~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

大塚に行くお金があるなら、子どもの(装具装着)環境を整えることにお金を使うことを考えてみませんか?

2018-06-11 16:50:06 | 特発生側弯症と装具療法

2007年からブログStep by step側弯症ライブラリーを書き始め10年以上がたちました。そして、いまでも検索用語に「大塚整体」「手術なしで側弯治療」という言葉が並んでいるのを目にします。

このような「検索」が行われる最大の原因は、残念ながらいまだに特発性側弯症の原因が不明の為です(原因不明ゆえに「特発性」という医学用語が用いられているわけですが)。

もしこの病気を巡つての問題点・課題にどういうものがあるかにご興味のある方は、私見として記載したものですが「初めにお読みください : 特発性側弯症治療 - 何が問題なのか? 」をお読みいただければと思います。ここでは次のような点について問題を分類しています。

 ①原因不明であること。そしてそのことによる弊害

 ②治療法に対するふたつの医学会(整形外科系と理学療法系)の異なる立場と考え方

 ③例えば、マイルドカーブに対しては「経過観察(整形外科系)」なのか「体操療法(理学系)」なのか?

 ④自然治癒・自然緩解という事実

 ⑤骨成熟後も「進行する側弯」があるという事実

 ⑥民間療法からの雑音



そして、民間療法者へは次のように呼びかけをしています。

.整体・カイロ等民間療法者への呼びかけ
 これは私見であり、反対意見があることも知った上でここに記載するものです。
 根本原則として、病気の治療は医療機関で行われるべきものと考えます。医師、看護師、検査技師(検査部門)、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、医療コーディネーター等々が医療設備を用いて、責任の明確な立場の方々が患者を検査し、治療し、看護するもの、と考えます。まして、子どもの病気に対してはそれが否定される理由がどこにあるのでしょう。 特発性側弯症は子どもの病気です。自分の症状や治療内容を理解できる大人ではありません。 子どもなのです。
民間療法者は、大人を対象としてビジネスをすることで何が不満なのでしょう? 自分達が子ども達を救っていると本当に信じているのであれば、その医学的証拠を、医学データととして認められるレベルのものを提示すべきです。施術前後の写真は証拠ではありません。患者さんからの感謝の手紙は証拠ではありません。医者を巻き込んで「これは凄い」とと語ってもらうことは証拠ではありません(そもそも医者であるならば、医学データの何たるかは知っているはず。医者の自分が凄いと言うのだから、これは事実だ。というのは権威を利用した「まやかし」「印象操作」です)。政治家を連れてきて、「これは凄い」と語らせることは証拠ではありません。〇〇協会や△△団体から表彰されることは証拠ではありません。 医学データを示すことなく、事情を理解しえない子どもを治療しようとすることは、もちろん医療ではなく、道義にも倫理にも反する行為です。



非常に残念なことは、その民間療法者のビジネスに積極的に関与する医師や装具療法士がいる。ということ。

多くの場合、思春期特発性側弯症の患者は脊柱変形という形態的疾患が表象されるわけですが、この患者の10%前後には、側弯症に隠れた別の病気が存在することが医学の常識です。 患者はまず第一に「的確な検査」を受けることが重要です。
詳細は左欄カテゴリー「側弯症と脊髄空洞症」から、例えば「お母さん方へ : 千葉大学MRI調査報告」や「特発性側弯症の影に隠れた脊髄空洞症」をご参照ください。


さらに「幼児期特発性側弯症」に関して言えば、次の医学報告も非常に重要な意味をもっています。



宮崎医学会誌 28; 2004年
黒木浩史他「当科における過去5年間の側弯症診療状況とその問題点」

(備考:黒木先生は「...大阪医科大学等のデータを参考として」の中でご紹介した大阪医科大学式ブレースの医学論文2報の執筆者でもあります)



上図7の記載を転記しますと、

 民間治療施設での高度側弯症進行例.
 5歳1か月の近医初診時,Cobb角54°の右凸胸椎カーブを認め装具療法を開始された
 しかし自己中断しその後3年間整骨院で無効な施術を受け続けた結果,当科初診時の8歳1か月の時点で
 Cobb角は85°に増加していた



