マインドフルネスは、自分の身体や気持ち(気分)の状態に気づく力を育む「こころのエクササイズ」で、欧米では多くの実証的研究報告があり、ストレス対処法の1つとして医療・教育・ビジネスの現場で実践されている。マインドフルネスを実施すると、ストレスな場面においても否定的な感情や物事にとらわれ飲み込まれることなく、いつでも自分を取り戻すことができるようになるという。練習を積み重ねていくことが大切で、ストレスを自分の力で対処できるようになり、自分らしい人生をおくることが可能になる。
呼吸のマインドフルネス(ドクター・ポック)
(1)手を前で合わせて合掌のポーズをとります。
(2)鼻からゆっくり4秒程、息を吸い込みながら、合掌したまま手を上に押し上げていきます。
(3)下腹部に力を込めて、両手は、上げたままで7秒程息を止めます。吸い込んだ息を全身に放散させる感じをイメージしましょう。
(4)肺に残っている息を全部吐き切るようなイメージで、両手を広げ、8秒程かけてゆっくり下ろしながら、息を吐きます。
(5)(1)~(4)を2~4分程、毎日繰り返します。
その他には、お手玉のマインドフルネス、飲み物のマインドフルネス、歩行のマインドフルネス、発声のマインドフルネスなどがある。
マインドフルネスはもともと仏教の瞑想のテクニックと言える。要は、「今ここ」の体と心に意図的に意識を向けて集中し、受容すればいい。瞑想やヨガなどを通じて、心を穏やかにしたり、発想力を高める手法で、禅の考え方をベースにしているが、宗教色は一切なく、科学的手法として脳科学や心理学の研究者からも高く評価されている。
Googleが社内でマインドフルネスを使ったトレーニングプログラムを採用したところ、ものすごい人気となった。
マインドフルネスの領域で有名な米クレアモント大学院大学ドラッカースクール准教授のJeremy Hunter氏の話が興味深い。
禅は侍の宗教。侍が死と直面する中で、その恐怖に人生を牛耳られることなく、今この瞬間を大切に生きるための心の訓練の仕方を説いている。今、企業の経営者に対して、どうすれば不安や恐怖、怒りに対処すべきかということを教えている。
人生には2つの道がある。1つは、「守りと生存」。人生の荒波にできるだけもまれたくない。しっかりと人生の計画を立て、その設計図に従って、生きる。だけど、それが人生のすべてじゃない。人生のもう1つの道は「成長、拡大、創造」だ。われわれは生活を守ることばかりに気をとられて、自分の人生を思い通りに生きることを忘れがちだ。どれだけ裕福になっても、守りと生存だけを追い続けていれば、心は決して豊かにはならない。
私の友人の一人は、物質的に豊かでも精神的に貧しい自分自身の状況がとことん嫌になった。そこで、理想の自分の姿を想像するという訓練を始めてはどうだろう、と提案した。自分の理想の姿と言っても、社会的地位や貯金の額を想像するのではない。理想の自分は、毎日どんな風に感じ、どんな風に生きているのかを想像するという訓練だ。その友人は毎日が愛にあふれ、仕事が楽しく、社会に役立っている自分の姿を想像することにしたという。それから仕事で判断に困ることがあったとき、彼は「未来の理想の自分ならどうするだろう」と考えるようにした。未来の理想の自分にいろいろと質問してみた。すると不思議なことに未来の自分は的確な答えを返してくれた。常に正しい答えを持っていたという。その友人はHunter氏に「理想の自分になるには20年はかかるかと思っていたのに、訓練を始めてから6年後に理想の自分になっていたよ」と語ったという。
理想の自分ってなんだろう。金持ちになるとか、有名になるとかではなく、理想の心の状態ってなんだろう。愛されることか、わくわくすることか、楽しいことか、満足することか。そこをしっかりと考えることが大事。これは通常の人生設計とは対照的だ。いい大学を出て、いい業界のいい会社に入り、結婚をして、海外に赴任し、定年を迎えて豊かな老後を迎える。人生をこんなふうに設計する人が多い。こうした設計は、恐れから自分を守るために作ったもの。この人生設計通りに生きていけば、本当の自分が何なのかを知らないまま生きていくことになる。しかしそのことに気づいて、自分の心を開けば、人生も大きく開けてくる。ただ安全に生きるための「生存」の人生を選ぶのか。少々波風を受けてもいいから「成長」の人生を歩むのか。
何も考えないで生きていると、「生存」、「守り」のほうを自然に選ぶようにできている。生存本能のスイッチが入ると、視野が狭まる。想像力がなくなる。人とつながれなくなる。ただ生きているだけの人生。人生の醍醐味を味わえない人生になる。「放っておくと勝手に生存本能のスイッチが入るので、意識的に成長スイッチに切り替えなければならない」とHunter氏は言う。
