残照日記

晩節を孤芳に生きる。

立ち位置

2011-04-25 20:25:46 | 日記

≪侏儒の言葉≫抄  芥川龍之介
○阿呆はいつも彼以外の人々を悉く阿呆と考えている。(阿呆)
○革命に革命を重ねたとしても、我々人間の生活は「選ばれたる少数」を除きさえすれば、いつも暗澹としている筈である。しかも「選ばれたる少数」とは「阿呆と悪党と」の異名に過ぎない。(人生)
○何ぴとも偶像を破壊することに異存を持っているものはない。同時に又彼自身を偶像にすることに異存を持っているものもない。しかし又泰然と偶像になり了(おお)せることは何ぴとにも出来ることではない。勿論天運を除外例としても。(偶像)
○政治家の我我素人よりも政治上の知識を誇り得るのは紛々たる事実の知識だけである。畢竟某党の某首領はどう言う帽子をかぶっているかと言うのと大差のない知識ばかりである。(政治家)

>今回の国難の途中でリーダーを変えるべきではないということは、確かに一理あるが、やはり菅氏の資質そのものが国民を「最高不幸社会」に導いている。彼は、芥川龍之介氏の「侏儒の言葉」にある阿呆に通じ「いつも彼以外の人人を悉く阿呆と考えている。」性格で、……残念ながら菅氏にはレッドカードを突きつけざるを得ない。彼の辞任が最大の復旧復興対策のキーになる。(Y.Sさん)

∇統一選後半戦が終わった。5月2日には平成23年度第一次補正予算案が成立の見通しで、大震災対応が一段落することになる。ゴールデンウィーク明けから、又候、与野党の“政争”が熾烈を極める。5大新聞を広げて、今回の統一選についての論評を拾い読みしてみた。Y・Sさんと全く異口同音で<菅氏にレッドカードを突きつけ>ているのが産経新聞だ。一面記事が<民主また大敗><「菅降ろし」封印解けた─3つのシナリオ>、政治部長・五嶋清氏による評論は<2つの猶予期間の終わり>。社説は<民意はやはり首相交代>だ。五嶋氏は、2つのモラトリアム(猶予期間)は終わった、とし、その一が菅直人首相、もう一つが菅内閣以上の内閣をつくれない民主党そのものだとした。曰く、<首相交代について、新首相はおそらく震災対応に不慣れだから菅首相の方が円満な対応をとれるし、菅首相を挙国一致体制で支えればいいという意見もある。だが、そんなことができるなら、とっくにそうなっていた。菅首相には挙国一致体制に必要な指導力が決定的に欠けている。だからこそ、今の迷走があるのではないか。>と。

∇「菅降ろし」3つのシナリオとは、第一に民主党の両院議員総会を舞台とした菅首相の党代表解任作戦、第二に内閣不信任案の可決、そして第三が党分裂を回避するための自発的退陣である。第一のシナリオが成立するためには、民主党内で緊急動議の可決に必要な過半数超えが条件だ。但し、強制的拘束力はない。第二が成立するためには野党側が動議を提出し、民主党側から70人以上の造反者が出ることが必要条件だ。第三が成立するためには菅首相が自発的に退陣することだが、<任期は2年半後に来るので、歴史的使命を果たせれば本望だ>と語っている彼が容易に席を譲る気配は現在のところ見えない。さてどうなるやら、という論調である。一方自民党に対しては2面で、<5月倒閣 自民本腰>と題し、財界の後押し、民主党内の「菅降ろし」の勢いを借りて、自民中心の政権作りが出来る可能性はあるが、「政治とカネ」に関連する小沢・鳩山勢との合流に足踏みしている、とも。社説「主張」は、菅首相退陣を説き、完全に自民党寄りの論説となっている。“憂国論”の一つとして耳を傾けたい。

