ロシア留学中・脱力進行中

モスクワ留学滞在記、スポーツ(特にテニス)のこと。他に趣味(漫画や音楽)等いろいろ・・・

ファイナルの死闘(後編)

2006-12-03 23:48:12 | テニス
デビス・カップ決勝、ロシアvsアルゼンチン、3日目
(モスクワ、オリンピックスタジアム、カーペット)
12月3日午後1時開始。

今日は昨日と同じSゲル、Sウさんに加え留学仲間のAチ君の4人。
当初参加予定だったM嬢は都合のため欠席(金よりも機会に於いて勿体無い)、
Sゲルはまた遅刻してギリギリの会場入り。


Rubber 4
DAVYDENKO (RUS) 2 2 6 4
NALBANDIAN (ARG) 6 6 4 6

29日のエントリーから言っているように、ロシアが勝利を得るためには、
何故2日目を2勝1敗で終える必要があるのか。
それはこのRubber4におけるナルバンディアンの脅威に他ならない。
アルゼンチンチームの中でも一際存在感を放つこの男。
準決勝までの3国との対戦でシングルス計4勝1敗、ダブルス3戦全勝と、
まさに1人でチームを決勝戦まで牽引してきた大黒柱だからだ。
初日はその実績にたがわぬ強さで、サフィンをストレートで葬り去った。
2日目は一転気の抜けたようなプレーが続き、今年初めてダブルスで黒星を喫した。
さて3日目、スコアは1-2と追いつめられ、負ければロシアの優勝が決まる、
そんな土壇場の場面で現れたナルバンディアンは初日の彼だった。

今季世界№3と№8の対決。同じストローカーでも毛色は違い、
ダビデンコがフラット系で強打を広角に放ち分けてウィナーを獲るのに対し、
ナルバンディアンはスピン系で相手を崩してプレースメントでウィナーを獲る。
そんな感じの大一番。
試合が始まって1時間と少し、あからさまな優位に立ったのは後者の方だった。
ダビデンコの強いサービスを見事に返し、長いラリーでは相手のミスを誘い、
1st~2ndセット、ストロークでの主導権は常にナルバンディアンが握っていた。
最初の2セットのブレイクは共に4ゲーム目と8ゲーム目。
ダビデンコは3rdセット第9ゲームに初めてブレイクを成功させ反撃を期するも、
持ち直したナルバンディアンは4thセットのブレイク合戦を制して(両者通じて5つ)、
アルゼンチンの優勝に望みを繋ぐ2勝目をもたらした。
さすがはナルバンディアン、初日のサフィン、今日のダビデンコと全く歯が立たなかった。
ロシア・タルピシェフ監督を恐れさせたエースの面目躍如だろう。

これで2勝2敗、決着は最終のRubber5サフィンvsアカスーソまで持ち込まれた。
両国応援団共にこれが最後と死力を尽くして応援。喉が痛い。


Rubber 5
 SAFIN  (RUS) 6 3 6 7(7)
ACASUSO(ARG)3 6 3 6(5)

ナルバンディアンが初日のパフォーマンスを取り戻したように、
今日のサフィンに舞い降りたのは2日目の、強い強いサフィンだった。
ホームの大応援団、絶対負けられないという重圧の中で、
そこに居たのはツアーでメンタルの弱さを指摘され続けてきた彼ではなく、
幾度のピンチを乗り越えて成長した、そう、05年全豪で
SFでロジャー・フェデラーに勝って2つ目のGSタイトルを手にしたサフィンの姿。
アルゼンチン団の応援をかき消し、会場を支配する「マラト」コールの中、
2時間51分は夢のように過ぎ去った。

細かい内容を思い出そうとしても、残念ながらすぐには思い出せない。
スタッツを見れば1stサービス確率=69%、1stサービスポイント率=76%、
エースは16本、Wフォルトは0、ウィナー/エラーの数は残念ながらデータなし。
とにかく完璧な内容で、ラケットを投げたのも2ndセット終了時のみ。
快心と言える勝利だった。