自分で自分を訓練する方法を作成した。それは、今自分の人生で何がうまくいってるのかを見つけるという方法だった。毎日、自分の人生で存在自体がありがたいものを10個見つけてノートに書いていく、という作業だ。既にノートに書いたものを、再度書いてはいけないというルールだ。
最初は、家があること、iPhoneを持ってること、とか分かりやすいものを見つけていたが、やがて新しく見つけるのが大変になってきた。なので、別のところに意識を向けなければならなくなる。それで太陽の光や、水、などにも意識を向け始めた。これは「今ここに意識を向ける」というマインドフルネスの手法の1つだが、Hunter氏はこの作業を授業の中で生徒たちにさせているという。
ある生徒は、ベランダにたまたまやってきた蜘蛛をしげしげと見て、蜘蛛は形にしろ動き方にしろなんて興味深い存在なんだろうと思ったのだという。以前なら蜘蛛などに意識を向けたこともなかった。自分の人生にとって、重要じゃないものには、意識が向かないようになっているからだ。青い空、白い雲、風に揺れる木々、息を飲むように美しい花々。意識さえ向ければ、身の周りは自然の驚くべき美しさにあふれている。この作業をすることで、これまで「人生でうまく行かないこと」に集中していた意識が、「人生でうまくいってること、ありがたいこと、すばらしいこと」に向き始める。この作業で「悪い思考に牛耳られた自分」から一歩外に出ることができるのだと言う。
「先の見えない時期がつらい。すごく心地悪い。すごく不安」。成長を選んだ多くの人がこの時期に苦しみ、あえぐ。「でもそういうもんなんだ。みんなそうなんだ。次の自分をすぐに見つけられなくて、あえぎ苦しむもんなんだ」。そんなときに「生存・守り」の道が目の前にぶらさがって見えてくる。そこで安易にその道を選んでしまえば、もとの自分に戻るだけ。苦しくても、次のステージを目指したものだけが、次の成長した自分にたどりつけるのだという。
Hunter氏のスピーチは、最後に若者に向けた次のようなメッセージを送っている。
「18歳になった私の息子が人生をどう生きるべきか聞いてきた。私の答えはこうだ。世界は壊れようとしている。環境は破壊され異常気象がさらに悪化し、政府はあまりうまく機能しておらず、経済は破綻しそうだ。新しい仕組みを作らないといけない。古いやり方が機能しないのは、だれの目にも明らか。しかし新しい仕組みを作ることは非常に怖い」。
「君たちの世代の仕事は、この新しい仕組みを作り出すことだ。いままでのような『普通の人生』を送れると思わないほうがいい。なぜならわれわれは『普通の世界』にもはや住んでいないのだから」。
「米国の競合は、中国やインドからくるのではない。われわれの競合はロボットになっていく。あと数年から10年もすれば、人工知能が知識階級の仕事を奪っていく。これまでは技術がブルーカラー労働者の仕事を奪ったが、これからは君たちのような知識階級の仕事を奪っていくことになる」。
「なのでロボットにできないことをしていかなければならない。それは、新しいものを創造し、イノベーションを起こし、問題を解決することだ。そのためには、多くの人が見逃すであろう目の前の世界を注意深く見なければならない。」。今ここに意識を向ける。マインドフルネスの真髄だ。
米国のおよそ50の医学会が指摘した、100件に上る“意味のない医療”を紹介する本が売れている。
「受けたくない医療100」。癌が24件、癌以外の疾患が76件。日本でも広く行われている医療もリストアップされている事に驚く・・・・
「肺癌のCT検査は、ほとんど無意味である」(米国胸部医師学会、米国胸部学会)
「大腸の内視鏡検査は10年に1度で十分である」(米国消化器病学会)
「6週間以内の腰痛には画像診断をしても無駄である」(米国家庭医学会)
「リウマチの関節炎でMRI検査をするのは無駄である」(米国リウマチ学会)
「無用な胸部エックス線検査はしない」
「重症ではない頭痛や急性副鼻腔炎に画像検査はいらない」
「PETガン検診やCT検診は控えよ」
健康な人で癌がみつかる可能性が極端に低い。被爆の問題もあり、検診でみんなが受けるべき検査ではない。
「軽度の頭部外傷でCTを撮るな」
CT検査が必要なときとは、例えば、単なる頭痛や頭の外傷にとどまらず、麻痺や言語障害が発生しているときである。
絶叫して泣いている子どもなどは正常であり、CT検査は必要ない。
東京電力の発表を見ると、2014年に福島原発で作業をされた人の被曝量がおおよそ1~10ミリシーベルトの水準となっていた。
「外部被曝線量の最大値は14.99ミリシーベルト。内部被ばく線量で有意な値は確認されていない」と報告している。
10ミリシーベルトという水準は、わずか1回のCT検査で受ける被曝量と同等である。
原発の作業員にとって、これ以上作業ができない水準である緊急被曝限度量が100ミリシーベルトとなっている。
CT検査で受ける水準はその10分の1程度の水準となる。
