以前食したスッポンの、組立骨格標本が完成しました。
脊索動物門 Chordata
脊椎動物亜門 Vertebrata
爬虫綱 Reptilia
カメ目 Testudines
潜頸亜目 Cryptodira
スッポン上科 Trionychoidea
スッポン科 Trionychidae
スッポン亜科 Trionychinae
キョクトウスッポン属Pelodiscus
スッポンPelodiscus sinensis (Wiegmann, 1835) (シナスッポン、ニホンスッポンなどとも)
細かい部分は接着剤止めですが、
肩甲骨‐背甲、骨盤‐背甲、腹甲‐背甲などは針金で着脱可。
頚椎は全てバラバラの状態で通し、端を糸で固定したので可動式。
尾椎も同じく先だけ接着剤止めにしたので、可動します。
上顎‐下顎は両面テープで仮止めなんだけど、すぐ外れるので、なんか良い方法ないかな?
舌骨は糸で吊るしましたが、実際より位置が後ろになっちゃうんだよね。
骨自体は全くといっていいほど脂っ気がなく、ほとんど水で煮るだけで状態の良いものになりました。
とは言えど、ちゃんと漂白・脱脂などはしましたし、70%エタノールによる固定も行ないましたけどね。
(エタノールでしっかり架橋作ってやったら、軟骨(cartilages)の収縮がだいぶ抑えられました!)
苦労したのは四肢ですね。
しっかりした腱が張り、且つゼラチン質(コラーゲン。食べると美肌に良いというのがエセ科学なのはご存知ですね)
の厚い組織に覆われていたので、指や手根を形どおりに採取するのはほぼ不可能でした。
そこで、写真撮りまくり+片方ずつ除肉→組立をやって、まぁ結果としてはうまくいきました。
左前肢の手根骨が3つほど欠けたり、指の先端が失われたりしているところもありますが…
とにかく、
カメ類としちゃやっぱりえらく特殊化していますね。
甲羅薄いし、原始形質を多く残した種と思われがちですが、
実際にはその分岐は比較的新しいようで、甲羅の喪失とか、運動器官の過剰な(?)発達なども二次的な獲得かも知れません。
少なくとも、こんな頭蓋見てたら誰も無弓類(anapsida)だって感じがしませんわな。
知らん人が見たら、哺乳類だと思ってもおかしくないんじゃないかってぐらいの顎まわりですね。
プロガノケリス(Proganochelys sp.)とかはもっとそれっぽいのかな。
原生のvertebratesを見ていると、頭蓋の側頭窓(temporalfenestra)などの開口部は意外に種によって開きがあるようで…
有羊膜類の初期進化ならともかく、少々時間が経ってしまうと
ここの変化だけではanapsida - synapsida - diapsidaと分類していくのは難しいんじゃないか、と個人的には思います。
neuro cranial skeleton(神経頭蓋)はneural crest cells(神経堤細胞)由来だと言うし、
Hox geneのちょっとしたミューテーションが、
ひょっとしたらこの辺の構造を大きく変化させてしまうのかもしれません。
…だったら面白いなぁ。どうかな?
スッポンの頭蓋は3Dモデルがここで公開されてますよ。…ってまた全然違う属ですけど、
同じスッポン科ってことで似ています。
頚椎はカメ類の例に漏れず8つで固定されてますね。
哺乳類が7つで固定されているのは有名な話ですが、
(カイギュウ類は例外的に少ない。クジラも少なく見えるが、あれは複数の頚椎が癒合してそう見えるんだそうな)
カメの8つ固定はあまり知られてないようです。
これは背甲形成のパターニング機構が他のシステムと統合し、一種の構造的拘束を為しているためだ、と
『動物進化形態学』倉谷滋:著 東京大学出版会 などに書いとりましたが、
哺乳類の頚椎もこの応用なのかな。
因みに、スッポン君の尾椎は13でした。他の椎骨はイシガメなどと同数だったんですが…
欠損もまずありませんし、尾椎の差異はバウプランの中でも結構制約を受けない部分なのかなと感じました。
今回、スッポンの正確な骨格図を探しましたが、見つかりませんでした。
なので、自分で描きました。
まとまった時間が取れなくてささっと鉛筆描きですが、大まかな描写は正確だと思います。
ただ、頭蓋などは縫合線が殆ど見えず滑らかで…各部名称などは不正確かもしれません。
背甲も特殊なので…ねぇ、環椎もよく分からんし…
まぁ、あまり信じないで下さい。
まず名称表。
次いで背甲。
全身骨格、腹側から。腹甲は除いてありますよ。
さぁみんな大好き(?)頭蓋だ!