∇尚、7面の「正論」で、東大名誉教授・平川祐弘氏が、<原発後手で無能な政府と東電>等とこてんぱんに貶しながらも、<枝野氏を代表に民主党若返りを>と提案していたことを付け加えておこう。──他の4紙はどうか。<民主党の退潮傾向鮮明─政権運営、より厳しく>(日経)<態勢立て直し迫られる菅政権>(読売「社説」)等、現政権の迷走ぶりについては、産経新聞が指摘するのとほゞ類似の内容を述べているものゝ、過激的な菅首相退陣論や自民党寄りの評論はない。例えば、読売新聞の社説は、菅首相に対し、先ずは官僚を萎縮させず上手く使え、震災対策では会議や対策本部が乱立しているのを整理せよ、政策面では子ども手当て等バラマキ施策を撤回して復旧・復興財源に回せ、野党側に大胆に譲歩して協力を仰げ等を提言している。日経新聞は2面で、<自民、倒閣に向け功勢>としながらも、<統一地方選後半戦では、自民党の党勢回復にも課題を残す結果となっており、「対決姿勢ばかり目立てば政局優先の批判を浴びる」との見方もある。…明確な政権戦略を示さないまま膠着状態が続けば、谷垣氏の責任が問われる可能性もある>と。

∇朝日新聞も<弱い基盤露呈(2面)>と題しこう総括した。<統一地方選で明確になったのは、相次ぐ不戦敗に象徴される民主党の基盤の弱さであり、政権党に対する有権者の支持離れだ。一方自民党は前回勢力をほぼ維持し、政権を狙う立場を確保。橋本徹大阪府知事らが率いる地域政党の勢いも目を引いた>と。しかし菅政権の早期不信任案には淡々と情勢を述べるだけに止まっている。日経同様、自民、公明共に、震災復興や原発対応にメドが立たない中で権力闘争を仕掛けることに世論が非難を浴びせかねないことを躊躇している、と。これらの見方も、現政権を批判するに当り消極的に見えて、時期待ち論として傾聴する価値はある。尚、毎日、東京は<河村流広がらず>(毎日)<世田谷「脱原発」保坂氏(社民系)>等と、寧ろ地域政党や原発推進・維持対決の行方を大きく扱っているのが目立つ。──述べるべき話題はまだ沢山あるが、今日は、統一地方選に関する5大新聞記事の「2大立ち位置」を拾ってみた。若干の補足と八十悟空さんの復興財源問題等は次回以降に述べてみたい。蛇足ながら以下に芥川龍之介「侏儒の言葉」(醜聞)から。

○公衆は醜聞を愛するものである。白蓮事件、有島事件、武者小路事件──公衆は如何にこれらの事件に無上の満足を見出したであろう。ではなぜ公衆は醜聞を──殊に世間に名を知られた他人の醜聞を愛するのであろう?(中略)醜聞さえ起こし得ない俗人たちはあらゆる名士の醜聞の中に彼等の怯懦(意気地なさ)を弁解する好個の武器を見出すのである。同時に又実際には存しない彼等の優越を樹立する、好個の台石を見出すのである。「わたしは白蓮女史ほど美人ではない。しかし白蓮女史よりも貞淑である」「わたしは有島氏ほど才子ではない。しかし有島氏より世間を知っている」「わたしは武者小路氏ほど……」──公衆は如何にこう云った後、豚のように幸福に熟睡したであろう。>(醜聞)【注】白蓮事件は伯爵の娘で女流歌人の柳原白蓮が、最初の夫と離婚後、九州の富豪と再婚し、その夫を捨てて年少の青年のもとに走った事件。有島事件は有島武郎が愛人と軽井沢の別荘で心中した事件。武者小路実篤の場合も離婚・再婚事件。──我がY・S氏は「信」を重んじる真の“憂国の士”である。菅首相の不甲斐なさに、産経新聞と立ち位置を同じくして、首相にレッドカードを突きつけた。だが、幾つかの週刊誌の如く、たゞ面白半分に「菅降ろし」を煽り、弄ぶ論には組したくない。


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