海外ではCT検査の増加とともにガンが増えるという事実が明確になってきている。
英国とオーストラリアの研究で、脳腫瘍や白血病などガンのリスクが明確に高まるという発表がでている。
「精神疾患ではない若年者には、『まず薬』で対処してはいけない」(米国精神医学会)
精神病でない子供にいきなり抗精神病薬は禁物。
「4歳以下の子供の風邪に薬を使ってはいけない」(米国小児科学会)
「小児の気管支炎に気管支拡張薬は使わない」
「前立腺ガンの検診のためのPSA検査は非効率」
欧州の研究結果より計算すると、1人の前立腺癌の死亡を防ぐためには、1055人を11年間検査し続ける必要がある。
37人の前立腺癌を発見できて、1人の前立腺癌死を防ぐことができる。
「爪水虫で飲み薬はほとんど無駄」
爪水虫の半分程度では実際に真菌(カビ)が存在していない。日本では真菌の存在を確認せず、内服治療をしているケースが多い。
爪水虫の飲み薬による治療をすると、完了までに薬剤費だけでおよそ5万円かかる。
爪水虫の治療のための抗真菌薬は肝臓の機能を悪くする場合があるとも分かっている。
「風邪に抗菌薬は使わない」
「ピルをもらうのに膣内診は不要」
ピルを処方する際に、検査が必要だという理屈はある。
ピルは女性ホルモンをコントロールして妊娠させないことから乳ガンや子宮頸ガンなどの病気を増やす可能性がある。
血液が固まりやすくなるうえに、性行動を活発にして、性感染症を増やすというリスクも指摘されている。
乳ガン患者はピルを使うべきではないが、ピルを処方する前の乳ガン、子宮頸ガン検査の必要性は薄い。
「胃ろうは認知症では意味なし」
無理に液体や栄養を流し込むことで体に負荷をかけ、合併症を引き起こす。
本人の苦痛緩和や生活の質の改善につながる証拠がない。
「70歳以上の高脂血症に対してコレステロールを下げる薬は不要」
「65歳以上の人に糖尿病投薬治療を行うのは避けるべし(65歳以上は今よりも大幅に緩い基準値で治療を行うべし)」
「65歳以上は子宮頸がん検診は不要(30~65歳の方も3年に1回以上は不要)」
「余命10年未満の人には全てのがん検診は不要」
例えば大腸がんは進行が遅いタイプのがんである。
そのため余命10年未満の高齢者にとっては、大腸内視鏡検査を行って早期発見したとしても、寿命にはほとんど影響がない。
大腸内視鏡検査、大腸ポリープの切除で発生した穿孔による合併症が発生している。
放置しても5年は命に関わることはない大腸ポリープを治療するために、余命が10年未満の人に検診を行うことは、リスクの方が大きい。
前立腺ガンも進行が遅い。一切治療に入らずに、定期的な検査でガンが拡大しないかどうかを慎重に見ていくだけで良い場合もある。
日本語ではPSA監視療法と呼ばれている。無治療も選択肢になり得る。
「マンモグラフィーの効果は、利益よりも不利益が大きい」
ガンを見落とす場合があることに加えて、逆に間違って「ガンかもしれない」と指摘されて、意味のない精密検査や治療に進む人も少なくない。
「眼科疾患の症状がないのに安易に画像診断をしない。」
「眼底や眼圧などの毎年の眼科健診は子供には不要。」
「度数の弱い読書用の眼鏡は子供には不要。」
「ピンクアイに抗菌薬は禁物。」
ウイルス性の流行性角結膜炎に抗菌薬は不要という。強い炎症を抑えるのにステロイドを処方すれば、一般細菌に対する抵抗力も下がるので、しばしば抗菌薬はステロイドと併用される。
細菌性結膜炎かどうかの細菌培養には1週間かかるから、大抵は菌があってもなくても1週間後にはことが終わっている。理屈としては、細菌培養⇒抗菌薬投与ですが、実際にはそれでは間に合わない。
「骨そしょう症でのDEXA法の検査は10年に1回」
「変形性膝関節症にグルコサミンやコンドロイチンは効果なし」
「不眠症治療の最初の薬剤として抗精神病薬は使うべからず」
2011年ころから始まったのが、「Choosing Wisely」という活動で、診断、治療、予防の多数の選択肢の中から賢く選んでいこうというものだ。 最初は小さな運動だったが、参加学会が少しずつ増え、全米の医師の8割を包含するまでになった。
今、国は都道府県や健康保険組合に対して、医療費の削減目標を設けさせようとしている。後期高齢者医療制度の医療費総額を圧縮しようと考えているのは見え見えだ。
保険料や負担額を上げる前に、まず無駄な医療費を削減することが先だろう。どんな医療が無駄なのか、患者が判断するのは難しい。
そうした今、米国で起こっている運動は日本の医療費削減の指針になるかもしれない。無駄なところにカネがつぎ込まれて、必要な医療も受けられないという状況はなんとしても避けなければならない。
高齢者の医療は無駄・・・と公言する人も少なくない今、感情的にならず、無駄な医療の実際を知り、医療費の削減を考えなければならない。