特発性側弯症における民間療法を否定し、非難することの意味はここにあります。




某整体のホームページには、10年以上前から同じ幼児の写真が掲載され、整形外科に行く必要はない。整体で治る。ということが喧伝されています。このような宣伝文句を見た両親は、「そうか、長い時間待たされる病院にわざわざ行かなくても、近所の整体でいいのだ」と 理解する ことでしょう。



民間療法者がそのような医学事実には目も向けず、ひたすらに「大学、医療機関、整形外科医等」を非難し、あんなものはダメだ、医者では側弯症は治せない。と見栄を切るのは民間療法ビジネスとしては当然の成り行きです。

しかし、理解できないのは、関与している医者と装具作製している専門の人たちの心根(こころね)です。彼らも医学を勉強した人たちなのですから、このような医学事実を理解する知識と能力は有しているはず。

この方々にも、自分のお子さんがいると思います。将来、お子さんに自分の仕事を誇りをもって語ることができるのでしょうか? 何が正しいことなのか、その根本をどうかもう一度考えて欲しいと願うばかりです。


ネガティブな表現になりますが、この社会は、あるいは人間というものは、今も昔も大きくは変わることもなく、「生きる」為には何でもする、という生存原理の中で生きています。 人は人を食べませんが、自分が生きるために他人を騙すことは、珍しいことではありません。健康や病気を巡る世界では、そのような「エセ科学」がつきまといます。カテゴリー「特発性側弯症と民間療法」の中からは「いかにして「偽装し」 「誤魔化すか」 その典型的手法を知ることから始まる“子供の守り”」をひとつ読んでいただくとわかりやすいと思います。




民間療法の広告宣伝は、医学・医療の知識に疎い一般の方々にとっては百害あって一利もありません。本来はその広告宣伝も規制対象「医業類似行為の規制 - 誇大広告に対する規制」「医行為および医師法17条について」「厚生労働省はなぜ側弯整体の広告を罰しないのか?」のはずなのですが、行政の手が回らないのでしょうか、まったくその広告宣伝を取り締まる気配も見えません。


騙すほうが悪いのでしょうか? あるいは騙されるほうが悪いのでしょうか?

例えば、振り込め詐欺と比べた場合、これは騙すほうが悪いのは明確です。ではなぜ騙されてしまうのでしょうか? 私たちは振り込め詐欺事件の「結果」だけを後から見ていますから、どうしてそんなことに騙されるのか? と驚くばかりですが、防止策・予防策という視点で見れば、民間療法の場合はとても簡単なことに気づかれると思います。 

   民間療法の広告宣伝規制を厳格に運用すること。まずはその一点につきます。


そして、何が正しいのか、という医学知識・医学情報を多くの皆さんの手の届くところに広めること。


このブログの中には、特発性側弯症に関して単純化した形ですが、幾つかのチャートを描いてみました。
例えば、

現実を見つめる為に - 進行する側弯カーブの状態を理解し、専門の先生とよく話し合ってみて










世界中の整形外科・脊椎外科・脳外科等の先生方が過去100年以上にわたる研究と臨床試験の積み重ねから導かれた答えがあります。


思春期特発性側弯症の治療において、現在有効とされる治療法は「(一日10数時間以上の)装具着用」によるものです。もちろん、そこには側弯症専門医師の診察・指示・指導のもとで実施される。ということが大前提となります。

某整体のホームページには「大阪医科大学式ブレース」はダメな装具として否定されていますが、この装具による臨床結果海外データと同等です。

例えば、側彎症専門医として有名な瀬本先生のホームページはとても勉強になりますので、隅からすみまで読まれることをお薦めします

皆さんは、某整体のような民間療法者を信じますか? それとも医学(専門医)を信じますか?

       「医学を信じますか? 側わん整体を信じますか?」 

....私が大勢の治療を手掛けてきた経験で言えば、側弯症なんて、屁の河童ですとても簡単に治るのです.....側弯症は、生活習慣病ですから、その習慣を変えれば簡単に治るのですよ最大の原因は、カウチポテトです。ごろりと横になって、ポテトチップスを食べながら、長時間テレビを見ていた悪い姿勢が、最大の原因です.....絶対に手術などしてはいけません。自分の力で健康な颯爽とした姿勢になりましょう。.....私は、この「健康椅子」の発明で、今年6月に、皇族の東久邇宮記念賞を頂きました。 その他、平成4年には、科学技術庁から科学技術振興功績者として長官表彰を受けています。.......