アカスーソは決して悪くは無かった。
2ndセットのブレイクはサフィンのサービスに僅かに生まれた隙を突き、
0-40からの3ポイント目を見事にコンバートしたもので、
4thセットもお互いにブレイクポイントさえ与えないキープの応酬の末のタイブレイク、
4ポイント目で奪われたミニブレイクを、4-6サフィンのサービスでの
一つ目のチャンピオンシップポイントで返しながら、
もう一つの自分のサービスでのチャンピオンシップポイントを取り返せなかった。
ここを取り返されていたらどうなっただろうか?勝負の世界は本当に恐ろしい。


サフィンの勝利以降の様子は次のエントリーに続く。

ファイナルの死闘(中編)

2006-12-02 23:50:53 | テニス
デビス・カップ決勝、ロシアvsアルゼンチン、2日目
(モスクワ、オリンピックスタジアム、カーペット)
12月2日午後2時開始。

今日の観戦は同室のヒラシェンコ、中国人のテニス好きSウさんと一緒に。
3日間を共にするSゲルは夜更かしのため寝坊して、
1stセットに15分、3ゲーム分ほど遅刻してきた。
ということで4人で窮地に追い込まれたロシアを応援。


Rubber 3
SAFIN & TURSUNOV  (RUS) 6 6 6
CALLERI & NALBANDIAN (ARG) 2 3 4

1-1、星の上ではタイながらエース・サフィンが負けたことで、
精神的に追い込まれたといっていいロシア側だが、今日の選手発表を見て驚いた。
なんとダブルスに出場はユーズニーではなくサフィン&トゥルスノフ。
デ杯公式HPの記事を読むと、サフィンには金曜の時点で知らされていたらしい。
ただ、サフィンが前日の会見で3日間すべてに出場する用意をしている、と言ったり、
変更は前々から分かっているはずのユーズニーの足の怪我によるものという事もあり、
“ずる賢いロシアチームのキャプテン・タルピシェフ”が、
実は最初からこのオーダーを組んでいたことも考えられる。
とにもかくにも、今年前半(5月のエストリルだったかな?)でダブルスを組んで、
「マラトはダブルスのサイドの概念を分かってない」とトゥルスノフに言われたものの、
結果としてはタルピシェフ監督の作戦が、SFに続きまたもやずばりと的中したと言える。

昨日はアルゼンチンのホームかと見紛う程の大応援団に、
ロシア側応援団は押されっぱなしで、選手にも応援の熱意が伝わらなかった。
今日は試合前の練習中からユーズニーが国旗を振って観客の応援を催促し、
チェンジコートの際にはアンドレーエフが観客と一体となって、
“ロシア”コールの音頭をとっていた。

試合は、1stセットの第1ゲームでトゥルスノフが1stサービスを全て入れて、
相手に思うようなリターンをさせずにラブゲームキープのスタート。
ロシア側のサービス好調の傾向は試合を通じて続き、スタッツを見れば
1stサービス確率=70%、1stサービスポイント率=83%、
2ndサービスポイント率に至っては脅威の85%と、
アルゼンチン側に全くリターンをさせなかったと言って良い。
実際にロシアがアルゼンチンに与えたブレイクポイントは0、
サービスゲームでは最高で2ポイントまでしか与えず、デュースは無し。
トゥルスノフは通産8度のサービス機会の中で、失ったポイントは計4つ。
5度のラブゲームキープ、エース8個と完璧な内容だった。
対照的にアルゼンチン、特に昨日は会場を支配したナルバンディアンがピリッとせず、
最初のサービス機会からセットをまたいで3度続けてキープが出来ず。
ラリーでもベースラインから簡単なボールを返してボレーを決められたり、
ネットについては簡単なボールをミスしたりと、およそ彼らしからぬプレーぶり。
アルゼンチン側は状況打開のためか、2ndセットに入って
オーストラリアンフォーメーションも見せはじめるが、
ネットのミスが多ければ、それも自分達の首を絞めるだけでしかなかった。

結局1時間38分、まさかの速さでサフィン&トゥルスノフのストレート勝ち。
非常に大きな、デ杯に近づく2勝目を挙げた。


当初、ユーズニーが出るにしろサフィンが出るにしろ、
俺の予想はダブルスはアルゼンチン有利、デ杯公式HPのアンケートでも、
80%以上がダブルスのアルゼンチン勝利に投票をしていたが、
こんな結果が待っているとは思わなかった。
ダブルスの負けを覚悟して、初日の2戦必勝をロシア勝利の命題に掲げたわけだが、
まさかこんなスコアで勝ってしまうとは・・・
サフィンも偉いが特に土壇場のトゥルスノフの強さは、
QFvsフランス戦でガスケに勝利したこともあり、ツアーとは違う凄まじさを感じる。
今年の好調がすべていい形でデビス・カップの大一番に出ているのだろうか。