今年の4月、日本人間ドック学会が、血圧やコレステロールの新健康基準を発表した。高血圧は従来、いわゆる上の血圧は140mmHg以上、下の血圧90mmHg以上という基準で判断されていた。ところが、日本人間ドック学会は、健康な人のデータを1万5000人分に基づいて、上の血圧は147mmHgまで、下の血圧は94mmHgまでは健康である可能性があると報告した。高血圧は3人に1人が罹患していると言われる。 まずは糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病から見直していくべきだろう。
アリゾナ州立大学の研究チームと、ロルフ・ハルデン氏らは、エビや鮭、鱒、ティラピア、キャットフィッシュなど、全米で消費されている27種の海産物を調査した。
その結果、野生のエビや養殖のティラピア、鱒から、抗生物質のオキシテトラサイクリンが、養殖の鮭から4-エピオキシテトラサイクリン、オルメトプリムなどが検出された。
さらに抗生物質は含まない魚として店頭で販売されていた鮭からも、バージニアマイシンが見つかった。
薬は養殖の魚を病気から守ってくれる。しかし病原体は、やがて抗生物質に対する免疫を持つようになり、従来の薬が全く効かない新種に変化してしまう。
これまでも人が薬を開発するたびに、病原体は突然変異を起こして進化し、その未知の細菌を殺すため人間も新しい薬を作る、ということを繰り返してきた。
このような、病原体と薬との軍拡競争はエスカレートしており、人が病院や食物から抗生物質を大量に摂取し続けると、複数の薬でも殺せない強力なものが生まれる恐れがある。
アメリカの感染病学界は、将来、抗生物質が効かないバクテリアが出現すると、全米で約200万人が感染し、2万3000人が死亡する可能性を指摘している。
「このような脅威は、現在の畜産・養殖業界における抗生物質の使用法を改正することなしには、避けられないだろう」
なお、家畜への抗生物質の使用量は、日本の場合、人用の約2.5倍にもなっている。(農林水産省2001年データによる)
ホルモン剤(成長ホルモン、女性ホルモン)が認められている米国では、各種のホルモン剤を使い分けて、牛の早期育成、肉質向上、乳の出を良くするために投与されている。雄牛は筋肉が硬く、睾丸からのにおいもついて肉牛に向かない。それで肉牛にするために去勢する。さらに女性ホルモンを耳に埋め込むと、お尻もまるくなり脂肪がついて体重がグンと増える。去勢しただけで1日の体重増加率が1100gから1300gになり、ホルモン剤で1500gにもなる。アメリカ産の牛肉には、エストロゲンが国産牛肉と比較して、約600倍残留している。
日本はどうかというと、米国に追従する国だから、国内産の畜産物は欧州同様ホルモン剤の使用は禁止されているものの、米国産畜産物は輸入を認めている。
コーネル大学やイリノイ大学、インディアナ大学などによる研究では、様々な産地の養殖サーモンと天然サーモンの毒性レベル(PCBなどのダイオキシンや塩素系殺虫剤など)を測定した。その結果、養殖サーモンの汚染物質の量は10倍程度と高く、研究者たちは「消費者はスコットランドやノルウェー、カナダ東岸産の養殖サーモンを食べる機会は年3回(3食)以下に抑えるべきでしょう。メイン州、ワシントン州及びカナダ西岸の養殖サーモンは年に3~6回まで、チリ産の養殖サーモンは年6回程度までを上限とすべきです。一方、天然のシロザケ(日本で一般に「サケ」と呼ばれる種)は週1回食べても安全と言え、ベニザケやギンザケは月2回程度、キングサーモン(マスノスケ)は月1回弱までなら安全です」とアドバイスしているという。
「アラスカサーモン」として売られているのはすべて天然。アラスカではサーモンの養殖は禁止されている。
メーカーは、消費者心理を巧みに操り、「健康に悪いものが入っていない」「健康に良いものが入っている」のどちらかを、ことさら強調して消費者にアピールする。
プリン体を摂りすぎると高尿酸血症になり、痛風を引き起こす可能性がある。「ビールは痛風の危険度が高い」という指摘があるので、プリン体がゼロであることを、ことさら売り文句にしている。
しかし、酒に含まれるプリン体は一般食品に比べれば極めて少ない。多いと言われるビールで見てみると、サッポロ・ヱビスビールが約11mg、サントリー・プレミアムモルツが約9.5mg、キリン・一番搾りが約8.8mg、アサヒスーパードライが約5~6mg(いずれも100mlあたり)である。
一方、食品に含まれるプリン体は、鶏モモ肉が122.9mg、牛モモ肉が110.8mg、豚ヒレ肉が119.7mg、カツオが211.4mg、マグロが157.4mg、マイワシが210.4g、スルメイカが186.8mg、豆腐が20.2mg~31.1mg、枝豆が47.9mgである(いずれも100gあたり)。
