[カテゴリー : 特発性側弯症と装具療法]をご参照ください
早期発見 ---- 理想は20度前後で発見され、専門医師の指導下に入る
装具開始 ---- 専門医師の指導のもと、タイミングを逃さずに (理想は25度からの開始)
装着時の装具による矯正(コブ角の減少)-----理想は小さくなればなるほど良好 (例えば20度以下に矯正できたとか)
矯正角度の維持---理想は、定期検査のレントゲン撮影で、この矯正された角度が維持 (より小さければさらに良好)
このデータは、当ブログで頻回にご紹介しているところの Stuart L. Weinstein, M.D.,「Effects of Bracing in Adolescents with Idiopathic Scoliosis」 the new england journal of medicine 2013 からの引用です。
これは米国とカナダの20数施設で実施された大規模臨床試験(治験)から得られた結果を示しています。
この臨床試験のプロトコルでの装着時間目標は18時間でした。医師からのこの指導をできるだけ遵守して、手術を回避することができた患者さん達の装着時間の集計結果が 13時間~17時間 ということです。 データからは、13時間以上の装着により患者さんの90% (100人のうち 90人) は手術することなく、骨成熟をむかえ、装具療法を卒業したことが報告されています。
例えば 朝6時起床、登校
午前9時授業開始前から装着、午後4時いったん外して帰宅 (装着 7時間)
午後6時自宅にて装着、(入浴の為1時間は外すが) 翌朝6時まで継続 (装着 11時間)
計18時間
学校の体育の時間や、クラブ活動時に外すことがあったとしても、10数時間の装着時間は確保できそうです。
日本の場合、気候やインフラ環境が米国・カナダとは異なり、気温・湿度が高く (それを考慮して上述では通学中は装着していないと仮定してみました) また教室が冷房完備かどうかも不確かですので、学校での 7時間確保も難しいかもしれません。米国のパブリックスクールの場合も、夏場にクーラーが完備しているかどうかの事情は不明ですが、例えば、ジメ暑数という不快感指数で表した世界都市比較資料によりますと、大阪は年間47日、東京33日に対して、ニューヨークは17日、さらにロサンゼルスは ゼロ という結果です。 学校内に生徒が使用できるシャワールームがあったり、基本的にスクールバスあるいは自家用車で通学する米国カナダに対して、日本の場合は 徒歩・自転車あるいは電車通学ですし、放課後のクラブ活動がほぼ全員参加という環境事情を考慮したとき、単純に18時間を目標にしましょうというのが日本の現状にも合致するかどうか? と悩ましいのですが、少なくとも、信頼性の高い医学データ ......装着時間と成功率とが相関するという結果は、私たち日本人にとっても大きな目標になるものです。
専門医師と装着をどう進めていくかを相談していく中で、学校生活と家庭のなかでどういう時間配分をしていくかを決めていくことになると思います。お子さんの理解度や、性格、意思なども考慮しながらプログラム作りがすすめられると思います。また、経験者の声からは、(少数でいいので)親しい友人に理解してもらう、学校の担任に理解してもらう、という面でのご両親の協力と働きかけも有効であったと聞きます。
具体的な情報や、様々な現実生活での Q & A については、患者会に正式入会して、協力を仰ぐ。ということで、ご両親の負担軽減にもなると思います。病気治療では、それがいかなる病気であれ、一人で悩まないで協力者を探すという努力は欠かせないでしょう。
お子さんに無理強いするのではなく、また過剰に神経質になるのではなく、正しい情報と正しい知識をベースとして、筋道立てて説明することで、お子さんの理解を深めることから始める、というような指導が、下出先生の著書には記載されていたと思います。
思春期特発性側弯症はその発症原因は不明ですが、対処方法は明確です。
おひとりで悩まずに、身近で協力してくれる人を探してみてください。 そして、おそらく一番頼りになるのは、お子さんの主治医となる専門医師だと思います。
august03