運命の女（02） ‐Unfaithful‐ エイドリアン・ライン監督

　　前回、『トスカーナの休日』でダイアン・レインを取り上げたとき、ちょっと語った作品です。邦題は『運命の女』になっていますが、原題の『Unfaithful』は、ここでは「不貞な」という意味でしょう。本来のタイトルとはちょっとニュアンスが違う感じですが。かといって『不貞』ではちょっとストレートすぎて敬遠されるからこういうタイトルにしたのかも。
　この作品は映画館に行きました。それは、ダイアン・レイン目当てというよりFav監督のエイドリアン・ラインの作品だからです。ラインは87年の『危険な情事』でアカデミー賞の監督部門でノミネートされています。彼の作品のファンになったのは『ナインハーフ』（85）でです。（実際に見たのは90年代ですが）
　『ナインハーフ』は、SMチックな内容ばかりが先行して、あまり監督のエイドリアン・ラインが語られることは少ないですが、ライン監督の映像美にひきこまれました。（この作品でキム・ベイシンガーのファンにもなりましたが）陰影の使い方がすばらしい。日常の風景もこの監督にかかるとスタイリッシュな雰囲気あるものになる。あとバックグランドの音楽にもこだわりを感じる。映像と音楽で雰囲気をつくる。1941年生まれだそうですから、もう70歳過ぎてる。もう監督するエネルギーはないのかなー。
　そんなエイドリアン・ライン監督の現時点での最新作が02年のこの『Unfaithful』です。監督だけでなく、製作にも関わっています。主演はダイアン・レイン。夫役にリチャード・ギア。（熟した2人が84年の『コットンクラブ』以来の共演です）この作品でダイアン・レインはアカデミー賞の主演女優賞でノミネートされます。会社を経営する優しくてかっこいい夫がいるにもかかわらず、アクシンデントで出会った若い男性の虜になり、官能と苦悩を行き来する女を見事に演じています。ダイアン・レイン演じるコニーが惹かれてしまうセクシーで雰囲気あるフランス系の男性ポールをオリヴィエ・マルティネスが演じます。

　

　ポールは古い値打ちのある本の売買を仕事にしていて、アパートの1フロアーを貸しきってるような広い部屋には図書館のように本があります。この辺も雰囲気あります。彼の仕事が、いかにもって感じのIT関連のエグゼクティブとかだったら興ざめ。コニーには愛する夫と子供もいて、裕福。そこに何の不満があるのでしょう。しかし、ポールとその彼の空間は、まさに非日常の世界がある。彼女は苦悩するのだけど、彼の部屋に通い続けます。そしてどんどんきれいになっていく。そんな彼女の変化を、夫のリチャード・ギアも気づくわけです。そして物語の結末は・・・って感じです。
　そしてサントラもお気に入りです。夏にはまったく合わないサントラです。一気に寒くなりましたが、ちょうどこれからの季節にピッタリです。エイドリアン・ライン監督は、映像だけでなく、音楽、BGMにもこだわりを感じます。映像と音楽がお互い相乗効果を生み出し、作品に空気と余韻をもたらしている。
　『ナインハーフ』の時にも感じましたが、ライン監督の作品はピアノの音色がすごく効果的に使われている。はかない感じが画面に漂う。『ナインハーフ』はボーカルサントラは出ていますが、インストの方がないのが残念です。（といっても個人的に音源をあちこち探して大分入手しましたが）
　今回、音楽を手がけるのはヤン・A・P・カツマレク、ポーランド出身の音楽家。この作品で初めて彼の音楽に出会いました。その後、彼が絡んだ作品は見てなかったのですが、04年『ネバーランド』という作品でアカデミーで作曲賞を受賞してました。（素晴らしい！）ピアノソロの響きも美しく、ピアノの音色とストリングスが美しく融合する曲もある。
　おれ、人生って紙一重って思って、思うようにしてます。コニーも、強風というアクシンデントの中、タクシーがつかまっていたらそれまで接点のなかった彼の部屋に行くこともなかった。まー大人の映画でしょうね。ライン監督も、映像美はすてきですが官能シーンはめちゃエロい。ダイアン・レインも体当たりの演技です。あとダイアン・レインかなり美脚です。

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