fantasia*diapsida

とりとめのないメモの山

disosaurs of gondwana 2009:

2009-05-10 00:00:00 | biologie*

大恐竜展 知られざる南半球の支配者』 in 国立科学博物館

GW無宿の旅2日目

なんだか久しぶりに本格的な恐竜博に行った気がします。
今回は主にゴンドワナの方々が中心。
一昔前メジャー級の恐竜と言えばローラシア産がほとんどだったから、こういうのがあると嬉しい。
子供向け意識が妙に強めかなとか、この復元はちょっと??というのもあったが…
まぁ総じて良かったです。
いくつかご紹介。

まず入口に真っ先にいるのが、
クリオロフォサウルス・エリオティ Cryolophosaurus ellioti Hammer et Hickerson, 1994 。
 
 
南極はカートパトリック山の標高4200m地点のハンソン層で発見されたことで有名な奴です。
属名(cryo;凍った + lopho;トサカ + saurus;竜・蜥蜴)の通り、涙骨(lacrimal)がヒュッと伸びたトサカが特徴的。
この特徴から"ジュラ紀のプレスリー"ってことで"Elvisaurus"とあだ名されたこともあったようだが…
プレスリーかなぁ…?

ところでクリオロフォサウルス、当初は原始形質を多く保持したテタヌラ(Tetanurae)であり
まぁ比較的アロサウルス(Allosaurus)などに近いだろうとされていたんですが、
最近ではテタヌラではなく、
ケラトサウリア(Ceratosauria)に属すディロフォサウルス(Dilophosaurus 偶然にコイツも"トサカ"が特徴だ)
やコエロフィシス(Coelophysis)類に近縁だとか。
この復元はたぶんアロさん意識ですね。
でも肩甲骨の形とかが微妙にアロサウルス科じゃないよ的な主張を見せている。


ニジェールサウルス・タクェティ Nigersaurus taqueti Sereno et al., 1999
 
 
アフリカはニジェールの約1億1000万年前の地層から発掘された、
レッバキサウルス科(Rebbachisauria)の竜脚類。
最近はニジェールあたりで、シカゴ大のポール・セレノ(Paul C.Sereno)がよく発掘していて、
コイツもまたスコミムス(Suchomimus)などと並んでセレノさんが見つけた代表的なやつですね。
口の前面がほぼ一直線な形状をしていて、そこに同形の歯がズラッと60本ぐらい横並びしている。
如何にも地表に生えてる背の低い植物を刈り取って喰ってそうな口が特徴的です。
(いわゆる"草"はこの時代まだないはずなので、「草を食べる」みたいな言い方はしない)
デンタルバッテリーも発達しており、予備の歯も含めると約500本もあったとか。

右の写真は、俺が個人的に萌えてた上顎骨(maxilla)と前上顎骨(premaxilla)です☆

 
 
アンガトラマ・リマイ Angaturama limai Kellner & Campos, 1996
 
  
最近の学名の流行りで、発掘地の現地民の神話・伝承から属名を採るのが人気になっているが、
コイツもトゥピ・グアラニー族の伝承にある守護霊Angaturama(勇敢なるもの/誇り高きもの)から命名されている。
ちなみに今回の恐竜展では"勇者"と訳されている。
いずれにせよ、名前と言いヴィジュアルと言いたいへんカッコいい。
少し小ぶりではあるが、典型的なスピノサウルス科(Spinosauridae)で、やっぱり魚メインで食べていたような顔してますね。

ところでアンガトラマさんは発掘された部位が少なく、よってこの全身骨格も
(典型的なスピノサウルス型をしていて、大きく間違っていることはないんだろうけれども)
そこまで信じ込むことはできない。
ちなみに、アンガトラマの発掘されたブラジル北部では、
同じ時代の地層からやっぱり同じスピノサウルス科の
イリテーター(ラテン語読みならイリタトールか) Irritator challengeri Martill et al., 1996 が見つかっております。
で、アンガトラマとイリテーターは実は同種のシノニムじゃね?と言われていて、
これが証明されれば、先取権の原則によって僅かに記載の早いIrritatorが採用、Angaturamaは破棄とされてしまう。
ちなみにIrritatorの意味は"イライラさせるもの"。
そ、そんな…。