酒のつまみで、モモの焼き鳥1本100g(プリン体・約123mg)を食べれば、キリン一番搾りの350ml缶ビール4本分(1400ml)のプリン体(約123mg)を摂取したことになる。カツオの刺身100gのプリン体は、アサヒスーパードライ350ml缶10本分(6mg×35=210mg)に匹敵する。
プリン体を控えたければ、ビールよりつまみだ。焼き鳥を1本(100g)減らすだけで123mg、カツオの刺身をマグロに変えるだけで約60mgのプリン体を減らすことができる。
その他の肉類では、牛レバー219.8mg、豚レバー284.8mg、鶏レバー312.2mgと、レバーには非常に多く含まれている。牛肉では、肩ロース90.2mg、タン90.4mg、ハツ185.0mg、ミノ83.9mgと、精肉や内臓にも多く含まれている。プリン体を気にしていたら、肉も魚もすべて食べられなくなる。
プリン体ゼロの発泡酒や新ジャンルの酒が雨後の竹の子のように出てきたのは、ビールメーカーが糖質ゼロの商品で味をしめたからだ。何のことかよくわかっていないのに、何でもかんでも「0(ゼロ)」や「ハーフ」に飛びつく消費者をターゲットにしている。そうした消費者が糖質を気にするのは、カロリーを抑えたいからだろう。しかし、酒にそもそも含まれる糖質はごくわずかでしかない。糖質が少なくても、全体のカロリーが高ければ意味がない。酒類のカロリーは、糖質が多いか少ないかよりも、アルコール分(度数)が高いか低いかによって決まる。
アルコールは、1g当たり7kcalに相当する。100mlはほぼ100gなので、アルコール分5%であれば、100mlあたり35kcal(700kcal×0.05)程度になる。キリン・ZERO(ゼロ)は、糖質がゼロでエネルギーも100mlあたり19キロカロリーと低い。一見、糖質もゼロでカロリーも低くて良い酒のように思えるが、アルコール分は3%である。
酒の糖質は、普通の清酒やビール、発泡酒で、100gあたり3~4gで、ポテトチップスの10分の1以下である。糖質が含まれていない酒を飲んだからといって、酒のつまみを余分に食べれば何の意味もない。「糖質が少ない酒を飲んでいるから安心だ」といって、つまみをたくさん食べれば、かえって逆効果である。
焼酎やウイスキー、ブランデーは糖質ゼロの酒だ。プリン体は、100mlあたり焼酎は0.03mg、ウイスキーは0.12mg、ブランデーは0.38mg、日本酒は1.21mg、ワインは0.39mgである。糖質ゼロの酒を飲みたいのであれば、焼酎やウイスキー、ブランデーを水割りやオンザロックで飲めば、糖質を摂取しなくて済む。焼酎やウイスキーは、プリン体も0に近い。しかし、焼酎やウイスキー、ブランデーは、糖質は0だがアルコール度数が高いのでカロリーは高い。糖質が含まれている日本酒も、アルコール度数が高いのでカロリーは高い(プリン体の数値は、2007年五訂食品成分表・女子栄養大学出版より)。
「でも、同じ量のつまみを食べるなら、やっぱりビールよりプリン体ゼロの発泡酒の方がいいじゃないか。糖質が含まれているものよりゼロの方がいいじゃないか」と思われるかもしれない。しかし、ここにも落とし穴がある。
糖質やプリン体は、アルコール飲料も含め、食品の旨み成分である。ビールは、ビール本来の味を保つために原材料の使用基準を厳密に定めている。添加物の甘味料は使えない。糖質を減らせば味が変わる。その味を添加物で補うことができないので、糖質をカットした商品がなかなか出てこないのだ。
そこで、糖質を下げるために、本来酒には使用しない添加物などが使われていることがある。発泡酒やその他の発泡性酒類(スピリッツ等)は、ビールと違って、すべての添加物が使用できる。典型的なのが、スピリッツやリキュールである。
糖質とプリン体、世界初2つのゼロが売り文句の発泡酒、サッポロ・極ゼロは、発泡酒の原材料である麦芽、ホップ、大麦の他に、苦味料、カラメル色素、スピリッツ、水溶性食物繊維、エンドウたんぱく抽出物、香料、酸味料、安定剤(アルギン酸エステル)、甘味料(アセスルファムK)が使われている。
一方、同じサッポロの発泡酒で北海道生搾りは、100gあたり糖質が3.2g、プリン体が約3.4mg含まれているが、原材料は、麦芽とホップ、大麦、糖類だけである。つまり、2つ(糖質とプリン体)をゼロにしようとすれば、代わりに酒には似合わない添加物や原材料が目白押しになるのである。
たとえカロリーがゼロであっても、人工甘味料は肥満や糖尿病の原因になる恐れがある。
カラメル色素は、コーラなどに使われる着色料だが、発がん性物質が含まれている可能性が高い添加物だ。苦味料以降はすべて添加物だが、酒に9種類もの添加物が使われている。一部の発泡酒に使われている加工デンプンも、発がん性物質が含まれている可能性がある添加物である。化学調味料の調味料(アミノ酸)や加工デンプンは、いずれも加工食品によく使われる添加物である。原材料だけ見ていると、酒類というより加工食品のようである。