日本の側弯症治療の現場を20年混乱に陥れてきたのが誰であるかは明白です。その民間療法者のビジネスに加担している専門家がいることが さらに混乱に拍車をかけることになる。ということにあの会社で働く皆さんは気づいて欲しいと願います。

言われるままに装具を作れば「治療」は終わり、というほど思春期特発性側弯症は単純な病気ではありません。

瀬本先生のホームページから引用させていただきます=「よくあった装具を正しく装着すれば、多くの場合、弯曲の進行を止めること(進行予防)ができます。私の最近の研究では、OMC装具を着けることによりにより、はじめの角度から進行しなかった特発性側弯症の患者さんは75.5%でした。とくに10度以上の改善が見られた患者さんが約7%おられました。しかし、一生懸命装具をつけていたにもかかわらず10度以上悪化した患者さんも17.5%おられることは、心しておくべきことです。」

ここで述べられているデータは、過去の国内・海外データの成績が示しているものとほぼ同じです。

思春期特発性側弯症の難しいのは、たとえば装具着用を1日23時間行ったとしても、100人中、10~20人では進行が止まらない側弯がある。ということです。

これが現実の姿です。

あるいは、装具療法を数年続けて、骨成熟が完了し、装具を卒業した場合も、その完了時のコブ角の大きさによっては、大人になってからもカーブ進行が続くことがあります。

これも現実の姿です。


例えば、整体のホームページには次のようなBEFOR・AFTERの写真が掲載されています。



肋骨隆起(リブハンプ)です。側弯症患者さんにとっては、この肋骨隆起が目立つ場合がとても精神的ストレスとなります。 そして、整体にいき、ゴシゴシと背中を押されたり、いわゆる体操をすることでこの肋骨隆起が目立たなくなることがあります。それを見て患者さんは「側弯症が治った」と信じます。

もしそうであれば、とても幸せですし、側弯症はたいした病気ではないでしょう。

しかし、残念ながら、それも一時の効果しかありません。

その理由は、「側弯症-医学的真実を求めて」にも記載しておりますが、解剖学的には 肋骨 と 脊椎 は別々の骨であり、関節で接合しているだけであって、肋骨隆起が減ることがイコール コブ角減少とはなりません。






上のCT写真と図を見てください。

CT写真で矢印で示されている部分が、脊椎と肋骨との「関節部分」になります。関節が「動く」ということはおわかりだと思います。ただしこの部位は膝関節や股関節にように簡単にあちこちに動くものではありません。しかし、外部から力を継続して加えたりすることで、ある程度は「動く関節」です。

ですから、整体や体操などを継続することで肋骨隆起はある程度の減少を見せることはあります。

しかし、残念なことですが、これは永続するわけではありません。例えば、体操などでこの部分の角度が 10度から5度に減少したとして、それが一生保たれるわけではありません。やがて、6度、7度、8度 という具合に元にもどってきます。 それは、側弯症という病気には、程度の差はあるとしても、(激しく)曲がろうとする力は大人になってからも続いていくためです。

この部分が「動く関節」ゆえに、ある程度は圧力などを加えることで減少することはありえるわけですが、「完全に分離した」ものではなく「関節として接合」していますので、大人になっても進行するタイプの側弯の場合は、コブ角の増進にともなって.....過去もそうであったように....肋骨隆起も増加していくことになります。


装具療法のひとつの目的はこの「肋骨隆起を減少」させることでもあるわけですが、それが上手く働かなかった場合、
つまりはコブ角も減少させられずに、やがては手術ということになるわけですが、その場合、「脊柱固定手術」は下図のように、脊柱をできるだけ真っすぐにしようという方法ではあっても、赤丸で示した肋骨隆起を直接的に減少させるものではありません。



