ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

赤城 毅【天皇の代理人】

2015-03-27 | and others

昭和から元号が変わる頃、「僕」がバーで出会った颯爽とした老紳士。
「君、隣にかけて、少しおしゃべりをしてもいいかな」
元外交官だったという彼は、「私」に第二次世界大戦前後の正史には語られることのないある人物にまつわる出来事を物語ります。

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 天皇の代理人(エージェント)

 著者:赤城 毅
 発行:角川春樹事務所
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1929年(昭和4年)、佐分利は前日から宿泊していた常宿の箱根の富士屋ホテルにおいて死体で発見された佐分利貞夫公使は、自殺か、他殺か?

若き外交官・津村は、謎の特命全権大使・砂谷周一郎と、事件現場である富士屋ホテルで出会います。
さやしゅういちろう。
ちょっと音的には苦しいですが、シャーロック。ホームズばりの冴えで、ワトソン役の津村を翻弄します。
良く響くテノールで語りかけ、微笑みを絶やさぬ砂谷の正体は、まあ、タイトルからしてバレバレですが、まあ、隠す必要もないですね。
津村くんだけ、知らぬが仏。

祖国日本が行こうとする開戦への道を阻止するべく、外交の裏側で暗躍する砂谷。
真っすぐな気性の好男子・津村。
すでに定まったものとして語られる歴史のうえに、虚実とりまぜ語られる出来事は、これが事実であるわけはないとわかっていても、もしかしたら、そんなことがあってもいいのにと思わせるものです。
ロンドン時代の吉田茂も登場。
若き日の白洲次郎も出てきます。

同様に歴史の隙間を描く『書物狩人』シリーズの著者の作品。
私の期待するとおりの本でした。
期待を裏切らないって大切ですよね。うん。



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