主人公の青年が山形出身でした。
いえ、だから読んだわけではありませんけれど。
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フェイク
著者:楡 周平
発行:角川書店
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就職難の折から、銀座で高級クラブを経営する会社に就職した岩崎。
自分がテーブルに運ぶ、新米ボーイの1か月分の収入よりもずっと高いワインやシャンパンが、ぞんざいに消費されていくのをみて虚しくなっている毎日。
そこへ、年収1億とも言われる摩耶が新しい雇われママとして移籍してくる。
その美貌と才覚と覚悟で売れっ子にのし上がってきた摩耶と、惜しげもなく金を使う彼女の客の姿に、岩崎はいつか自分もと成功への憧れを抱く。
そんなとき、岩崎は摩耶から送迎の運転手に指名され、『最初に断っておくけど、あなた、この話を聞いたら最後、引き返せないけど、それでもいい』と、ある計画を打ち明けられる。
一旗あげてやろう、あげずにおらりょうかという戦国時代は年表の上では遠い昔ですが、実際にそういう時代であるかどうかよりも、そういう気持ちで生きているかどうかの問題なのでしょうねぇ。
戦国時代にも地道に暮らしていた人たちがいたわけですから。
いかにもぎらぎらとしていそうな舞台でありながら、読んでいる感じは意外にさらりとした印象。
色と欲の2本立てには違いないのでしょうけれども、比重が「欲」の方、ことにお金にかかっていて、あまりどろどろしていないからかもしれません。
キーパーソンである摩耶の愛人生活もビジネスライクに描かれ、印象が肉感的ではないからかと。
彼女の印象はしたたかでクール。
もう一人登場してくる女の子、岩崎の大学の同級生のさくらも、摩耶と同様。
彼女のほうが若い分だけ勢いがあり、また誰よりも切迫感がありますが、摩耶と似たようなタイプ。
主人公の岩崎はどこかのほほんとしていて、親友の謙介も最後まで親友で、それが後味の良さにつながっている気がします。
物事にはからくりがあるのは当たり前、いかに相手を出し抜くか。やられたらやりかえせの人生ゲーム。
ちょっとあっさりしすぎかとも思いますが、後半になると少し盛り上がって、ほどのよいところで終わります。
楽しみとして読んでいるほうにとっては、主人公が自力でスカッと「してやったり」という感じがしないとつまらないですものね。
でも、岩崎くん、ほどほどにしておこうと、肩を叩きたくなるような気分。
おそらくは騙される一方の私には言われたくないでしょうけれど。
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