明日は初戦がダビデンコvsナルバンディアン。
初日のナルバンディアンが戻ってこれば、如何にダビデンコといえども難しいだろう。
今日のナルバンディアンだったら、ロシアが3-1で賜杯を手にする。
勿論2勝2敗のタイに戻ったところで、最後に控えるのはサフィン。
今日の復活を見れば、チェラが来ようとアカスーソが来ようと問題ないと思われる。
(そこをたま~に問題にしてしまうのがサフィンなんだけど・・・)
今日の勝利でロシアのデ杯制覇がググッと現実味を帯びてきた。
明日の会場は今日以上の応援になるだろう。気合を入れてロシアを応援してこよう。

ファイナルの死闘(前編)

2006-12-01 23:42:34 | テニス
デビス・カップ決勝、ロシアvsアルゼンチン、初日
(モスクワ、オリンピックスタジアム、カーペット)
12月1日午後1時開始。

午前の授業を30分ほど早く出させてもらい、地下鉄でSゲルと合流。
昼飯にシャウルマを買い、会場には30分前に余裕を持って到着。
1ヵ月半ぶりのオリンピックスタジアム。
思えばクレムリン・カップの時は1週間で6日もよく通ったなぁ。
開会式が始まると、来賓席にはエリツィン元大統領、
正面やや右側のVIP席にはマラドーナの姿が!
残念ながら現プーチン大統領は来ていなかったが、2人ともすごいVIPだ。
そして会場の一角をものすごい数のアルゼンチンサポーターが埋め尽くし、
マラドーナを中心にサッカーのような応援歌を歌っている。
どちらがホームでどちらがアウェイか、錯覚するほどの盛り上がりだった。


Rubber 1
DAVYDENKO (RUS) 6 6 5 6
 CHELA  (ARG)  1 2 7 4

盛り上がるアルゼンチンサポーターのグウの音も出なくさせる、
世界№3、ダビデンコの好スタート。
これまで5戦して勝ち星をあげたことの無いチェラ相手に、
過去の星勘定とは全く逆の展開で2セットUPに成功。
1stセットは第2、第6ゲームでの2つのブレイクでそのまま6-1、
2ndセットでは序盤チェラがポイントを長くして
上手くダビデンコを走らせる場面が見られたものの、
第5、第7ゲームをブレイクし5ゲーム連取したダビデンコが6-2。
アルゼンチンサポーターの意気消沈振りは見事だった。
3rdセット、ストロークで多少エラーの多くなり始めたダビデンコに対し、
チェラは相手の2ndサービスで58%のポイント奪取に成功。
この試合唯一のロングセットで一矢報いるも、残念ながらチェラの奮闘はここまで。
再び息を吹き返した世界№3は、沸き返るアルゼンチンサポーターを嘲笑うかの様に、
すっきりキッチリ勝利を決めた。
エリツィン元大統領もご満悦の様子で、花道を引き上げていった。


Rubber 2
 SAFIN   (RUS)  4 4 4
NALBANDIAN (ARG) 6 6 6

第1試合を勝ち、このままリードを広げたいロシア。
次はチームのエースにして精神的な大黒柱、マラト・サフィン。
相手はタルピシェフ監督が唯一最大の問題とマークするアルゼンチンのエース、
世界№8、ダビド・ナルバンディアン。
これまでの戦績はサフィンの6勝2敗、今年の全米OPでも2回戦で当たり、
Finalセットタイブレイクの末にサフィンがUPセットを演じている。
最後の対戦はマスターズシリーズ・マドリッドのQFでナルバンディアン勝利。
サーフェスはお互い得意とも苦手ともいえないカーペット。
他のアルゼンチン選手は明らかにクレーより見劣りをする中で、
このナルバンディアンだけは全くサーフェスを厭わないところが恐ろしい。
ウィンブルドン準優勝、ハードのマスターズカップ優勝の実績は脅威そのもの。

