横浜松坂屋が、まもなく閉店します。小学生の頃までお出かけ、買い物といえば横浜駅周辺よりはここでした。身近なデパートとして、ずいぶんお世話になりました。
「他でこれはちょっとないだろう」と思うものが、時計盤のようなこのエレベーターの表示板。戦前の昭和モダンの雰囲気いっぱいです。表示板のバックには、アールデコ調の装飾がされています。子供の頃は、この針が動くのを飽かず見ていました。
エスカレーター側面にも、アールデコ調の装飾がされています。エスカレーターの上部にある照明も、目立ちませんが同様の装飾がされているんですね。分かります?
階段のフロア表示には、唐草模様の縁取り。踊り場の水飲み場もユニークな存在です。ちなみにちゃんと水が飲めます。
驚きと同時に怒りを禁じえないのが、閉店後この建物を壊すということ。所有者のJフロントリテイリングが、この建物の市文化財指定を知らないわけがありません。横浜の街にも、歴史にも、文化にも敬意がない。無神経にもほどがあります。
さすがに市も慌てていて、”外観だけでも残るように・・・”と申し入れていますが、外観のみの保存では、クラシカルな内部の構造や装飾は残りません。今ちょうど「横浜トリエンナーレ」の期間中ですが、これは立派な”アート”でしょう?しかも、「アートな街づくり」などど称して通りや広場にドンと置かれているようなオブジェとはまるで違う。長い間地元の人々と共にあった、生活に根付いた本物の”アート”です。
老朽化の問題もありますが、横浜松坂屋は、関東大震災直後で耐震性が重要視された時代の建物です。最近のマンションなどより、よほど頑丈に作ってあるはずです。
横浜は大規模な空襲に遭っており、火をかぶってしまった建物はコンクリート製といえど耐久性が落ちてしまいます。それでも解体業者は、昭和初期のコンクリート建造物の構造の確かさや耐久性に、いつも驚かされているのだそうです。
補強工事をして、それこそアーティストたちのためのスペースに使えないものでしょうか?
横浜の「ハイカラ」がなくなってゆく・・・。私はそう感じています。他所の人たちや、ビジネスが第一の人たちはきっと、”単なるノスタルジー”だと笑い飛ばすのでしょう。