アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

F10、F50制作記その14.75

2016-06-20 14:26:04 | 絵画制作記、スケッチ記、版画制作記
 惜しい。今朝確認したら理想の指触乾燥までもう少し。特にF10号がそう。不思議なことにここへきて、F50号の方が乾きが遅くなっている。できるだけ早く続きが描ける方がいいので、この分ならF10号は水曜に、F50号は土曜に、再開できるのではなかろうか。

 F10号は山場を迎える。粗い画面から仕上げの画面になる。F50号は後回しの細部に手を入れ、一応の仕上がり状態にした上で、全体的に描き込みを繰り返す。

 じっと待つことで描く時機を窺っているわけで、ここは辛抱のしどころ。体調が悪かったり疲れていたりするならいい休養日になるのだが、こういったときに限って元気だという。時間はあるけどお金がない。お金があるときには時間がない。うまくいかないものです。

 付)油絵制作はとにかくじっくり焦らず取り組むのがこつ。下手でも時間をかけて丁寧に描かれた絵は人を惹きつけます。忙しいから乾きの速い画材で一気に描き上げるのか、忙しいから乾きが遅い画材でたまにしか描けなくてもいいか、で考え方も変わってきます。今の時代は変化が速いというより、世の中がとてもせっかちになっています。こういうときだからこそ、人はどういった絵画を求めているのか、絵描きそれぞれの考え方が問われていると思います。

 この「絵画制作記」を続けている限り、乾くのを待つ、つまり指触乾燥を待つ、という話を何回も書くことになると思います(すでに何回も書いていますし、これからもそうです)。実際に油絵制作をしている方は、えっ、しばしばこんなに待つの? と思っているかもしれまんせんが、じっくり取り組まないなら別に画材に油絵具を選択する理由はありません。水彩でもアクリルでも構わないのです。

 ああ言えばこう言うで、早描きの巨匠はいくらでもいるじゃないか、例えばティントレットやユトリロなど、という意見は当然あるでしょうが、そういう人は油絵のことをよくわかっていません。ああした早描きには、とても高度な独自の技術が要るのです。そうした技法を持ち合わせてない、私を含め凡百の絵描きにできることは、時間をかけて丁寧に仕上げていく方法しかありません。ただ急いで描いた絵が人を魅了するとは到底考えられない。早描きを良しとする油絵描きは、自分の早描きの作品と、早描きの巨匠の作品を比べればよい。その差は歴然である。

 なかなか油絵で時間をかけて描くことはできそうできない。これはこれで単純ながらひとつの立派な技法なのである。単純ということは基礎である。基本訓練もできていないで応用の早描きができるわけがない。

 こうしたことは強調してもしすぎることはないし、実践している人も少ない。だから私と同じ考えの人がいれば、この「絵画制作記」の記事を読んで頷いてくれるだろうし、その意を強くしてくれると思う。またこうした記事を読んで、そうか、本来、油絵はこうして描くんだ、と知ってもらえれば嬉しい。

 「大作だろうが小品だろうが、半年かけて描くのが油絵」が持論の私なのだが、こうした考えは少数派である。少数派の皆さん、共にがんばりましょう。あなたの考え方は間違っていない。正しい。

 蛇足)っていう割には、3ヶ月ぐらいで油絵を仕上げていたりしてますが、これは油絵制作における基本的な考え方ということで。要は、油絵は時間をかけて描くのが当たり前、ということを言いたいわけです。しかしながら私の場合、油絵制作の期間として半年がひとつの基準になっています。つまり半年あれば1枚の絵を仕上げられると計算しているわけです。


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