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シュガークイン日録3

吉川宏志のブログです。おもに短歌について書いています。

クロストーク短歌 第7回のお知らせ

2016年05月23日 | 日記

第7回 クロストーク短歌のご案内
「あれから5年 東日本大震災の歌を再読する」

今回は、ゲストに「塔短歌会」所属の梶原さい子さんをお招きします。
梶原さんは気仙沼出身、宮城県在住の歌人です。
第11回葛原妙子賞を受賞された第3歌集『リアス/椿』(砂子屋書房)は、
東日本大震災後、被災地からの思いを、風土に根ざした言葉によって、
深々と歌った歌集です。
梶原さんに、津波に襲われた故郷を見つめつつ、どのように作歌してきたかを
うかがいます。
それから、梶原さんとともに東日本大震災の歌を読み直すことで、
短歌を作るうえで忘れてはならないことを考えていきたいと思っています。
皆様のご参加をお待ちしております。


・日 時  6月4日(土) 午後2時00分~5時 (受付 1時半~)
・場 所  高津ガーデン 3階ローズの間(tel 06-6768-3911)
〒543-0021 大阪府大阪市天王寺区東高津町7−11
      【地下鉄】谷町線・千日前線「谷町九丁目」駅下車7分
      【近鉄】「上本町」駅下車3分
・会 費  2,000円  
・申込方法 メールにてお申し込みください。
      メール宛先 cby21310●gmail.com  鈴木まで(●を@に変えてください)
      件名「クロストーク短歌の申込」 
      本文に(1)お名前 (2)連絡できる電話番号を入れて送信してください。
      (定員になり次第締め切りますので、ご了承ください)


千種創一 『砂丘律』を読む

2016年02月19日 | 日記

以下は「うた新聞」1月号に書いたものです。

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 千種創一の第一歌集『砂丘律』は、まずその風変わりな装丁から議論が始まることになりそうだ。
 ペーパーバック風の薄い表紙で、判型は小さく細長い。中の紙もざらざらしていて、一見安っぽい。ただよく見ると、しっかりと紙を綴じてあり、かなり強い造本であることがわかる。
 チープな印象を、意識的に模造(イミテート)している、といっていいかもしれない。
 この装丁は、千種の「あとがき」に対応するものだろう。

「この歌集が、光の下であなたに何度も読まれて、日焼けして、表紙も折れて、背表紙も割れて、砂のようにぼろぼろになって、いつの日か無になることを願う。」

 千種は、砂漠の国ヨルダンに仕事で派遣され、生活してきた。砂の中に埋もれていく書物などを見ながら、言葉とは儚いものだという実感を持ったのだろう。日本に住んでいると、言葉はなんとなく伝わっていく安心感があるが、それとは異なる厳しい環境で、独自の感覚を育ててきたのだ。

・映像がわるいおかげで虐殺の現場のそれが緋鯉にみえる
・君の村、壊滅らしいとiPhoneを渡して水煙草に炭を足す
・予備役が召集されたとテロップの赤、画面(モニター)の下方を染める

 こうした戦争や暴力と膚接している日常を描いた作が、とても強い印象を残す。
 虐殺の遺体を緋鯉にたとえた歌は、鮮烈な恐ろしさを伝えてくるが、それと共に心に引っかかってくるのが、「映像がわるいおかげで」という、一見軽い調子のフレーズである。
 また二首目も、友人に戦争被害を教えるという非常に深刻な状況なのだが、「水煙草に炭を足す」という何気ない動作で終わらせている。
 つらく苦しく、言葉がまったく無力な場面である。しかし、そこで千種は、あえて軽いタッチの歌い方で状況を捉えていく。いくら言葉を重くして嘆いても、事態は何も変えられないことを知っているからだ。
 三首目も、危機感のこめられた歌。予備役まで召集されるということは、本格的な戦闘が近いのだ。しかし、それも「画面の下方を染める」というさりげないタッチで歌いとめられる。自分は異邦人という立場であり、それ以上は踏み込むことができない、という抑制がにじむ。
 千種は、こうした特殊な素材を歌える立場にあるけれども、それに倚りかかろうとはしない。異国の他者の死を、自分の文学の中で扱っていいのか、という問いが、つねに心の中にあるのではないか。今まで戦争などに関わる歌を挙げてきたが、意外にそうした歌は多くない。むしろそうした素材を離れて、イメージの飛翔を探求した歌が目立つのである。

・舟が寄り添ったときだけ桟橋は橋だから君、今しかないよ
・手に負えない白馬のような感情がそっちへ駆けていった、すまない
・通訳は向こうの岸を見せること木舟のように言葉を選び
・いちじくの冷たさへ指めりこんで、ごめん、はときに拒絶のことば

 他者とのつながりを、「桟橋」や「白馬」にたとえることで、はるかなものへの憧憬を生み出していて、美しい広がりをもつ歌だ。
 また、通訳の体験から、言葉を「木舟」にたとえた三首目も、知的でありみずみずしい情感がある。
 四首目は言葉に対する鋭い洞察が光る歌だが、「いちじく」を媒介とすることで、リアルな手触りが加わっている。
 句切れが多いリズムはこの作者の特徴だが、これらの歌では、弾むような勢いを生み出している。
 コミュニケーションへの希求を胸に秘めた人が、どうしようもなく言葉が無力な国に行くことで、自己を模造(イミテート)して、ある種の軽薄さもまといつつ歌うしかなくなってゆく。言葉を遠くへ届けたい願望と、砂に消えてゆく虚しさに引き裂かれている。
 『砂丘律』はなかなか難解な歌集で、私もまだ十分に読み切れた感じはしないが、そうした自己の二重性に、本質が潜んでいる感じがする。