糖質を減らすもう一つの方法が「酵母エキス」を使うことだ。酵母エキスは、酵母といっても酒を醸造(発酵)するときに使うわけではない。酒になった後に、味付けとして使うものである。添加物ではなく食品に分類されるが、調味料である。
調味料を使わなければならないのは、やはり「糖質を減らすと味が落ちる」という証拠であろう。酒本来の味でない添加物や調味料で補わないと売り物にならないということだ。メーカーは「おいしい糖質オフ」、「本当にうまい糖質ゼロ」と味の良さを強調するが、それが添加物や調味料の味だとすると、いかにも情けない。(消費者問題研究所代表・垣田達哉)
現在は、国から「トクホ」の認定を受けなければ、「強い骨をつくる」といった効果を商品に記載できません。お金も、時間も、かかります。とりわけ中小企業・小規模事業者には、チャンスが事実上閉ざされていると言ってもよいでしょう。
実験では、運動無しでもPGC-1a1を多量に作り出す遺伝子組み換えマウスと、通常のマウスにストレスを加えて違いを比較した。
実際にKATが多いマウスにキヌレニンを注入したとき、この酵素がすぐにキヌレニンをキヌレン酸に変えてしまうため、血液中のレベルには違いがみられなかったという。
足腰の筋肉の衰えは、肺炎、心筋梗塞、腎臓病、糖尿病、動脈硬化、敗血症など、さまざまな病気と戦わなければならないとき、戦力低下の状態になってしまうのだ。
筋肉は、年をとるにつれて筋肉細胞の働きが弱まり、萎縮する。そこに脂肪が入り込んで、この脂肪は「異所性脂肪」といい、筋肉がいわば「霜降り肉」のような状態になる。こうなると、筋トレをしても筋力が上がりにくい。そのため、高齢者の筋トレは挫折しやすい。
骨折は寝たきりの原因になるなど、高齢者にとって恐ろしいけがだ。55~81歳で背骨や大腿骨が折れると、4年以内の死亡率が7~9倍に上がるという海外の研究がある。80歳以上では、骨折から1年以内の死亡率が男性で5割、女性で3割にもなるという。日本骨代謝学会理事長の田中良哉・産業医科大教授は「身長が1、2センチ減ったら、背骨が折れている疑いがあります」と警告する。
骨は体を支えるだけでなく、生きていくのに必要なカルシウムをためておく役割がある。古くなった骨は「破骨細胞」に吸収され、カルシウムが血液などに溶け出す。同時に、「骨芽細胞」によって新しい骨がつくられる。この吸収と形成のサイクルが、約3カ月の周期で繰り返されている。
骨粗鬆症の治療薬は主に二つのタイプがある。「骨が溶けるのを防ぐ(吸収抑制)」と「骨の形成を促す」だ。
骨吸収抑制タイプの代表格が、骨を壊す破骨細胞の働きを妨げる飲み薬「ビスフォスフォネート製剤」。1996年から使われている。
昨年には、破骨細胞にとって重要なたんぱく質を攻撃する「デノスマブ」という新薬が承認された。この新薬は半年に1回の注射ですむ。外側の硬い骨と内側の網目状の骨の両方がバランスよく増え、大腿骨骨折を防ぐ効果が高いとされる。ただし、このタイプは、骨から体内へのカルシウムの供給を減らすことになる。効きすぎると、深刻なカルシウム不足を招く危険がある。
形成を促すタイプは、2010年に登場した骨芽細胞に骨づくりを働きかけるホルモンを使った「テリパラチド」だ。当初の製品は毎日、自分で皮下注射しなければならなかったが、その後、週1回、医師に注射してもらうタイプを別の製薬会社が開発した。投与期間は製品によって異なるものの、副作用を避けるために最長2年までと決まっている。骨折した直後は骨をつくる必要があるのでテリパラチドを使い、その後は骨の吸収を抑える薬を続けるのが望ましいという。
10月20日は「世界骨粗鬆症デー」(World Osteoporosis Day)だ。国際骨粗鬆症財団(IOF)は、女性に骨粗鬆症が増えているのを受け、骨の健康を守るために啓発運動を進めている。骨粗鬆症と骨折による障害が起こりやすいのは、閉経後の女性だ。世界の骨粗鬆症の有病者数は2億人と推定されており、50歳以上の女性の3人に1人は骨折の危険性が高いという。実は45歳以上の女性で入院治療が必要となる病気は骨粗鬆症が多く、糖尿病、心臓病、乳がんなどを上回っている。骨粗鬆症が原因で起こる骨折は、生活の質(QOL)の低下をもたらす。
国際骨粗鬆症財団は、骨質を高め、骨折を防ぐために、次のことを勧めている――
・バランスの良い食事
カルシウムと、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを多く含む食品をとることが大切。カルシウムは乳製品や大豆製品、小魚、緑黄野菜、海草などに多く含まれる。毎日の食事で、カルシウム200mg(牛乳1本分)を摂取することを心がける。
・ダイエットに注意
