堀部安兵衛、奥田孫太夫、高田郡兵衛は、大石合流前の10月29日、討ち入りを決意するための神文を作成する。ここでは、従来の堀部の主張通り、内匠頭の意志を継いで吉良邸討ち入りを果たすことを誓い、末尾の罰文には、通常は神仏の罰とするところを「御亡君の御罰遁るべからざる者也」とした。また、討ち入りを決行する時期として、翌年3月の一周忌まで、と具体的に期限を定めた。
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大石内蔵助
「今会議は、急進派の安易な行動を戒め
主家再興に於ける最善の方策を協議する事を目的としていたが
高田郡兵衛には異論があると申す」
岡本次郎左衛門
「内蔵助太傅が
西本願寺に願い出ておる事を無駄にせぬように
重ね重ね急進派の皆共には、軽はずみな行動は慎んで頂く」
「安兵衛殿 異存は御座らぬな」
堀部安兵衛
「・・・・んんゥ」
原惣右衛門
「儂は、急進派の頭は郡兵衛殿だと聞いておりますぞ」
堀部安兵衛
「惣右衛門殿の申す通りじゃ」
「我らの頭は、郡兵衛殿じゃ」
岡本次郎左衛門
「・・・・・」
「我らは、安兵衛殿じゃと聞いておる」
「勝手に変更したのかな」
奥野将監
「どうも変じゃと思っておった」
「我ら漸進派を騙したのか」
進藤源四郎
「今回の会合は
急進派の暴走を食い止める事が目的じゃぞ」
奥田孫太夫
「我ら急進派の頭は堀部安兵衛殿に違いはないが
高田郡兵衛殿には下級武士が集まってくる
我らを含め、その者共が勝手にそう呼んでいるだけじゃ」
郡兵衛殿には頭など興味がない」
大石内蔵助
「どうやら、我ら漸進派の窺い知らない処で
勝手に決めた事があるようじゃな」
岡本次郎左衛門
「改めて申す訳でもない」
「我らの本願は主家再興にある」
「大学様を保護する事が先決じゃぞ」
「急進派が勝手に決めた事を撤回して欲しい」
高田郡兵衛
「儂は、一人でも討ち入りを決行する決意であったが
儂の下に多くの同志が集まって来た」
「何も勝手に決めてはおらぬぞ」
岡本次郎左衛門
「それは、酷い」
「郡兵衛殿の独り合点じゃぞ」
「取り決めは、同士の同意が必用じゃぞ」
高田郡兵衛
「堀部安兵衛、奥田孫太夫、と神文を交わし
討ち入りを決意した」
大石内蔵助
「撤回しろ」
高田郡兵衛
「我らの意志は固い」
「撤回は有り得ん！」
大石内蔵助
「三名だけで神文を作成するのは無責任じゃぞ」
「我らが赤穂浪士
それを以て討ち入りを許可する訳には参らぬ」
堀部安兵衛
「一体、何時まで様子見を決め込む積りじゃ」
「熱が冷めちまうぞ」
「太傅は討ち入りに反対なのじゃ」
「だから、様子見を長引かせておる」
「もう、我ら急進派に任せては如何じゃ？」
大石内蔵助
「駄目じゃ！」
「勝手な行動は許さぬぞ！」
「主家再興の道を閉ざすではない！」
堀部安兵衛
「我ら急進派の決意は固い」
