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とりとめのないメモの山

neural crest cells:

2007-10-20 00:00:00 | biologie*

神経堤(neural crest)とは、
脊椎動物(vertebrate)の発生における神経管(neural tube)形成時、
神経外胚葉(neuroectoderm)と表皮外胚葉(epidermis)との境界に現れる細胞集団。
ここから脱上皮化(deepithelialization)して遊走する細胞群のことを神経堤細胞neural crest cellsと言う。

いわば幹細胞(stem cells)のような全能性を持っていて様々に分化する、
脊椎動物の頭部発生には主要となってくる細胞群である。
その重要性たるや、外胚葉(ectoderm)、中胚葉(mesoderm)、内胚葉(endoderm)に次いで
"第4の胚葉 (fourth germ layer)"とさえ呼ばれるくらいだ。

ちょいちょい誤解されるが、神経堤の全てが神経堤細胞になるわけではなく、
脱上皮化を受けなかった神経堤はanterior neural ridge(神経管頭端?正式な和訳は?)として
一部の頭部表皮外胚葉や、
感覚器プラコード(sensory placode)、下垂体プラコード(pituitary placode)などに分化していくらしい。


さて神経管が閉じると、神経堤細胞(
neural crest cells)は直ちに胚の左右側面を包むようにして腹側へと長躯"移動"し、
メラノサイト、内分泌細胞、末梢神経系のニューロンや、平滑筋、そして頭部を中心とした軟骨や硬骨などの様々な器官を形成する。
 ※例図:神経堤細胞の移動 Diagram at University of Michigan

その分化より、神経提は"頭部型神経堤cephaic neural crest"と"体幹型神経堤trunk neural crest"に大別できる。
ただし、これらは位置的な区分ではなく、両者が混在する場合もあるらしい。

脊椎動物の発生をでは鰓弓branchial arch(咽頭弓pharyngeal arch,内臓弓visceral arch)を容易に見られるが、
咽頭弓内には神経堤間葉があり、要はこれが頭部型神経堤細胞の移動の前端だと思っても善いだろう。
神経提細胞は独自のHoxコードを持っており、各々の咽頭弓が異なった構造物を構成する。
 ※例図:ニワトリのHoxドメイン Hox domains in chicks

例えば第1鰓弓は上顎・下顎upper & lower jaws を作るが、それ以外にもヒトを例にすると、大まかに

                      ※この例はヒトの発生を元にする。第5鰓弓はヒトに限らず、脊椎動物では欠くか矮小化したものが多い。
のような構造物を作る。


少々話が飛躍したが、
頭部型神経提cephaic neural crestは形態的にまとめて、前方から次のような3つの間葉を作るらしい。

・三叉神経堤細胞trigeminal crest cells: 頭部顔面領域craniofacial region(鼻部~眼窩~顎骨弓あたり)を充填。
           要は上表の第1鰓弓(下顎弓あるいは顎骨弓)あたり。顎骨やそれに付随する筋・結合組織、
           頭蓋の一部、頭部の末梢神経節の細胞体や神経支持細胞も形成する。

・舌骨神経堤細胞hyoid crest cells:    第2鰓弓(舌骨弓)。舌骨とその周辺の主な支持組織は勿論、
           一部の神経支持細胞も形成する。

・鰓弓神経堤細胞branchial crest cells:  ないし、"囲鰓堤細胞集団circumpharyngeal crest cells"。
           耳胞の後ろの全ての咽頭弓に入り、鰓弓骨格は勿論、咽頭嚢派生物、腸管副交感神経節、
           また心臓神経堤cardiac crest cellsにも分化するようだ。


体幹型神経提trunk neural crestの神経堤細胞は頭部ほど派手に遊走するわけではなく、多くは体節中を移動する。
移動中の胚環境からのシグナルに依存し、脊髄神経節から末梢神経節まで様々な分化をする。



  で、例えば頭部骨格の系統発生を考える時には、神経堤細胞を考慮に入れるのは必須なのである。



脊椎動物の骨格に硬骨と軟骨があることは誰でも知っているが、
骨格の発生の上では、
組織発生学的には
・膜性骨membranous bones(直接結合組織に発生するもの)
・軟骨性骨cartilage bones(一旦軟骨原器として発生した後に硬骨に置き換わるもの)
の2種がある。(軟骨細胞が骨細胞に変化するわけではない。各々の細胞は間葉系幹細胞が、sox9,sox5,sox6或はRunx2,osterixなどが発現することにより分化する。)

形態発生学的には
・外骨格exoskeleton(皮骨dermal bones。頭蓋、歯、"魚"の鱗など。)
・内骨格endoskeleton(椎骨、四肢の骨、一次的神経頭蓋など)
の区別がある。(当然だが、この外・内骨格の区別はあくまで"脊椎動物での"話。例えば節足動物の外骨格などとは根本的に異なる。)

厳密には異なるが、大体は外骨格が膜性骨、内骨格が軟骨性骨として発生してくることが多いようなので、
これらの語がほぼ同義に扱われている場合も多い。

これら骨格の由来は、古くは(そして長い間)全て中胚葉性であって、
その多くは硬節(体節は外側から皮節dermatome・筋節myotome・硬節sclerotomeに分かれる)によると考えられてきた。
いや実際脊椎骨などは勿論硬節が主要な役割を果たしているのは間違いないのだが、

少なくとも頭部骨格{cranial skeleton;
 ;頭蓋(cranium),上顎(maxillary),下顎(mandibular),舌骨(hyoid),さらには気管(trachealis),
  鰓弓(咽頭弓, 内臓弓, branchial arch, pharyngeal arch, visceral arch)骨格 }においては、
初期的に外胚葉に由来する神経堤細胞が、その重要性においてかなりの比重を占めているのは間違いない。
特に魚類においては、頭蓋を形成する骨格のほぼ全てが神経堤細胞由来といった話もあるが、これに関しては未だ少々慎重になった方がよい。


…にしても

個人的に、脊椎動物頭部の系統進化において気になるところが山とあるのだが、
(分かりやすい所で簡単に言えば、外側頭窓。カメ類が、最近の分子系統などによる論議に即して
 無弓類から外れるとすると、側頭窓の由来・それに係わる因子の論議などが重要になってくるんじゃねぇかな。)
神経堤細胞neural crest cellsから何か分からんかなぁ…
誘導も色んな所で働いてるようだし…


やっぱり理研に行って聞いてみようかしら。
…神戸か…
                       何だろう、妙なところに歯車を感じる…


〈参考図書〉

動物進化形態学
 倉谷 滋 :著, (東京大学出版会)

脊椎動物の進化
 Edwin H. Colbert, Eli C. Minkoff, Michael Morales:著,  田隅 本生 :翻訳 (築地書館)

進化発生学―ボディプランと動物の起源
 Brian K. Hall:著,  倉谷 滋:翻訳 (工作舎)


→BLOG内記事:
ニワトリの発生development =gallus:
脊索動物門chordata:
vertebrata:0102 脊椎動物。


<ονλη ονε>


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