オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

今年の流行語大賞

2015-12-03 | 社会

西洋の熟語に「born with a silver spoon in one's mouth(銀のスプーンをくわえて生まれてきた)」というのがある。お金持ちの家に生まれるということで、根っから苦労を知らない人のことだ。

最近韓国では「スプーン階級論」なるものが登場した。親の資産で金、銀、銅スプーンと分け、それにも入らない最下層の場合は「泥(土)スプーン」と呼んでいる。自分の努力より親の財力によって人生が決定づけられてしまうというわけだ。金・銀・銅は、まだ恵まれた階級で、最下層にあたる土スプーンは、親の経済的な援助など望めず、かえって親を養わなければならない世帯の出身者である。

スプ-ン階級論が拡散するにつれて、階級はもっと細かく分けられているようだ。常識を超えた財産を持つ財閥一族などは「ダイヤモンドの匙」といい、2012年の調査資料によると、上位10%の人たちが、なんと国民全体の資産の45%を支配しているという。
 
 平均的な庶民は「鉄の匙」「木の匙」「プラスチックの匙」と細かく分けられていて、さらにその下には、公務員でもなく、大企業勤務でもない人たちが多数を占める「土の匙」が存在する。土でできているため、形を保つのがやっとで、一生食うに困るという絶望的な意味が込められている「土の匙」は、「Hell朝鮮(地獄のような韓国)」とともに、今年の流行語にもなっている。
 この「土の匙」よりもさらに下には、生活保護を受けて暮らしていたり、ホームレスである「糞の匙」と、スプーンすら持てないほど貧乏な「手の匙」がある。
 つまり彼らは「就職や結婚ができないのは、お前らの努力が足りないから」と責め立てる大人に対して、「努力してみたけど、あなたが与えてくれたスプーンのせいでダメでした」と、スプーン階級論を用いて皮肉を言っているのだ。スプーン階級論が広まるにつれ、ネットには「我が家は何匙ですか?」と質問する若者が増えている。資産、家の大きさ、親の職業と年収、携帯の機種まで公開し、自分が何匙なのかを人に査定してもらうのだ。子どもたちの間でも「お前って何匙?」と聞くのがはやっているという。

韓国の流行語に風刺の効いた「土の匙」がノミネ-トされているのに日本の「2015 ユーキャン新語・流行語大賞」は、「トリプルスリー」と「爆買い」だそうだ。この2語が今年を象徴する言葉だとは、どうにも腑に落ちない。

 この結果に、一部では「選考委員が日和ったのでは?」という声が挙がっている。今年の新語・流行語のノミネートが発表された段階から、「安保法制に批判的な言葉ばかりがノミネートされている!」とネトウヨががなり立てていたからだ。トップ10には「アベ政治を許さない」と「SEALDs」が入っており、このような政治絡みの言葉を排除した結果、インパクトのない言葉になってしまった、というわけだ。

 韓国民のコメントが面白い。日本より韓国はひどい政治状況らしい。

「アベ政治を許さないと発言した人が、刑務所に入っていないことがすごい。日本は素晴らしい国だ。言論の自由、デモの自由がある」
「日本人の立場からすると、安倍首相はよくやっているのでは?少なくとも安倍首相は国のために一生懸命だ。朴大統領は国や国民のことは眼中になく、自分の利益のために働いている」
「安倍首相と朴大統領を交換する?韓国国民に損はない!」
「韓国の流行語大賞も『クネ政府を許さない』にしよう!」
「韓国の流行語は何だろう?『私がすればロマンス、あなたがすれば不倫』かな?」


「産経ニュース」は、選考委員長の鳥越俊太郎氏が安保法制反対派の抗議運動「『アベ政治を許さない!』国民の一斉行動デー」の呼びかけ人であることを挙げて〈“身内びいき”“自画自賛”と受け止められかねない〉と批判していた。しかし、新語・流行語大賞は、新設当時から政治に批判的な言葉を選んできた実績がある。そして、やはり今年を象徴する言葉として選ばれるべきは「戦争法案」だったはずだ。

 昨年は、日本エレキテル連合の「ダメよ~ダメダメ」と、「集団的自衛権」の2語が年間大賞に選ばれた。言葉を繋げると“集団的自衛権、ダメよ~ダメダメ”になる。これはいけていた!
 
 今年は、怒りの矛先は審査員に向けられた。新語・流行語は、〈読者審査員のアンケートを参考に、『現代用語の基礎知識』編集部がノミネート語を選出。選考委員会によってトップテン、年間大賞語が選ばれる〉が、その選考委員に難癖をつけはじめたのだ。現在の選考委員は、政治学者の姜尚中、クリエイターの箭内道彦、俳人の俵万智、漫画家のやくみつる、ジャーナリストの鳥越俊太郎、女優の室井滋、『現代用語の基礎知識』の清水均編集長の7名だが、批判者にとってはこの面子が「サヨクだらけ」「諸悪の根源」なのだそうだ。

 流行語候補に、世相を反映させようとすれば時の政治に対して風刺・批判的な言葉が入るのは当然のことである。今年の候補を見てみると、「切れ目のない対応」「存立危機事態」「駆けつけ警護」の3語は、安倍政権を批判した用語でも何でもない。安保法の根幹にかかわる“曖昧な”言葉が今年生まれた新語として取り上げられるのは当然だろう。また、「国民の理解が深まっていない」「レッテル貼り」「早く質問しろよ」は、すべて安倍首相の発言で、これらの言葉を駆使して世論を無視したという、2015年の政治状況を象徴する言葉だ。そして、この夏、大規模なデモが市民のあいだから起こったことも同様に今年の大きなトピックである。「I am not ABE」「アベ政治を許さない」「戦争法案」 「自民党、感じ悪いよね」「シールズ(SEALDs)」「とりま、廃案」(とりあえず、まあ)が入るのもけっして不自然ではない。
 むしろ、こうした言葉が候補に選ばれ、「政治色が強い」「批判に傾きすぎ」との声ばかりが上がることが、由々しき問題だ。“公の場での政治批判はNG”という自粛ム-ドが蔓延している。


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