり言えるほど見えなかったし。
いるんだねぇ。
パリッとスーツを着て、こんなことをする人が。
デザートを一生懸命選ぶその男性に、休日なのにお仕事お疲れさまぁと他人ながら思っていたのにさ。