さよなら三角 また来て四角...日本編☆第二章☆

オーストラリアから10年ぶりに帰国。特別支援教育に携わりながら
市民農園・家庭菜園に励んでいます。

実習二日目 病棟デビュー

2013年05月28日 15時46分57秒 | Web log
今日は 閉鎖病棟へデビュー

複数の患者さんと接しました。重度の認知症の人、認知症の初期で自死の危険性が
ある人、せん妄のある人、アルコール中毒、重度のうつ病などなど。

病歴とか、患者さんの癖とかが分からないので、とりあえず患者さんの
話すことは真面目に聞きます。疑わずに聞きます。あれ?と思っても
何らかのサインと思ってとりあえず聞きます。

攻撃的な人もいますが「色んな状態にイライラして私に八つ当たりして
いるんだろう」くらいでとりあえず受け止めます。

でも スタッフは過去の経験やその人の性格をよく知っているので
「○○と言っているけれど、実は△△なのよ。」とスタッフの間で
話しているのを耳にしましたが「本当にそうなのだろうか....」と
思ってしまいます。

認知症初期のおじいさんがいまして、彼はとても攻撃的なので気をつけろと
言われました。

とりあえず、話を聞きましたら スタッフのほとんどは訛りが強く、
声が小さく、何を言っているのか分からない。
でも、あんたの声は良く聞こえる。と言ってくれました。

観察してみるとどうも左側がよく聞こえないようです。

で、話を更に聞いてみると、短期記憶が弱くなっていること、耳が遠くなって
いる自分自身にイライラしているらしいくらいのことが分かってきました。

話の途中、自分が住んでいた家の住所がわからなくなったと言い、「家の住所を調べてきてくれ」
と他のスタッフに話して、番地、ストリート名を確認して、ほっとしているのを見て、
忘れっぽくなっているという自覚症状はあって、それを不安に思っている風な印象を受けました。

調べてみると初期の認知症ということ以外、閉鎖病棟にいる理由がはっきりしなかった
のですが、どうも自死の危険性があるということで通常の医療病棟から転送されてきた
とのこと。

続いて、病棟は退屈で、何も自由がなく、面白くない。家にいたときはこんなことを
していた、あんなことをしていたと言い、家に戻りたいとしきりに訴えてきます。

84歳ですが奥さんが亡くなる前は一緒にあちこち旅行をしていたと言い、
奥さんが死んでからしばらくは一人でバックパックを担いであちこち旅行した
もんだと話してくれました。家ではインターネットも使って、いろいろ調べたりもしたし、
投稿するときのハンドルネームは .... としっかりと話してくれました。

それが本当か、妄想かどうかは私にはあまり興味はありません。

妄想だとしても、本当ならなおさら、たとえ認知症で忘れてしまいやすく
なっているとしても、閉鎖病棟にいても、おじいさんの持つ好奇心や、
家に帰って今までやってきたことを同じようにやりたいという気持ちは、
大切にしないといけないんじゃないかと思うからです。

こんなに知的活動が盛んだからこそ、認知症という診断に生きる希望を
失くしてしまったから自死を口にしたんじゃないのだろうか....

と、私の推測は続きます。

で、そんなに退屈だと文句言うなら、病棟が提供する活動に参加したらいいん
じゃないの?と提案してみました。

が、つまらない、興味がないと言って、参加しません。

他の作業療法士は「参加するだけしてみたらいいのに」「でも無理強いはしないけど」
と言います。わたしも一緒に行くから参加してみようと声をかけました。でも、
拒否するので、他の患者さんを連れて活動に参加してみましたが、それは退屈で、子供
染みていて、しかも個々人に合ったレベルのものじゃなかったりします。

あのおじいさんはとても攻撃的で、スタッフの言うことは聞かないし、かわいくない!
と言う人もいます。確かに毎日毎日愚痴を聞かされたら、そうなるのも無理はない
かもしれません。

でも、攻撃的に聞こえるその言葉の中におじいさんの心が見え隠れすると思うのは、
私だけなんでしょうかねぇ。

もっと深いところに横たわるおじいさんの渦巻いた気持ち....に誰かの手が届く
ことはあるのでしょうか。

もしかしたら他のスタッフは、そういう経験を何度も何度も経験して、それでも
医療スタッフ、あるいは看護師として、結局は限られたことしかできないという
無力感に打ちひしがれて、ただ仕事をこなすだけになってしまったのかも.....
と思う私なのでした。

家族からの苦情もありますし....スタッフができるだけのことをやっても、家族は
「まだ足りない、これもしてくれない、あれもしてくれない」と訴えてきます。

スタッフ、家族、患者....それぞれの嘆きが渦巻いているような場所....

それでも患者さんか投げかけてくれる無垢な笑顔に一筋の光を見るわたしなのでした。

署名

<script src="http://www.shomei.tv/project/blog_parts.php?pid=1655&amp;encoding=euc"></script>