試合は、いきなりサフィンがブレイクされて始まった。
7回続いたデュース、このゲームだけで4本のエースを奪うも、
最後は痛恨のWフォルトで落としたサフィン。
今思えばこのゲームが、今日の試合の全てを暗示していたように思えてならない。
スロースターターとはいえこの大一番で不安な立ち上がりのサフィンは、
第2ゲームで即座にブレイクバックのチャンスを得るもコンバートできず、
その後はチャンスすら見出せずに1stセットを失った。
2ndセットもその傾向は続く。第3、第5ゲームをWフォルトが絡んで落とし、
ナルバンディアンが5ゲーム連取で5-1。
アルゼンチンサポーターが大きな絶叫を上げる中、第7ゲーム最初のポイントで、
サフィンが初めて長いラリーを勝ちきった。
少しプレーを変えたかな?
それまでラリーになればほとんどサフィンがロングにアウト。
エースでしかポイントが取れていないような状況で、ちょっとした変化が感じられた。
ここからようやく試合は内容的に見ごたえのあるものになり、
サフィンが1ブレイクバック。
4-5で迎えたナルバンディアンのサービングforセット、
0-15からナルバンディアンのフォアはネットイン!これは痛い。
0-30に出来るかというポイントを不運も重なり落とし、
サフィンはそのまま2ndセットもダウン。
最初の2ブレイクダウン、特に第5ゲームのダウンは痛かった。
そしてナルバンディアン相手の2セットダウンは辛すぎる。
多少の光明はストロークでようやくポイントが取れるようになってきたこと。
不安はサービスの調子がイマイチ安定しないこと。
最初の2セットでエース15本、Wフォルト4本は両方とも多すぎる。

第3セット、サフィンの調子が上がり始めたお陰で、序盤は一進一退の攻防。
まだ彼特有の?つまらないミスは相変わらず多いものの、
ラリーでも多少は主導権を握ることが増えてきた。
3-3で迎えた第7ゲーム、サフィンのサービス。
最初のポイントはフォルトと判定されたボールをチャレンジに成功させエース。
第2ポイント、痛恨のWフォルト。
2ポイント連続して失い15-40とされ、1ポイントを返すもののブレイクダウン。
3-4、まさに痛恨。
第8ゲーム、ナルバンディアンのサービスゲーム。
デュースから2度のブレイクチャンスを得たサフィンだが、コンバートできず。
最後はナルバンディアンが、2度ともフォルトの判定のセンターへのサービスを、
2度連続して同じラインでチャレンジを成功させ、結果は連続エース。
反撃の目を絶たれると、ラスト第10ゲームのサービングforマッチでは、
ラブゲームのキープで勝利を持っていかれ、サフィン完敗。
試合を通じてエース21本ながら、普段はWフォルトの少ない男が計7本。
2ndサービスで33%しかポイントが取れないようでは勝てないはずだ。
初日は1勝1敗、エース対決で痛い痛い星を落とした。

試合後、途中から応援に来ていたダビデンコを含め意気消沈して引き上げるロシアチーム。
勘定に入れていた星を落とし、意気消沈して帰るロシア人ファン。
と俺。
対照的にナルバンディアンはマラドーナにウェアを投げ渡し、
アルゼンチンサポーターは応援歌(サッカー?)の大合唱。
果ては「オーレーオレオレオレー、ディエゴーディエゴー」と、
観客を煽っているマラドーナ・コールまで飛び出す始末。
最後は警察に「早く帰れ」と急き立てられていた。


会場を出ると一角に20人ぐらいのアルゼンチンの輪が出来上がり応援歌を合唱中。
近寄ると輪の中にはなんとマラドーナが!
一緒に写真を撮ってとお願いするも、断られてツアー?のバスへと消えてしまった。
上の写真はその時にマラドーナ単独で撮ったもの。近い!
思ってたよりもっともっと小さかった。この身長で5人抜きしたのか・・・すごい。

※ところで、デビス・カップはチャレンジが1セットに何回でも有効なようなんですが、
どなたか詳細をご存知の方いらっしゃいますでしょうか?
準決勝のvsアメリカ戦は普通に2回だったような気がするんだが・・・