オータムリーフの部屋

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新自由主義の構造改革は国民を不幸にする

2016-11-27 | 国際

「雇用拡大」を公約に掲げて当選したトランプ次期米大統領が、早々に国内製造業へ圧力を強めている。隣国メキシコでの生産を検討する自動車大手フォード・モーターなどを標的に、ツイッターを介して国内生産を維持するよう迫り、企業は対応に追われる。米国民が家族と過ごす24日の感謝祭の祝日。トランプ氏の唯一のツイートは、空調機器大手に対する「脅し」ともとれる発言だった。世界有数の空調機器メーカーで日本に東芝との合弁会社も持つキヤリアは2月、2019年をめどにインディアナ州の工場を閉鎖し、生産をメキシコに移すと発表した。従業員への移転通告の模様が動画サイトで流れ、約1400人の解雇が米国内で話題になった。トランプ氏は選挙戦中の4月に「大統領になれば計画を100%撤回させる」と述べ、労働者の不満の象徴として同社の名前を使い続けた。同様な攻撃を受けるのがフォードだ。トランプ氏は17日、ツイッターに「(会長の)ビル・フォード氏と電話で話した。ケンタッキー州のリンカーン工場はメキシコには行かない」と書き込み、メキシコ移転の翻意を勝ち取ったと誇示した。 ケンタッキー工場のメキシコ移転計画はもともとなかった。移るのはミシガン州の小型車生産だが、別の車を造るため国内の雇用は減らない。フォードのメキシコへの生産移管を巡る議論は2015年末の労使の賃金交渉にさかのぼる。リンカーンなど複数車種の生産をメキシコに移す案が議論された。組合はメキシコ生産を阻止しない代わりに、10年ぶりの賃上げと19年までの米国工場の維持を勝ち取った。ミシガンからの小型車生産移管はこの議論を踏まえて決まったものだ。 フォードは少なくとも19年までは米国工場を閉鎖せず、米国内の雇用を守るとみられる。事実を知ってか知らずか、トランプ氏は代表的な米企業をたたいて労働者層の支持を取り込んだ。

 「メキシコからの輸入関税を35%にする」。トランプ氏は企業を悪役に仕立て、NAFTA見直しなどの保護主義を正当化してきた。だが、キヤリアの場合、インディアナ州で時給20ドル(約2300円)の人件費がメキシコでは同3ドルだ。米議会の資料によると、メキシコへの直接投資の累計額はNAFTAが発効した1994年に170億ドルだったが、約20年後の15年は928億ドルと5.5倍に膨らんだ。自動車や機械の関連工業の集積が進んだ。

 問題は企業がどこまでトランプ氏の意向をくむかだ。キヤリアは「次期政権とは議論を続けている」との声明をツイートした。同社が移転を取りやめれば「禁じ手」だった個別企業への政治介入に前例ができ、影響は米製造業全体に波及する。

 米企業も防戦一辺倒ではない。「リンカーン工場はメキシコにはいかない」というトランプ氏のツイートに対し、フォードは「そもそも計画がない」とは反論せず「国内生産を続けられるよう、米国の競争力を高める取り組みに期待している」とコメントした。

 トランプ氏は現在35%の米連邦法人税15%への引き下げや、10年間で1兆ドルという戦後最大のインフラ投資を公約に掲げた。米農機・建機大手ディアのサミュエル・アレン最高経営責任者(CEO)は保護主義をけん制しつつ「政府が建機を買ってくれるならありがたい」と財政出動に期待を示した。

  「NAFTAからの脱退または再交渉」を公約に掲げたトランプ氏も、当選後はNAFTAに言及していない。「米自動車ビッグ3が反対する政策はとりにくい」と読む業界関係者は多い。(日本経済新聞)

 新自由主義が世界経済を成長路線に戻す政策として、先進国で採用されている。自由化、民営化、規制緩和、小さな政府化、究極的にはモノ、ヒト、カネの国境を越えた移動の自由を最大化していくという。誰のために?・・・グローバル投資家やグローバル企業のために。

労働者の実質賃金は上がらなくなり、製造業から衰退していった。そして、新自由主義の採用で、市場の硬直化・寡占化が進んでいく。深刻なのは新自由主義の構造改革が目先の株主利益を最大化させるために腐心するから、研究開発投資や人材投資、設備投資などが削られていくことだ。「新自由主義は経済を成長させる!」という命題そのものが怪しく、むしろ寡占化による独占が進み、成長率を低下させてきたのではないか。

グローバリズムによって、米国はもちろん、EUにおいても、労働分配率は低下し、実質賃金が下落、反対に金融資産を運用するグローバル投資家たちの投資収益が増え、「1%」 対 「99%」の超格差世界が誕生したというわけだ。

この衰退のシステム、新自由主義に基づく構造改革は人々を幸せにはしない。特に先進国の国民を新興国並みの貧困層に引きずり込むシステムだと言ってもいい。今、注目の人類学者エマニュエル・トッドが、トランプ現象は教育格差によって這い上がれない白人労働者の反乱というとらえ方をしていたが、どうも彼の言うことはピンと来ない。誰もが大学に行けるようになり、エリ-トになる人材が増えても企業はそんな人材を多くは必要としないからだ。企業が必要としているのは機械より安い労働力と少数のエリ-トだ。

トッドはEU統合に反対して「通貨の統合によって国民や国をなくそうとしている。言い換えれば、民主主義の時代から受け継いだ帰属意識は、砕け散った。共同的信念の崩壊、とりわけ国民概念の崩壊は個人の解放や開花をもたらさず、逆に、無力感で個人が砕けてしまう」と言う。

「民主主義の危機は、(グローバル化した)経済の帰結ではない。根源には高等教育の広がりがあります。民主主義の前提は、誰もが読み書きができるようになることでした。そして高等教育を受けるのはごく少数。この人たちが社会でエリートとして生きていくには人々と話ができなければならなかった。ところが今では、高等教育を受ける人が急増し、受けていない人たちとのつながりなしで存在できるようになりました」

 「高等教育を受けた人たちが階層を形成するまでになったため、受けていない人たちの不平等感が高まり、社会に緊張が生じているのです。二つの出口が考えられます。高等教育を受けても、グローバル化で苦しむ人は少なくない。ならば、高等教育を受けていない同胞とつながっているのだという理解にたどり着くことです。そうすれば、民主主義は地に足のついたものになる。でなければ、グローバル化どころか無秩序への回帰です」

 エリ-ト層の心の持ちようで世界が変わるなら、こんな無縁社会にはならなかったはずだ。見方がナイ-ブ過ぎる。

家族の関係性は文化や伝統ではなく、その家族の資産の状況によって形成される。資産家は財産を守るために子供をつくり、脱落者が出ないように支え合い、結束する。中途半端な小金持ちや貧乏人は助け合う余裕がないから、親族とは疎遠にする。核家族は農業の低迷と工業化で若者たちが都会に出て来たからだ。親まで呼び寄せる余裕はないし、親たちも迷惑をかけないように地元にとどまる。貧乏人の家族制度なんて経済構造で簡単に変わるものだ。日本会議よ。国のため家族のために命を投げ出す国民を増やしたいのなら、まずは国民の生活を豊かにし、守るものを築かせることですよ。困窮させ、守る家族も作れなくて国を守る気概が生まれるはずもない。

トランプの強引な手法が頼もしく思える今日この頃だ。


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