残照日記

晩節を孤芳に生きる。

割れ窓理論

2011-12-27 17:35:17 | 日記
【事は必ず細事に起る】 老子
≪天下の難事は、必ず易きに起こり、
 天下の大事は、必ず細に作(起)る。≫(第64章)

>「ヒヤリハットの法則」といって非常に小さなミスが重なり大きな事故につながることがあります。これを防ぐためには「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」、「KY(危険予知)、KYT(危険予知訓練)、KYK(危険予知活動)」が大事です。…≫(当ブログ投稿者 危機管理アドバイザー尾下義男氏)

≪「割れ窓理論」で犯罪防止、取り締まり強化へ──無人販売所や畑、駅構内などでの犯罪が目立つとして、静岡県警は駅構内での張り込みや山間部での巡回を増やすなど、取り締まりの強化に乗り出した。軽微な犯罪を摘発することで重大犯罪の芽を摘む米国の犯罪抑止理論「割れ窓理論」に基づく対策という。…清水署管内では、10月頃から、無人販売所や畑、山林などでの窃盗被害が目立っている。同署によると、11月、無人販売所での窃盗で検挙したのは、26人(前年同期比7人増)、畑や山林の農作物を盗む「野荒らし」が16人(同12人増)といずれも増加した。同署は11月から、人目に付きにくく、被害が多い山間部でのパトロール回数を2倍近くに増やしたほか、不審者に気づかれないようにするため、制服勤務が原則の警察官が私服で張り込みを行うなどして取り締まりを強化している。…同署の後藤健一地域課長は「お金がなくて、食べられない人が罪を犯すというわけではない。『これくらいならいいや』というモラルの低下が問題」と指摘している。≫(12/26 読売新聞)

∇「割れ窓理論」については、当ブログでも以前に述べた。年末の犯罪防止に一役買ってもらいたいので、再録する。──「壊されたまゝ放置された窓ガラス」とでも訳される「ブロークンウィンドウズ理論」。アメリカの犯罪学者ジェームズ・Q・ウィルソンとジョージ・ケリングが発案したもので、「犯罪は無秩序の不可避的な結果」だとする理論。即ち割れたままで修理も何もされていない窓のそばを通りかかった人は、誰も気にしていないし誰も管理していないと思う→しばらくしてまた他の窓が割れる→それがやがて無法状態の雰囲気を醸し出す→次々と向かいのビル、隣の通りへと伝わり、「このエリアでは何でも許される」という「空気」を伝播させる。かくして都市街では、落書きから凡く風紀の乱れなど、比較的些細な問題の累積が深刻な犯罪の淵源・呼び水になる。この連鎖する現象を「ブロークンウィンドウズ理論」と名付けたのである。

∇彼等はその学説を立証するため、スラム街の路上に1台の車を停めっぱなしにして、経過を観察した。車が「停めてあるだけ」の状態では、何も起こらなかった。次にわざと車のフロントガラスを割り、割れた窓を放置したまま再び観察を続けた。すると、みるみる人がやってきて次々にタイヤやエンジンを盗み出し、あれよと見る間に車体は無惨な姿になってしまった。──このような実験を通して彼等は、スラム街の破壊・盗難のきっかけは駐車それ自体ではなく、無防備な状態(割れた窓)にしたまゝ放っておくことにある、と考えたのである。(老生は、貧困や日頃のストレスの蓄積が「割れた窓」の更に元の起爆剤になっている、と思うのだが・・・) 理論(現象といった方が適切かも)の是非云々よりも重要な点は、ケリング博士等の理論を市政に取り入れた当時のニューヨーク市長R・ジュリアーニ氏だ。

∇彼は治安向上の最優先を公約に掲げ、「割れ窓理論」を取り入れ、警察官の大幅な増員をし、路上パトロール強化のほか、割れた窓や落書きを放置しないというような軽犯罪を次々に取り締まることを徹底した。その結果、1993年には約1900件あった殺人事件が、2001年には約600件まで減少したという。些細と思える学説に耳を傾けて街を改善していった市長が偉いともいえる。蛇足を加えれば、「割れ窓理論」は、尾下義男氏が指摘された「ハインリッヒの法則」を裏返したその犯罪版だともいえる。既にご承知の通り、「1件の重大災害の陰には29件のかすり傷程度の軽災害があり、その陰には300件のけがはないがヒヤッとした体験がある」。これをハインリッヒの法則または1:29:300の法則という。70年も前に50万件以上の労働災害から導き出された法則だ。どんな大きな事件の裏側にも必ずその淵源となる小さな禍種が渦巻いている。それを「見て見ぬふり」をしていてはダメ。老子曰く、≪天下の大事は、必ず細に作(起)る。≫

