5月29日付の日経産業新聞の1面に、こんな見出しが掲載された。
オーディオメーカーのオンキョーが製造をやめ、AV事業を米国のサウンド・ユナイテッド(SU)に売却しOEMによる成長を目指すことになった。
日本のオーディオ専業メーカーは事実上終演を迎えることとなった。オンキョーは国内ではほぼ最後のオーディオ専業メーカーだったが、これで、ブランドは残るものの日本からオーディオ専業メーカーがほぼ姿を消す。
僕が初めてオーディオに興味を持ったのは中学のとき。70年代から80年代にかけて、特に高価な単品オーディオが主流で、当時は「単品でなければオーディオに非ず」といった空気があった。オーディオ専門店や量販店のオーディオコーナーで視聴して買うのが普通だった。オーディオ雑誌も多く、必ず周りにはオーディオマニアがいた。
当時はパイオニアやオンキョー、山水電気やデンオン(現在はデノン)、トリオ、日本マランツなどが次々とオーディオ製品を発表していた。アンプの山水、チューナーのトリオなど得意分野をもつオーディオメーカーも多かった。
専門メーカーに負けじと、ソニーや松下電器(現パナソニック)もオーディオには力を入れていた。松下電器はTechnics、東芝はAurex、三菱電機はDIATONEなど、オーディオ専門のブランドをもつ総合電機メーカーも多かった。
やがて時代はレコードからCDへ、そして携帯音楽プレーヤーやスマホで音楽を楽しむ時代へと変化し、音響機器市場は縮小を続ける。
電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2008年に2104億円あった国内の音響機器市場は2018年には853億円と半分以下に縮小した。
オーディオメーカーはどこも苦境にある。パイオニアは2015年にオンキョーに音響機器事業を売却した。トリオを吸収したケンウッドは2008年に日本ビクターと経営統合した。パイオニアやトリオと「オーディオ御三家」と呼ばれた山水電気は2014年に経営破綻した。日本マランツとデノンは2005に経営統合したが、2017年にオンキョーがAV事業を売却するSUが買収している。
海外でも再編は進んでいる。「JBL」「ハーマン・カードン」などのブランドを傘下にもつ米ハーマンインターナショナルは韓国サムスン電子が買収している。
今、量販店に行くと、単品コンポはほぼ姿を消し、システムコンポが多少並んでいるが、メインはスマホから音楽を飛ばして聴くことができるブルートゥーススピーカーだ。
今後、単品コンポが盛り返すことはないだろう。だが、趣味としてのオーディオをこよなく愛すマニアもまだ存在はする。むしろ、高価な単品コンポは昔より増えている。日本で早々にオーディオメーカーが終演したことは本当に残念で仕方がない。
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