なら日和

奈良で学ぶ楽しみを見つけた風香のスタディ奮闘日記です。

深まりゆく秋

2010-11-17 21:18:02 | 万葉集と考古学
夏以降、なんだか慌ただしかった。

スクーリング参戦。
卒論草稿提出。
10月末の地元ライブ。
11月初旬の広島ライブ。

すべて事前準備が必要だった。
草稿を作りながら、どこか頭の片隅でライブ原稿がよぎる。
そんな日々を送りながら、ここまで自分を追い込んでしまった自身を何度反省したことか。
二兎追う者は………。
そんな言葉が浮かんでは消えていた。でも。

11月も半ばが過ぎ、昨日の卒論草稿の結果を受け、終わってみれば全てがうまくかみ合って回ってくれたことにただただ感謝しています。

ご存知の方も多いと思いますが、趣味で万葉歌を歌っています。
11月6日に広島県東広島市安芸津町風早という万葉故地で、遠征ライブをさせて頂きました。
この会場にはご学友である流水さまが駆けつけて下さり、現地で合流できました!
流水さん、改めてありがとうございました!
初の遠征ライブは2部構成で1部は昼中のライブ。
2部は万葉火点火に合わせてのライブでした。

2部の模様を語りを含めてyoutubeにアップしてくれましたので、私のハラハラドキドキの映像をお楽しみ下さい(笑)
尚、詳細な心の内は、とこおとめのブログに細部にわたって(!?)書いてありますので、そちらを読んで頂いてから映像を確認頂けると、吉本新喜劇の一歩手前まで辿り着く事ができるかもです(笑)

木々の紅葉もいよいよ深みを増してきました。
万葉集にも秋は多く歌われています。
またその心を読み解きながら心穏やかに、卒論本稿提出合格を目指し、頑張ろう!

嘆きの霧(語り編) / とこおとめ



嘆きの霧(歌編)/ とこおとめ

麻糸の再現

2010-08-02 14:53:46 | 万葉集と考古学
春すぎて 夏来るらし 白栲(しろたえ)の 衣干したり 天の香具山(万葉集巻1-28 持統天皇)

あまりにも有名なこの句を、私は長年知っているつもりでいた。
読んでいたつもりだった。

意訳:
春が過ぎて新都、藤原宮から天の香具山を遠望してみると、干してある白い衣が風に靡いている。ああ、夏がやってきたらしい。

歌を詠んだだけでその情景が思い浮かぶこの句。この中の「白栲(しろたえ)」の表現を深く考えたことがなく、ずっとその言葉の持つ音の美しさから柔らかな素材の布を思い浮かべて詠んでいた。
ところが、数ヶ月前に詠んだ文献によれば、この「白栲(しろたえ)」は麻布であったという。
まさに目から鱗だ。
麻といえば、柔らかに翻るというより、しっかりした素材で表面も粗い。
今まで持っていたイメージとはかけ離れている気さえした。
しかしながら、この知識を得た私は逆にこの句にというより「白栲(しろたえ)」なる表現に、今まで以上の興味を持ってしまった。
そんなタイミングで見てしまったのは、先日訪れた鍵・唐古ミュージアム(奈良県)の麻紐の遺物。
そこで異常に興味を示す私に、ボランティアガイドの方が、ご自身が再現された麻糸を幸運にも見せてもらえる機会を得た私は、再現の手順を丁寧に教えて頂くことができた。

そしてついに麻糸の再現に自身で挑戦することになったわけです。

まずは植物採集から。
今回、和苧(からむし)を使うことにした。
からむしは、イラクサ目イラクサ科の多年生植物で南アジアから日本を含む東アジア地域まで広く分布し、古来から植物繊維をとるために栽培されていた植物である。
茎はまっすぐに立つか、やや斜めに伸びて高さ1-1.5mに達する。葉の大きさは最大15cmほどで、縁に細かい鋸歯(ギザギザ)があり、つやがない。若葉は細かいしわがあり縮んだ状態である。葉の裏側は細かい綿毛が密生していて白く、ふとしたことで葉が裏返ると白く目立つ。林の周辺や道端、石垣などのやや湿った地面を好む。地下茎を伸ばしながら繁茂するので群落を作ることが多い。(ウィキペディアより)

事前に集めた情報をもとにまずはからむし探しから始まった。朝6時に家を出発。徒歩にて近くの河川敷を歩いてみるもののからむしらしきは1本たりとも生えていない。かなり距離を歩いてみたが河川敷にはゼロだった。ならばと、今度は山沿いの下道を歩いて探すがここもゼロ。やはり一日では無理なのかと多少遠回りして神社下の小川が流れる道沿いを歩いて帰ることにした。すると、ちょうど自宅から100Mも離れていない道路脇に裏側が白い葉の群生を発見。何種類か持って歩いた写真と照らし合わせ確認すると間違いなく「からむし」の群生であったのだ。
早速採取開始。
片手で何とか抱えることができる程を採取し、帰宅。
早速枝打ち。
茎のみの状態にして、バケツに水を張り水に浸す。
幸いにも我が家には飲料不可能だが井戸水があるため、雰囲気重視で井戸水を使用した。
そして5日間、水替えをしながら浸す。
5日後に表皮をむき、繊維のみ取り出す。
繊維を手で扱き、乾燥させる。
これで完成。

手探りながらも初めてにしては何とか形となったのである。
干しあがった麻を触ってた感触は、感慨深いものがあった。
からむしによる麻糸は、自分が想像していた麻よりも多少柔らかさが出ていた。

麻にするまでは以外にも単純な工程であったが、この出来上がったものを糸にする作業には果たしてどれほどの時間を費やしていたのだろうと思う。
少しだけ撚りをかけてみて糸にしてみたが、思ったほど簡単ではない。撚りが浅いとすぐにほどけてしまう。撚りを強くすれば、その部分だけ気合の入った太さになったしまう。
古代人の時間の使い方は、こうしたことに労力と時間をかけていたのかと思うと、気が遠くなりそうでもあるが、少し羨ましくもあった。

                           (写真は完成した麻)