ダイエットをして栄養が不足すると、必要なカルシウムの摂取量も減少する。若い女性が厳しいダイエットをすると、中年以降に骨量の減少が起こりやすい。必要な栄養素をしっかりととることが大切だ。
・骨を強くする運動
骨を丈夫にするために、食事と同じくらい運動が大切になる。若いころに運動をしなかった人は、年齢が高くなると骨が弱くなり、骨折しやすいことが知られている。
若い頃から、30分の運動を週に3~4回行うことを習慣にすると、骨粗鬆症を防げる。有酸素運動に筋力トレーニングを取り入れると、いっそう効果的だ。年齢とともに筋力トレーニングはますます重要になる。
・日光を浴びる
ビタミンDはカルシウムの吸収を良くする、骨形成に欠かせない成分で、食事からだけではなく、日光浴により皮膚でもつくられる。夏なら木陰で30分、冬なら手や顔に1時間程度、日に当たることを心がける。
・喫煙とアルコールに注意
喫煙と過度のアルコール摂取は、骨粗鬆症のリスクを高める。体重の少ないやせた女性ほど、アルコールの弊害を受けやすいので注意が必要だ。
・検査を定期的に受ける
骨折リスク評価(FRAXなど)を依頼し、必要と診断された場合は骨密度検査を受ける。治療が必要と診断された場合は治療を開始する。
FRAXは、欧州、北米、アジア、オーストラリアでのコホート研究をもとに、WHO(世界保健機関)が開発した、患者の骨折リスクを評価するためのツール。骨粗鬆症による骨折のリスクを知り、適切な治療を促す狙いがある。骨折の危険因子と大腿骨頸部の骨密度(BMD)を組み合わせてリスクを計算する。
質問項目は、(1)年齢(40~90歳)、(2)性別、(3)体重、(4)身長、(5)骨折歴、(6)両親の大腿骨近位部骨折歴、(7)現在の喫煙、(8)糖質コルチコイド、(9)関節リウマチ、(10)続発性骨粗鬆症、(11)アルコール(1日3単位以上)、(12)大腿骨頸部の骨密度(BMD)の12項目。
骨粗鬆症の臨床的な診断は、それぞれの国のガイドラインに委ねられており、FRAXではプライマリケア医による早期診断を促す役割が期待されている。現在はバージョン3まで改訂が進み、6言語・18ヵ国に対応しており、1日に6万回のヒットを得ているという。
骨粗鬆症があると、強い外力がなくても骨折が起こりやすくなる。背骨は骨折するたびに圧迫変形を起こして、次第に背中が円くなり猫背になる。長期間経過をみると、骨折を起こしたときには激しい痛みがあっても、骨折が治るとともに慢性的な痛みへと変わっていく。
レポートでは、脊椎骨折が関節炎や単なる背部痛と誤診されているケースも多いので、適切な治療を促す必要があると指摘している。「特に高齢者では、脊椎骨折の影響は重大で、猫背や急性および慢性の背部痛のほかに、身長低下、寝たきり、抑うつ、ベッドで寝たきりの日数の増加、肺機能の低下をまねく場合がある」とJohn A. Kanis・IOF理事長は注意を呼びかけている。脊椎骨折は骨粗鬆症と関連することが多いが、X線検査などで脊椎骨折と診断され検査を受けているのは、実際には高齢女性の40%、高齢男性では20%に過ぎないという。
「猫背、身長低下、突然に起こる重度の背部痛は3つの徴候だ。こうした患者は検査を受け、特に放射線検査で骨折を診断する必要がある」と米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のHarry K. Genant氏は指摘している。
デング熱
熱帯・亜熱帯地方でみられるウイルス感染症で、原因はデングウイルス。デングウイルスには4つの型があり、どの型のウイルスでも同様の症状が起こる。デングウイルスに感染した蚊に刺されることによって伝染し、人から人へ直接感染することはない。
野菜飲料で有名なカゴメ社から通販専用の新商品。今回の新商品の特長は、国産の野菜6種類を原材料に用いている。
にんじん:カロテン類が豊富で、にんじん半分で、免疫力を高める効果のあるビタミンAの1日に必要な量が摂取できる。
ビタミンB、C、カルシウム、鉄分も多く、栄養的価値が高い野菜。
ベータカロテンも多く含み、リコピンを多く含むトマトと一緒に食べるとガン予防によいと言われる。
フレッシュスクイーズという独自技術で搾汁され、えぐみを持ち込まない、カゴメ独自の製法。
トマト:ビタミンCを多く含む。リコピンは、がん予防の効果があるとされている。また、トマトには、血液中の脂肪増加を抑える効果がある。
独特な香りを醸し出す加工方法と旨みを感じる加工方法の2種類を組み合わせ、カゴメにしか出せない香りと味を生み出している。
セロリ:ビタミンAとカリウムが豊富。カリウムは、血圧安定やすい臓の働きをたすける効果がある。
プチヴェール(芽キャベツ):ビタミンC、カロテンを多く含み、栄養価が高い。
プチヴェールを搾るとカルシウムの吸収力が牛乳よりも高いとされている。
レタス:ビタミンEが豊富に含まれ、血行をよくしたり、体内の脂肪の酸化を防ぐ。