 


第6回 クロストーク短歌のご案内

2015年11月08日 | 日記

第6回 クロストーク短歌

~「現代仮名遣いと歴史的仮名遣い」~

 

 短歌を、どのような仮名遣いで表記するのかは、意外に大きな問題です。

 現代仮名遣いは、戦後に作られたものなので、実は日本の敗戦も深く関わっています。

 今回は、ゲストに中津昌子さんをお招きして、現代仮名遣い(新仮名)・歴史的仮名遣い(旧かな)のそれぞれの魅力について語り合います。皆様のご参加をお待ちしております。

吉川宏志+青蟬の会

 

ゲスト  中津昌子(なかつ・まさこ)

   「かりん」所属。平成3年、第6回短歌現代新人賞を受賞。

   第1歌集『風を残せり』(平成5年)で、第21回現代歌人集会賞を受賞。

   歌集はほかに『遊園』、『夏は終はつた』、『芝の雨』。

   今年、第5歌集『むかれなかった林檎のために』を刊行。

   なお、中津さんは、第1~2歌集は新仮名、第3~4歌集は旧仮名、第5歌集で再び新仮名にされています。

 

 日 時  12月5日(土) 午後2時00分~5時 (受付 1時半~)

 

 場 所  難波市民学習センター 第1研修室(tel 06-6643-7010)定員約50名

      大阪市浪速区湊町1丁目4番1号 OCATビル4階

      【地下鉄】御堂筋線・四つ橋線・千日前線「なんば」駅下車
      【JR】「JR難波」駅上 【近鉄・阪神】「大阪難波」駅下車

 

 会 費  2,000円

 

 申込方法 cby21310@@gmail.com  までメールでお申し込みください。

 (@は、1つ取ってください)

      件名「クロストーク短歌の申込」

     本文に①お名前 ②連絡できる電話番号 を記入ください。 

     折り返し、仮受付メールを送ります。

     (定員になり次第締め切りますので、ご了承ください)


シンポジウムお知らせ(確定版)

2015年08月05日 | 日記

下記のシンポジウムを行います。ご都合がよろしければ、ご参加よろしくお願いいたします。

 

緊急シンポジウム

「時代の危機に抵抗する短歌」

日時:2015年9月27日(日曜) 午後2時~5時(開場1時30分)

場所:京都教育文化センター(京阪電車 神宮丸太町駅 5番口より東へ徒歩5分)

http://loco.yahoo.co.jp/place/g-WAonha7QfQI/?utm_source=dd_spot

参加費:1500円

(定員 約100名)

 

安保法制など、憲法を揺るがす事態が起こっている現在、

私たちは何をどのように歌っていくのか。

近現代の短歌史を踏まえつつ、言葉の危機に抵抗する表現について考えます。

 

講演  三枝昂之  演題「時鳥啼くなと申す人もあり」

提言  永田和宏  「言葉の危機的状況を巡って」

鼎談   中津昌子・澤村斉美・黒瀬珂瀾 「戦後七十年の軋みのなかで」

 

 

★当日参加可能ですが、準備の都合上、なるべくお申込みください。

searain1969●gmail.com (●を@に置き換えてください)  吉川宏志

会場の関係で、机付きの席の数が限られております(50席)。机付きの席をご希望の方は、早めに予約お願いします。

 

主催:緊急シンポジウム「時代の危機に抵抗する短歌」実行委員会

 

 

 

 


第5回 クロストーク短歌 案内

2015年06月01日 | 日記

第5回 クロストーク短歌

~「『クウェート』から20年 ―短歌とメディア― 」~

ISISの人質事件など、最近も、海外の事件をもとにした短歌は数多く作られています。イラクのクウェート侵攻を独自の視点で詠んだ黒木三千代さんの歌集『クウェート』(1995年)は、当時大きな話題になりました。作者である黒木三千代さんに、そのころ考えていたことや、この20年で何が変わったのかを、語ってもらおうと思っています。

 日 時  6月13日(土) 午後1時30分~4時 (受付 1時~)

 場 所  大阪市立社会福祉センター 3階 第3・4会議室

      Tel 06-6765-5641  大阪市天王寺区東高津町12番10号 

      上本町6丁目交差点東へ250メートル

      【地下鉄】千日前線・谷町線「谷町9丁目」駅下車 

       徒歩10分(地下鉄8番出口方面・近鉄11番出口を東)

【近鉄線】「上本町」駅下車 徒歩3分(近鉄11番出口を東)

 会 費  2,000円  

申 込  メールでお申し込みください。

     cby21310@gmail.com

     件名「クロストーク短歌の申込」 本文に①お名前 ②連絡できる電話番号 

     を送信してください。折り返し、仮受付と会費納入のお知らせを送ります。会費納入の確認後、受付完了のメールを送らせていただきます。

     60名の定員になり次第締め切りますので、ご了承ください。

         一度お預かりした会費は、会が中止の時をのぞいては返金できません。

      ただし、事前連絡していただければ、次のいずれかに充当させていただきます。

①次会の「クロストーク短歌」は500円で受講できます。

      ②代理受講。(受講される方のお名前をお知らせください。)