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3 コメント

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防災対策への提言 (危機管理アドバイザー尾下義男)
2012-04-22 08:55:47
講演テーマ 「東日本大震災の教訓 ~地域の絆~」です。

災害が起きたらまず何が一番大事か?
それは自分の身を守ることが大事です。
まず自分の身の安全を確保してから周りの人を守りましょう。
心と体が健全でなければいい仕事はできません。
健康を確保するため労働安全衛生法があります。
組織のトップは職員が心も体も健康で安心して働けるため安全配慮義務が必要です。
日頃から心と体のリカバリーが必要となります。
「ヒヤリハットの法則」といって非常に小さなミスが重なり大きな事故につながることがあります。
これを防ぐためには「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」、「KY(危険予知)、KYT(危険予知訓練)、KYK(危険予知活動)」が大事です。
災害とは災害対策基本法に定められたもので、局所的に、地域で処理能力を超え、他の地域からの救援を必要とする、多数の被害と被害者の発生する非常事態の事です。
「Disaster」悪い星回りなどと言われています。
災害の種類としては自然災害(広域災害)、人為的災害(局所災害)、特殊災害(NBC災害 核・生物・科学による災害=今回の原発事故、オウム真理教による地下鉄サリン事件等)が今日大きな問題となっています。
今回の東日本大震災の特徴は地震・津波・原発が同時に起こったトリプル災害であったということ。
広域性・甚大性・複合性を含んだ災害からはやくリカバリーしなければなりません。そのためにはいち早い復旧・復興が必要です。
防災とはなにか?災害を出さないことです。
しかし今回の震災においては災害を防ぐことができませんでした。これを教訓として「減災」という考え方を提唱しています。これは被害を最小化することに軸足をおき、地域にあった防災を行うことです。
視点はまず一人一人の命を守ること。「悲観的に想定し、楽観的に準備」することです。30日後に備えつつ、30年後にも備える。このことによって防災の「負のスパイラル」を断ち切ることです。
災害の及ぼす影響としては社会への影響、生活(職場)への影響、そして今回の震災ではトラウマ現象による恐怖・絶望感・無力感など、精神面への影響が精神的苦痛として国民に重くのしかかっています。
被害の拡大要因としては過去の経験による「予測の甘さ」や、偏見が正常化してしまう「自分は大丈夫という対応の甘さ」、物事に慣れてしまう「オオカミ少年効果」が挙げられます。
地震行動の中で「3.3.3の原則」というものがあります。
3分間は自分の身を守る、3時間で安全な場所に避難する、3日間で初期の避難所生活を切り抜ける、3週間3ケ月で仮設住宅へ、復興のまちづくりを目指すという原則です。
職場の防災対策における避難・誘導の留意点として「オ・カ・シ・モ」の合言葉があります。「オ:押さない、カ:駈け出さない、シ:喋らない、モ:戻らない」がとても重要な合言葉となります。
また、職場防災の基本的な考え方として1.生命の安全確保、2.二次災害の防止、3.地域貢献・地域との共生、4.事業継続が重要となってきます。
これらの対策が日頃から行われているか?これを「BCP/BCM(事業継続管理)」といいます。
職場の防災対策がツームストン・セーフティ(墓石型の安全対策)にならないようにしなければいけません。
つまり現実的な対策を行い、後の祭にならないようにしなければいけません。
災害に備えてすべきことは、住民一人ひとり、そして地域で災害に備え地域での災害犠牲者ゼロを目指すことです。
広域災害から身を守るため防災コミュニティー(地域の絆づくり)の推進が必要となります。
絆は人の和、心の和、地域の輪。相手のために何をできるのか思い続けること、人の役に立つこと、そして自分の存在価値を知ることです。
安心安全に慣れて忘災とならないように、減災へ挑戦してください。
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被災地の現状 (尾下義男)
2012-05-07 17:10:44
前略
東日本大震災から一年以上が経った今年5月の連休に岩手、宮城、福島、茨城の被災地に足を運びました。現在なお、どの地域も復興まではほど遠く、疲弊した状態が続いている現状を目の当たりにした時、目頭が熱くなりました。
「絆」という言葉が巷に氾濫していますが、この「絆」という言葉は、マスコミの造語であることが分かりました。被災者の方々にお話を伺うと、マスコミの方々が、「絆」という言葉を強調するようにと言われたそうです。つまり、マスコミ側は報道をしてあげるという「上から目線」の態度をとっているように感じました。あくまでも、「主」は、被災者の方々であり、マスコミを含め被災地に入る私達は、「従」であることを強く肝に銘じて、決して忘れてはならないとことを肌身で実感した次第です。
被災地の復興を心から願うのであるならば、真の「絆」を目指して、国民一人一人が、自分達が出来ことに真摯に向き合って頑張ることではないでしょうか。小職も「減災社会」の構築のために微力ながらお手伝いをさせて頂きます。
今後ともご指導ご鞭撻宜しくお願い致します。
危機管理アドバイザー尾下義男拝 