別の図で示しますと、側弯症の変形力により変形した肋骨の この赤丸部分は、脊柱固定手術では十分には元には戻らない。ということが生じます。




これは、逆に言えば、コブ角の減少が肋骨隆起の減少とイコールにもならない。ということをも意味します。


               これが現実の姿です


学校検診などで発見された(機能性も含めた)(マイルドカーブ)側弯症のほぼ大半は、自然緩解することがわかっています。だから「経過観察」という手段がとられています。

その経過観察期間が長すぎて、その間に進行するのが怖いと思う場合は、ぜひとも「特発性側弯症・娘の記録
http://sokuwan15.blog103.fc2.com/  を読まれて、自宅でできる(進行の有無)観察方法を学ばれて実践して欲しいと思います。 医者まかせにしない、という態度は大切だと思います。 しかし、そのことと、側弯整体に行く。ということは同じではありません。 側弯整体に行ったところで、それはある意味「医者まかせにする」ということとなんら変わるものではありません。 



ここにもう一度、幼児側弯のレントゲン写真を掲示しましたが、側弯整体に「任せる」という選択肢の結果がここにあるということを忘れないで下さい。


肋骨隆起に関しては次回からさらに医学論文等をもちいて、情報をご提供したいと考えていますが、今回ここで述べたいことの結論は、

 ・思春期特発性側弯症に対する現時点で明確な治療法は「装具療法」です。

 ・装具療法も学ぶことが多くあるのも事実であり、それに対して整形外科・脊椎外科の先生がたは
  次のような研修会を毎年開いて、知識・経験の浸透を図られています。



辻先生は名城病院におられた先生ですね。現在は豊田厚生病院の脊椎外科部長になられておられます。




装具に関しては、今回も引用させていただきました瀬本先生が講師を務めておられます。



いわば、このように研修会で講師を務められる先生方は「側弯症専門医」として実績があり、知識・見識も深い先生がたといっても過言ではありません。

医学とは、.....先生方という存在は、ひとりで成り立つものではなく、過去100年、200年という長い医学研究という歴史の積み重ねの中に存在しています。相互に研鑽しあって、患者さんの治療に貢献する、という意識と目的を共有しているのが医療に携わる方々、と言えるでしょう。

ただ、思春期特発性側弯症の装具療法では、家庭・家族・友人などの理解と協力が絶対不可欠です。そして、もうひとつが、

  ・お子さんの装具療法をできるだけ苦痛から解放するための環境作り

という面です。


装具療法はその装着時間と成功率は強く関係しています。家庭にはクーラーはあったとしても、学校の教室にはあるでしょうか? 日本の公立小学校・中学校の冷房率は50%です。全国の半分の学校はいまだに冷房は完備されていません。

整体に通うことは幾らの費用になるでしょう。例えば、1回3000円週に2回とすれば 3000 x 2 x 4=2万4千円/月
年間では28万8千円。これが最低でも3年は続けることになるでしょう。 つまり86万4千円。
これに交通費をプラスすると、おそらく100万円になるでしょう。 たぶんそれ以上取られることでしょう。

上記に示しましたように、一時の効果を見せるかもしれません。

しかし、進行性の側弯の場合は、それはあくまでも一時のことです。

そして、進行性でない場合は、特別に何もしなくても自然緩解するのです。 

自然緩解することに対して、側弯整体の宣伝に騙されて、100万円を使うことのできる余裕があるのでしたら、いっそのこと、お子さんの装具療法の環境を整えるために、学校の教室にクーラー設置を申し出てはいかがでしょう。 ご自分のお子さんの教室だけでは「不公平」だとPTAが文句を言うのでしょうか?

不公平、おおいに結構ではないでしょうか? 何も悪いことをしようとしているのではありません。そして、その設備は、今後も継続して、他の多くのお子さんたちの為にも役立つのですから。

そもそもは、国が、自治体が、学校の冷房化を進めるべきことなのです。 私たちの税金がどこかで無駄に使われていることを考えたら、学校にクーラーをつけるように教育委員会に要望することは私たち市民の権利でもあります。

私は、今回ここに突拍子もない意見を書いていますが、でも、整体に行くという突拍子もない判断と比較するならば、この意見が突拍子もないとは思えません。



装具装着時間を長くするために、

お子さんができるだけ苦痛を感じないで装具を続けられるために、

何ができるか、それを考えるのがご両親のいまできることです。 

どうか、雑音に惑わせれることのないように、ご注意ください。



august03



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