ほうれん草:ビタミンCやベータカロチンが多く、鉄や銅などのミネラル分も豊富。疲労回復や精力増強に効果。
食塩、砂糖、香料、保存料を不使用、野菜本来の甘みとおいしさが売りだ。これら6種類の野菜で、厚生労働省が提唱する1日に必要な野菜量350g分を使用している。つぶより感を出すために、にんじんの繊維質を配合し、野菜を食べているような新食感を楽しむことができる。
飲んでみたが、確かにおいしい。調味料が入っていないとは考えられないほど、自然で飲みやすい。
加熱しない濃縮技術を採用しているらしいが、成分表を見るとビタミンCは含まれていない。殺菌のためにやはり加熱しているとのことだ。でも、このおいしさには企業努力が感じられるので、しばらく試飲してみたい。
巷にあふれる「カロリーゼロ」飲食品には、人工甘味料が含まれている。この甘味料自体は、非常に甘みが強く少しの摂取で甘みを感じ、カロリーを抑制する。しかし、人工甘味料を摂ることで、逆に空腹感が増したり、甘み中毒になることで、かえって太ってしまったという事例が確認されている。
主に、「ホルモンに悪さをする」「味覚を鈍化させる」「依存性がある」という3つの原因が考えられる。
人工甘味料(アセスルファムカリウム)をラット(大きなネズミ)に注入すると、インスリン分泌が増える。さらに、ラットからすい臓を取り出して調べたところ、甘味料の注入量に比例して、インスリンが分泌されることが分かった。ヒトの場合も、人工甘味料(スクラロース)を飲んだときのほうが、水を飲んだときより、血糖値のピークが高くなるという研究報告がある。つまり、カロリーゼロの人工甘味料が、インスリンと血糖に影響するのだ。この状態が続くと、インスリンの能力が疲弊し、2型糖尿病へと進行する危険があり、せっかく健康のためにカロリーゼロ飲食品を摂っていても、逆に健康を害してしまうこともある。
さらに、人工甘味料は味覚を狂わせる。サッカリンは、砂糖の200〜700倍の甘みがあり、アスパルテームは160〜220倍、アセスルファムカリウムは200倍、スクラロースは600倍も甘くなっている。さらに、新しい人工甘味料であるネオテームは、砂糖よりも約7000〜1万3000倍の甘味の効力があり、甘味の強い人工甘味料に慣れてくると、甘味に対する味覚が鈍っていく。お菓子を食べても、甘味を感じず、ついつい食べ過ぎたり、砂糖を追加したりするようになる。
さらに、人工甘味料による依存症はコカインより強烈といわれる。私たちが美味しい物を口にすると、ドーパミンなどの神経伝達物質が分泌され、「もっとたべたい」と思う。「もっとたべたい」という欲求が強くなりすぎると、喜びがコントロールできなくなり、習慣化、乱用、依存、そして中毒へ移行していく。そもそもドーパミンは、いつも出ているわけではない。私たちの何らかの行動によって脳が感動や喜びを覚えたときにドーパミンが分泌され、私たちに快楽をもたらす。ところが、そういった快楽だけを欲した状態が続くと、ドーパミンの分泌をコントロールできなくなり、依存症や中毒になる。コカインなど覚醒剤を投与するとドーパミンが分泌され、さらなる快感や満足感を求めて、薬物に対する依存症となる。食事を始めると、私たちの体内ではドーパミンが分泌され、食欲が増す。食事に対する「快楽」への欲望が強い状態では、ドーパミンが過剰に分泌される。したがって、薬物依存症と同じように、大量のドーパミンで過食に走る。最近、砂糖や人工甘味料の甘さが、ドーパミンなどの神経伝達物質に影響を与えて、依存症や中毒に導くこともわかってきた。
日本人の寿命はどんどん延びており、世界で最も長寿の国になっている。しかし、単に長生きすることではなく、「ぴんぴんころり」というように、健康で長生きし、最期は苦しむことなくころりと死にたいというのが願望である。
その為には、「老いを遅らせ、体をできるだけ若い状態に保つ」ようにしなければならない。その若返りを求める願望に応えようというのが、アンチエイジング(坑老化)医学で、盛んなのはアメリカだ。歴史的には、欧米では20~30年前から行われるようになり、最初に行われたのは女性ホルモンを大量に投与することだ。更年期障害のひどい女性を治療するという方法だが、若返りの薬としても使われるようになった。男性についても同様で、男性ホルモンを投与すると体が若返るだけでなく、精神的にも意欲が増し元気になる。
しかし、女性ホルモンを大量に投与すると乳癌や子宮癌、男性ホルモンは前立腺癌になる危険性が高くなる。そこまでは周知の事実なので、日本ではよほど更年期障害がひどくならないとホルモンは投与されない。
50歳~65歳の中高年にとっても、IGF-1の値の高い人はがんの進行が4倍速く、18年に及ぶ調査期間中の死亡率が75%も高かった、と言う別の研究結果も発表されており、アンチエイジングホルモン頼みの若返りはもろ刃の剣と言えそうだ。