探求☆散策記

見たこと、聞いたこと、思ったことを綴った、日常探検記録。

木材利用促進法

2011年08月04日 21時27分30秒 | 環境・福祉

「公共建築物における木材の利用の促進に関する法律」が昨年10月に施行され、昨今の国内世情をも背景に、低層建築物の木造化が始まっている。本法の主旨は、戦後植林された人工林資源が利用可能な段階となっているのに、利用は低調で価格も低迷し林業生産活動そのものが停滞していることから、国産材の需要を拡大することで森林の適正な整備をし、地域の経済の活性化につなげたい考えである。公共建築物は木造率が低い(7.5%)が広く一般に供される建築物でもあるので、公共建築物を率先して導入する事で、一般普及を図る事が目的となっている。なお、木材の利用を促進すべき公共建築物は、学校、社会福祉施設、病院・診療所、運動施設、社会教育施設、公営住宅等の建築物のほか、国又は地方公共団体の事務・事業又は職員の住居の用に供される庁舎、公務員宿舎等が含まれる。

<建築屋からみたキモの部分>

1)新築の公共低層建築物は原則木造化を指定している点
2)自治体ごとに補助金が付く(条件は各自治体毎に異なる)
3)建築が地球温暖化の防止対策となりえる
  ・断熱性 / 調湿性 / 紫外線吸収効果 / 衝撃吸収効果 などの導入メリットがある
  ・製造時のエネルギー消費が小さい
  ・長期間に渡る炭素を貯蔵能力がある
   ・・・二酸化炭素排出低減、原発依存の火力発電への移行に対する対策となる
  ・「カーボンニュートラル」の特性が享受できる
4)導入により快適で健康的な効用が得られる
  児童福祉施設、教育施設などで心理的効果も含め、高い効果が期待される
5)耐火性への懸念
  耐火建築物又は主要構造部を耐火構造とすることが求められていない低層の公共建築物において、積極的に木造化を促進する。また、木造と非木造の混構造の採用も積極的に検討する
6)構造強度への対応
  構造的特性に対応した長尺・大断面の木材等での利用に適した合法性等が証明された材料を、低コストで円滑に供給できる。
7)地産地消の地場産業への配慮
  外材ではなく、地場産材を利用することで地場産業の保護となる。また森林は手入することで土砂災害を防ぐなどの効果も得られる。

 この法律は、鳩山政権主導による”奇蹟の法律”とも言われている。通常ならば族議員たちの抵抗を受けるような”木材のみ”に焦点を当てた法案である。現在の管政権では政調会を復活させたため、現在では同様の法案可決は困難となっている。この法により、原則2階建て以下の公共建築物は木造となった。木材産業においては強い追い風ではあるが、JASの認定工場が存在しない県も有り、地域材の供給には体制の整備が必要なことや、大型木造建築物の構造計算ができる専門家が非常に少ないこと、更に大断面の木材加工ができる設備不足など問題点が顕在化することも予測される。