名探偵の解答その93・誰にも言わないで

男性に大人気の探偵であるたかあきに、伯父から『音の出ない悔恨』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に非凡のようです。

　伯父から、実はうちの妻が人間ではないかもしれないと言われても、ああそうですかとしか思わなかった。珍しいが聞かない話ではないし、そもそも伯父は妻との馴れ初めを雪の日に現れた理想の人などと常に自慢していた。それより個人的には『秘密』をばらした伯父を伯母さんが赦すかどうかが心配だ。

梅雨時の創作怪談・人形の家

　友人はあまり人形の類が好きではない。理由を尋ねたところ外観は可愛いと思うが、ああいうものは鍵が掛かっていない空き家のようなもので下手をすると宜しくないモノが勝手に住み着くし、一旦そうなると追い出すのも大変だから焼却するしかなくなって可哀想なのだと真顔で言われた。

名探偵の解答その92・乾いた花

全く無名の探偵であるたかあきに、元恋人から『砕け散りし財宝』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に単純のようです。

　昔の恋人が事務所に現れて、もう一度やり直せないだろうかと寝言をぬかしたので駄目に決まっているだろうと答えたら、あの時の二人には誤解があったと言い張るので有償で調査を行う事にした。結果として確かに誤解は存在したが当然ながら、だから何としか答える気にはならず、元恋人は傷心のまま帰って行った。

名探偵の解答その91・本業は探偵事務所長

女性に大人気の探偵であるたかあきに、謎の紳士から『簡単な虐殺』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に笑い話のようです。

　愛した妻に裏切られたので仕事を頼みたいと押し掛けて来た紳士に、俺は探偵であって殺し屋ではないと説明してから調査を引き受けた。全ては真面目で実直だが思い込みが烈し過ぎる依頼人の誤解だと証明して事態は一件落着を迎えたが、最後に探偵が本業の俺を依頼人に紹介した大馬鹿野郎を殴りに行こう。

名探偵の解答その90・盆暗国王は動かない

男性に大人気の探偵であるたかあきに、王様から『永久秘密』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に残酷のようです。

　可もなく不可もない印象から時として盆暗呼ばわりされる若き現国王だが、それは自分は動かぬまま他人を動かして事態を収拾するからで、側近であればある程その恐ろしさを知っている。だから国王自ら極秘で諜報課に調査を依頼してきた時点で覚悟は出来ていたが、依頼内容は想像より更に容赦がなかった。

名探偵の解答その89・揺らぐ誇りは男の危機

事務所を開設したばかりの新米探偵であるたかあきに、隣人から『苦き年代記』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に無駄骨のようです。

　ぼくの人柄を見込んで出来れば格安でという、実に分かりやすい前振りと共に依頼を持ち込んできた隣人の話を聞くと、結婚して以来常に妻に見下されてきた。もう我慢できないから離婚材料を見付けて欲しいという。だから僕は奥さんに隣人の不倫について話し、きちんとした離婚材料を用意して差し上げた。

骨董品に関する物語・英国製の涙壺

　主である博士を喪った自動人形は哀しみから稼働を停止したが、完璧に枯れてしまうまで無言のまま涙を流し続けた。水銀を含むその涙は万能薬の材料として極めて貴重な物質なのだが、僕は自動人形の涙を溜めたガラス瓶を天鵞絨に包み、博士の机の引き出しに仕舞いこんで鍵を掛けた。