その他いくぞ、環椎は自信ないぞ。
最後、何処探しても資料のない、舌骨(hyoids)。アマチュアの作った標本によっては、付いてないものさえもある。
脊椎動物(vertebrates)の進化を表す、割と重要な骨だと思うんだけど。
なお、これらを製作するに当たり、
『日本動物解剖図説』 広島大学生物学会:編 池田喜平 稲葉明彦:監修 1971森北出版株式会社
Plate21 イシガメ Pond tortoise の項を全面的に借用・改変させていただきました。
典型的なカメ類であるイシガメと比較してみると、面白いですね。
間違い、ご意見などありましたら、お気軽にコメントどうぞ。
LINK1→suppon -deai- : ポンノスケとの出逢い
LINK2→hansel und gretel: 捌きの前夜
LINK3→suppon -wakare-: 最後の晩餐
LINK4→specimens: その他の収蔵標本
・vertebrata:01・02 脊椎動物。
< βλογ πετ >
<ονλη ονε>
脊索動物門 Chordata
脊椎動物亜門 Vertebrata
爬虫綱 Reptilia
カメ目 Testudines
潜頸亜目 Cryptodira
スッポン上科 Trionychoidea
スッポン科 Trionychidae
スッポン亜科 Trionychinae
キョクトウスッポン属Pelodiscus
スッポンPelodiscus sinensis (Wiegmann, 1835) (シナスッポン、ニホンスッポンなどとも)
細かい部分は接着剤止めですが、
肩甲骨‐背甲、骨盤‐背甲、腹甲‐背甲などは針金で着脱可。
頚椎は全てバラバラの状態で通し、端を糸で固定したので可動式。
尾椎も同じく先だけ接着剤止めにしたので、可動します。
上顎‐下顎は両面テープで仮止めなんだけど、すぐ外れるので、なんか良い方法ないかな?
舌骨は糸で吊るしましたが、実際より位置が後ろになっちゃうんだよね。
骨自体は全くといっていいほど脂っ気がなく、ほとんど水で煮るだけで状態の良いものになりました。
とは言えど、ちゃんと漂白・脱脂などはしましたし、70%エタノールによる固定も行ないましたけどね。
(エタノールでしっかり架橋作ってやったら、軟骨(cartilages)の収縮がだいぶ抑えられました!)
苦労したのは四肢ですね。
しっかりした腱が張り、且つゼラチン質(コラーゲン。食べると美肌に良いというのがエセ科学なのはご存知ですね)
の厚い組織に覆われていたので、指や手根を形どおりに採取するのはほぼ不可能でした。
そこで、写真撮りまくり+片方ずつ除肉→組立をやって、まぁ結果としてはうまくいきました。
左前肢の手根骨が3つほど欠けたり、指の先端が失われたりしているところもありますが…
とにかく、
カメ類としちゃやっぱりえらく特殊化していますね。
甲羅薄いし、原始形質を多く残した種と思われがちですが、
実際にはその分岐は比較的新しいようで、甲羅の喪失とか、運動器官の過剰な(?)発達なども二次的な獲得かも知れません。
少なくとも、こんな頭蓋見てたら誰も無弓類(anapsida)だって感じがしませんわな。
知らん人が見たら、哺乳類だと思ってもおかしくないんじゃないかってぐらいの顎まわりですね。
プロガノケリス(Proganochelys sp.)とかはもっとそれっぽいのかな。
原生のvertebratesを見ていると、頭蓋の側頭窓(temporalfenestra)などの開口部は意外に種によって開きがあるようで…
有羊膜類の初期進化ならともかく、少々時間が経ってしまうと
ここの変化だけではanapsida - synapsida - diapsidaと分類していくのは難しいんじゃないか、と個人的には思います。
neuro cranial skeleton(神経頭蓋)はneural crest cells(神経堤細胞)由来だと言うし、
Hox geneのちょっとしたミューテーションが、
ひょっとしたらこの辺の構造を大きく変化させてしまうのかもしれません。
…だったら面白いなぁ。どうかな?
