オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

ギリシャはジリ貧

2015-07-02 | 国際

 6月22日、ギリシャのチプラス首相が、債権者側(EU、欧州中央銀行、IMFの「トロイカ」)に対し、消費税(VAT)の中心的な税率を23%に引き上げ、公的年金の給付開始年齢を67歳に引き上げる「緊縮財政策」を提案した。トロイカの要求を受け入れた格好だ。

 しかし、チプラスの譲歩は続かなかった。与党シリザの左翼が多数を占めるギリシャ議会は、チプラスの譲歩案に猛反対した。シリザは1月の選挙で勝つにあたり、消費増税や年金削減といった緊縮策をやらないと公約していた。チプラス政権は緊縮策の許諾について「公約は、電力料金を消費税率を上げないと言ったのであり、電気料の増税は今回の譲歩から外してある。年金支給年齢の引き上げは、年金の削減でない」などと弁解したが、議会は受け入れなかった。チプラスは6月26日、トロイカが求める緊縮策に賛成かどうかをギリシャ国民に問う国民投票を行うとを発表した。可決されれば、消費増税や年金支給年齢引き上げなどが実施され、見返りにトロイカがギリシャに追加融資することに道が開かれる。チプラス政権やギリシャ議会は、国民に、国民投票を否決するよう求めているが、誠意の感じられないチプラスが何をやるか予想できない。ギリシャで行われた世論調査では、賛成票を投じる国民が多いということだ。

 トロイカは、国民投票での緊縮策の否決がギリシャのユーロ離脱につながると脅している。ギリシャ政府と世論は、トロイカへの借金を返さないままユーロ圏内にとどまることを求めている。

 ギリシャが02年にユーロに加盟した後、高利回りを求めて巨額資金がEU各国からギリシャに流入してバブルとなり、米英投機筋がそのバブルを崩壊させてユーロ危機を起こし、米国傘下のIMFが救済支援と称してギリシャを借金漬けにした。ギリシャは6月30日にIMFから借りた資金の返済ができなかった。民間ならデフォルトだが、IMFの場合、「デフォルト」ではなく「滞納国」になる。ギリシャの負債総額は3127億ユーロで、その3分の2は、IMF、EUの基金、ECB、EU加盟諸国といった政府系機関からの融資だ。ギリシャ危機発生後、海外の民間投資家によるギリシャへの債権が急速に減り、その分をIMFなど政府機関が肩代わりしている。ギリシャが金を返さなくて困るのは、IMFやEUであり、民間投資家にほとんど迷惑がかからない。ギリシャ危機は、IMFやEUとギリシャの間の政治問題だ。IMFやECBから借りた金など返す必要はないとギリシャ人が考えているのも一理ある。

重要事項の決定に全会一致が原則のEUが、ギリシャをユーロ圏から追放する決定をするのはまず不可能だ。第一、離脱の手続きすら明記されていない。ギリシャのユーロ離脱は、ありえない。

 しかし、経済格差の激しいEU諸国が貧乏国への支援なしに維持できるはずもなく、これからも支援プログラムが切れるたびにEU危機が再燃し、ギリシャのジリ貧状態が続くことになる。政治的経済的統合を伴わない通貨統合は、ドイツのような先進国にはプラスに働くが、競争力のない国では自国通貨による調整がつかないので、圏外への輸出は低迷する。自立するには離脱してドラクマの暴落を受け入れ、観光立国、農産物の輸出で立て直す以外にないと思うが、そんな大革命を制御できる政治家は皆無なので、ギリシャはこのまま居候生活を続けることになるだろう。

 しかし、同じめちゃくちゃなら、日本の政治家もチプラス首相を見習ってもらいたいものだ。チプラスはありとあらゆる駆け引きを駆使してEUを脅している。離脱という経済的切り札だけでなく、ロシアや中国と接近する姿勢を見せる。同国最大の港湾、ピレウス港では、中国遠洋運輸(COSCO)がコンテナ埠頭の運営権を取得しており、港湾の民営化でも入札に名乗りをあげている。EUからの支援を打ち切られたら、中国やロシアに接近するという露骨な脅しである。
 弱小国が金融大国に楯突くカードは少ない。日本の政治家が、尻尾を振って米国の傘下に入りたがり、戦時下のマスコミ統制を彷彿とさせるような暴言を聞いていると、チプラスは貧乏な国民のために崖っぷちで頑張っているようにも見える。通貨統合で繁栄を極める先進国が弱小な加盟国家を援助するのは当たり前だ。ユーロ安で輸出が伸び、大繁栄を極めているのだから、見返りがあるのは当然だろう。彼らが加盟していなかったら、ユーロ高が進み、現在の繁栄はなかったのだから・・・・・

≪欧州各国民の各国への印象/ステレオ・タイプ≫
       最も勤勉  最も信頼  最も怠惰  最も不信
    英国  ドイツ   ドイツ   ギリシャ    フランス
  フランス  ドイツ   ドイツ   イタリア    ギリシャ
   ドイツ   ドイツ   ドイツ   ギリシャ    ギリシャ
                               イタリア
  イタリア  ドイツ   ドイツ   ルーマニア   イタリア
  スペイン  ドイツ   ドイツ    ギリシャ    イタリア
  ギリシャ  ギリシャ  ギリシャ  イタリア     ドイツ
 ポーランド  ドイツ   ドイツ   ギリシャ     ドイツ
    ──2015年2月3日付、日本経済新聞「経済教室」
―――――――――――――――――――――――――――――
ドイツはやはり「勤勉で信用できる」と思われている。ギリシャは勤勉で信用できる国として自国を上げている。
ギリシャの評価は低く、働かない国民性は近隣諸国も熟知していたはずだ。EUの加盟条件(財政赤字3%以下、政府債務60%以内など厳しいハードル)から落ちこぼれていたギリシャがクリアできたのは、粉飾決算による“裏口入学”だったとささやかれていた。
 南欧諸国は、それまで、自国の破綻財政を立て直すには、10~20%もの高金利を支払わねば借金できなかったのが、ユーロに加盟すれば3~4%の低金利で借金できるようになったのだから、甘い汁に群がる国々に取っては、渡りに船だった。困ったらドンドン借り増し、行き詰まったら踏み倒そうと考えていたかもしれない。
 古代ギリシャを哲学・芸術の発祥地として称え、ペルシャ戦争など周辺との戦いで勝つと敵を次々と奴隷化し、苦悩の労働を全て押し付けてきた。ギリシャとは働かなくてもよい「誇り高き遊び人」たちが建国した産物であり、「働かない伝統」は今も健在だ。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