マプサウルス・ロセアエ Mapusaurus roseae Coria & Currie, 2006
 
 
今回の目玉ということで、ポスターにもドーンと復元画が描いてある。
この写真は子供の方。今記事トップ画像も参照のこと。
最大で推定約13mだというから、現時点で最も確からしい最大の獣脚類標本、
ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex Osborn, 1905)のFMNH PR2081 通称"Sue(スー)"の約12.8mに並ぶサイズである。
もっともT-rexって異常なぐらい体格がゴツく脚も長いので、体長ぐらいではどっちが"デカい"とは言えないのだが…。
何にせよマプさん含め、ギガノトサウルス(Giganotosaurus)といいカルカロドントサウルス(Carcharodontosaurus)といい、
カルカロドントサウルス科はデカイのが多い。

何が面白いって、こいつは単一の種だけで各成長段階にある個体が最低7頭、同じボーンベッドから見つかったことにある。
ボーンベッドが形成される場合注意しなきゃならんのは、
例えば化石が形成されるのはまず堆積岩であり、堆積岩は流水により土砂が堆積してできることが多いため、
同じ場所で複数の化石が見つかっても、"河川の氾濫で死体が流されて集まった"可能性が少なくないということだが、
今回に関してはどうやらそれもクリア。
生息時の環境がそのまま保存されているようであり、
それならばこうも成長段階の違う個体が集合して見つかるということは、
一時的であったかもしれないが、ある程度の群れを構成していた根拠になり得る。

今回もやっぱりだったが、どうも圧倒的に大型獣脚類といえばティラノサウルスが浸透しているせいか、
マプさんを指して「ティラノサウルスだよ~」と言うお父さんお母さんが少々見られた。
パッと見で全然形違うと思うのはやっぱり見慣れているせいもあるかもしれないが、
並べてみるとやっぱり全然違うのは一目瞭然である。
そもそも、カルカロドントサウルス科の生息していた白亜紀前期のゴンドワナと
ティラノサウルス科の白亜紀後期ローラシアでは、時代も場所も全く違う。
系統的にもかなりかけ離れているので注意しましょう。

特徴は基本的に典型的なカルカロドントサウルス科なのかな、と。
しかし相変わらず、側頭窓(temporal fenestra)の復元がデカ過ぎやしないかなぁ?と疑問に思う。
これはギガノトサウルスの頃から方々で言われていたらしいが…。
だってロドルフォ・コリア(Rodoifo A. Coria)さん、「ケラトサウルスを参考にした」なんて言っちゃうんだもん。
テタヌラちゃうんかい!
そういや前も言ってた


パタゴニクス・ペウラタイ Patagonychus peuratai 
 
 
何故か全然データが見つからないパタゴニクス。記載論文はどこに?
何にせよ、モノニクス(Mononychus)系でこれだけしっかりした復元骨格を見たのは初めてかもしれません。
普通はほぼ1本爪で割りかしガッチリした前肢に目が行くんでしょうが、
俺はむしろ血道弓に萌えてたっていう…(笑)。
だってこれ、尾の付け根がシューっと長くて、先に行くとすぐなくなる感じが面白くないですか?
ってかこの部位、ちゃんと全部見つかってないんじゃねえかみたいな危惧もあるんだけど…


アナビセティア・サルディヴィアイ Anabisetia saldiviai Coria & Calvo, 2002
 
 
今回唯一の鳥盤類。
大腿骨の
第四転子(fourth trochanter)が顕著に鉤状になっているので、一目で中でも鳥脚類と分かる。
(いや、こんだけ復元されてたらどこからどう見ても鳥脚類だけどさ…)
ところで私がじっとよく見たのは頭部。
今研究してるのが脊椎動物の頭部骨格だから、そりゃみんな注目するけれど、鳥盤類はまた別格だ。
かわいい顔して何気にちょっと凄いことになっている(ような気がする or といいなぁ)。


マジュンガサウルス・クレナティッシムス Majungasaurus crenatissimus (Depéret, 1896)
 
 
あれ?どう見たってマジュンガトルス(Majungatholus
)じゃん、名前変わったの?
と思ったが、その通りでした。
元々マジュンガサウルスとマジュンガトルスは別々に記載されていたが、
最近同種だったことが分かって、命名規約に基づき先取権のあるマジュンガサウルスに統一されたらしい…
マジュンガトルスってカッコよかったのにな。
ところで化石にある、下顎の後ろのシュッと長いのは舌骨(hyoid)?頸肋骨?
前者ならスゲーはしゃぐんですが。
ずっと気になってたんで、こいつらの舌骨。
パッと見たところ、やっぱりどう見たって鳥っぽいなぁって形してますが…ちゃんと誰か復元してくれ~!