スッポンの頭蓋は3Dモデルがここで公開されてますよ。…ってまた全然違う属ですけど、
同じスッポン科ってことで似ています。
頚椎はカメ類の例に漏れず8つで固定されてますね。
哺乳類が7つで固定されているのは有名な話ですが、
(カイギュウ類は例外的に少ない。クジラも少なく見えるが、あれは複数の頚椎が癒合してそう見えるんだそうな)
カメの8つ固定はあまり知られてないようです。
これは背甲形成のパターニング機構が他のシステムと統合し、一種の構造的拘束を為しているためだ、と
『動物進化形態学』倉谷滋:著 東京大学出版会 などに書いとりましたが、
哺乳類の頚椎もこの応用なのかな。
因みに、スッポン君の尾椎は13でした。他の椎骨はイシガメなどと同数だったんですが…
欠損もまずありませんし、尾椎の差異はバウプランの中でも結構制約を受けない部分なのかなと感じました。
今回、スッポンの正確な骨格図を探しましたが、見つかりませんでした。
なので、自分で描きました。
まとまった時間が取れなくてささっと鉛筆描きですが、大まかな描写は正確だと思います。
ただ、頭蓋などは縫合線が殆ど見えず滑らかで…各部名称などは不正確かもしれません。
背甲も特殊なので…ねぇ、環椎もよく分からんし…
まぁ、あまり信じないで下さい。
まず名称表。
次いで背甲。
全身骨格、腹側から。腹甲は除いてありますよ。
さぁみんな大好き(?)頭蓋だ!
その他いくぞ、環椎は自信ないぞ。
最後、何処探しても資料のない、舌骨(hyoids)。アマチュアの作った標本によっては、付いてないものさえもある。
脊椎動物(vertebrates)の進化を表す、割と重要な骨だと思うんだけど。
なお、これらを製作するに当たり、
『日本動物解剖図説』 広島大学生物学会:編 池田喜平 稲葉明彦:監修 1971森北出版株式会社
Plate21 イシガメ Pond tortoise の項を全面的に借用・改変させていただきました。
典型的なカメ類であるイシガメと比較してみると、面白いですね。
間違い、ご意見などありましたら、お気軽にコメントどうぞ。
LINK1→suppon -deai- : ポンノスケとの出逢い
LINK2→hansel und gretel: 捌きの前夜
LINK3→suppon -wakare-: 最後の晩餐
LINK4→specimens: その他の収蔵標本
・vertebrata:01・02 脊椎動物。
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どうぞ参考に。
学校の先生に参考にしていただけるとは光栄です。
完成したら是非見せて下さいね。
エタノールを用いるのは、第一に安全性を考慮してのことです。
一般にメタノールの方が分子量が小さい分浸透性がよく、固定力も強いんですが
如何せん引火性・揮発性・毒性が かなり強く、
このため廃液の処理も法的な規制がありますので、
個人の家庭で用いるにはリスクが大きすぎるんです。
骨格標本は、固定と言っても決してそう軟らかい物でもないので
私は安全な方が良いかなと。
ご専門の方からそのようなお褒めの言葉を頂くとは、誠に勿体無い限りです。
築地市場には、私もたまにお邪魔しております(冷やかしみたいなもんですが…)。
今度行ったときにはスッポン売り場にも伺ってみようかしら…
私は築地市場でスッポン販売致しております。
いつも関節に包丁を入れ解体してます。
貴重な資料を公開していただき有難う御座いました。
良い勉強になりました♪
細胞内にも細胞内骨格あるしね(アレはまた違うか)、美しくて当・然!
てか解剖学あるんや…いいなぁ。
美しいわ。(待て)
あっちでも今、解剖学やってるけど。
やっぱり骨はいいね!