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減災社会に向けて (危機管理アドバイザー尾下義男)
2014-01-03 06:43:56
今年もよろしくお願い申し上げます。
防災危機管理アドバイザーの尾下と申します。

「災害の危機管理と防災体制の確立」
危機管理の基本は、災害のメカニズムを知り(knowinghazard)、弱いところを知り(knowingvulnerability)、対策を知ること(knowingcountermeasures)です。
防災体制の基本は自助・共助・公助です。しかし、住民は自助・共助・公助は1:2:7 だと思っています。実際は7:2:1 で、認識のギャップと行政任せの住人・個人が、災害対応を困難にしていると言っても過言ではありません。
一般的に、防災とは、災害の被害を未然に(完全に)防ぐための行動・施策・取り組みであり、一方、減災とは、自助・共助を基本に、災害や突発的事故などは完全には防げないという前提に立ち、被害を最小限に止めるため平時から対策に取り組み、一つの対策に頼るのではなく、小さな対策を積み重ね、「BCP(Business Continuity Plan)=事業継続計画」を、家庭に置き換えると、「FCP(Family Continuity Plan)=家族継続計画」積み重ね、訓練して、被害の最小化を図るソフト対策・人づくり重視のまちづくりを行うものです。
最近では、災害対応において「自助/共助/公助」の役割分担への理解の重要性が説かれています。災害は社会全体に影響を及ぼす事象であるために、その影響を受ける個人(企業)/地域/行政のそれぞれの役割を明確にし、お互いに補完し合う必要があります。大規模な災害であればあるほど、「国・行政が何とかしてくれるハズ」と、国民は期待しがちですが、公助にも限界があります。防災対策・災害対応においては、まず自らがその生命や財産を守るという考えが基本となっていると言えます。
かつて日本の地域社会では、困った時にお互いが助け合いの「向こう3軒両隣精神」がありました。しかし、近年「隣は何をする人ぞ」と、言われるように地域住民の付き合いは希薄な状況にあります。しかし、共助の活動を担うのは向こう3軒両隣の住民であり、自助と共助の間を埋める「近助」が重要な役割を果たすと考えられます。昔から「遠くの親戚より近くの他人」、「何かあった場合に頼りになるのはご近所さん」です。それには普段から顔の見えるお付き合いをし、身体が元気なうちは助けられる人から助ける人へ、守られる人から守る人へと立つ位置を替え、必要な時は見返りを求めず、「思いやりの心」と「オモテナシの心」で、地域や隣人を助ける、傍観者にならない心を持つことが大切です。災害時には、自助・共助・公助の3つの連携が円滑になればなるほど、災害対応力を高め、被害を最小限に抑えるとともに、早期の復旧・復興につながるものとなります。 安全・安心の社会の構築は、防災教育(共育)にあります。災害を知り、地域を知り、「災害を正しく恐れ」て、減災に取り組む人づくりの育成が重要です。つまり、「互教互学」の精神で、後世にしっかりと受け継いで行くことが我々に与えられた使命です。私は自戒し日々研鑽を重ねより一層鋭意努めて参ります。ご指導ご鞭撻賜りますようお願い申し上げます。
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