恐竜終わり。ここから翼竜。

タラソドロメウス・セティ Thalassodromeus sethi Kellner & Campos, 2002
 
 
ブラジルはセアラ州、白亜紀前期で見つかったタペジャラ科(Tapejaridae)の翼竜である。
タペジャラ科(ラテン語読みならタペヤラだよねぇ)の面々は、それでどうやって飛ぶんですか?
というぐらいデカくて形も様々なトサカを持つものばかりで、まぁそれがカッコいいんですが。
タラソドロメウスも例に漏れず。
トサカには血管の走った跡があり、体温を調節していたのではないかと言われておりますが、
同時にディスプレイにも使っていたでしょう。復元にもそれは反映されています。

ちなみにコイツ、1983年には既に見つかっていながら記載論文は2002年。
アレクサンダー・ケルネー(Alexander W. A. Kellner)曰く、「予算がなかったから」だそうな…。
研究にお金は必須なんです。


アンハングエラの一種 Anhanguera sp.
 
 
新種につき記載はまだ。論文を待ちませう。


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5 Comments

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お初ですmm (Basilio)
2009-05-10 00:33:47
やっぱり普段見られない恐竜が見られるのはすごく嬉しいですよね♪ただ、普段見られないものを持ってきているからこそ、今回なら最悪でも竜盤目の系統図は欲しかったのかな…あれがあれば少なくとも「マプサウルス=ティラノサウルス」にはならないのにな、とは思いましたが。
今回はなるべく小難しい話を排して子供受けを狙ってたみたいですが、小難しい話をしないのと必要最小限をしないのじゃ違うと思うんですけどね(苦笑)

>アンガトラマ
やっぱりイリタトールとシノニムという話はあるんですね!
や、何を隠そう最初見たときイリタトールだと…
返信する
その節はどうも (LOKI:(fantasia*diapsida))
2009-05-10 00:53:06
そうそう、折角ゴンドワナの連中をメインに持ってきているからこそ、
「お馴染みの連中とは実はこんだけ遠い関係なんだぜ!」っていうのが、
文章だけじゃなくて系統樹かなんかでバーンと出せたらよかったのになぁと。
子どもっても意外とそういう小難しい話好きですしね。
あれだけポケモンの各タイプの関係とか生息地とか覚えて追及し考察するんだから(笑)
恐竜でもそういう系統関係の面白さとか伝えていったら、
名前覚えるだけじゃなくって、もっと色々楽しめると思うんだけどなぁ~。


うん、同じくイリタトールだと思った。
しかもアンガトラマとして記載された化石は断片的で、頭蓋の前部(とあと数か所)だったのに対し、
イリタトールの化石は主に頭蓋の後部。前部が欠けてるっていう…。

化石が少ないってコワい。
返信する
うんうん (Basilio)
2009-05-10 01:41:07
それとこれは子供も大人もだけど、
文章にされるより目で見えるものの方が結局は好きだしあてにするんですよね。
だからこそやっぱり初めにでも終わりにでも中間にでも系統樹は置いて欲しかったな~。
名前だけじゃなくて相互の関係が分かると面白いですよね!そういうところを教えることから生物に興味を持たせることっていうのは始まるんじゃないかと僕も思います。

>イリタトール
ですおね(^^;
何かそういう話は多いですよね。
そういえばオピストコエリカウディアとネメグトサウルスがシノニムかもしれないとかなんとかって言う話が大昔にあった気がするけど、あれは一体どうなったんだろう…(遠い目
返信する
行かれましたか。 (ゆー)
2009-05-10 11:53:42
さすが連休、混雑していたみたいですね。
もう一度くらい会期中に行きたいと思いまただすが、
人ごみに押されて見るのもな…と悩み中です。
タラソドロメウスは格好良いです。翼竜は好きかも。
でかいトサカの翼竜って飛んでる時に首かしげたら
そっちの方向に凄い勢いで方向転換しそうな気が。

返信する
Unknown (LOKI:(fantasia*diapsida))
2009-05-10 18:09:15
>Basilio殿

一応オピストコエリカウディアとネメグトサウルスは、今のところはまだシノニムでない…
らしい。


>ゆーさん

人込みは凄かったですね。
特に小さい子が多かったので、危うく蹴っ飛ばしそうになって何度ヒヤヒヤしたことか(汗)。

トサカのカッコいいタペジャラ科がいっぱい来ててハッピーでしたが、
ここまで来るならタペジャラ・インペラトールも見たかったなぁ~と会場で喚いておりました(笑)。
タラちゃんもカッコいいんですけどね。
今の鳥もそうですけど、奴らの首はたぶん左右方向にはあまり曲がらなかったはず。
だいたい空飛んでるやつがあんまり首振ると、
捻挫するわ脱臼するわキリキリ舞いするわで良いことがないです。

3つの首をブン回しながら飛んでたキングギドラ、恐るべし…
返信する

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