ロシア留学中・脱力進行中

モスクワ留学滞在記、スポーツ(特にテニス)のこと。他に趣味(漫画や音楽)等いろいろ・・・

夢、見果てたり

2006-12-04 21:36:52 | テニス
デビス・カップ決勝、ロシアvsアルゼンチン、3日目
(モスクワ、オリンピックスタジアム、カーペット)

続き。

アカスーソのフォアがネットにかかった瞬間、
会場の張り詰めた空気が一気に開放された。
サフィンは両手を高々と挙げプレッシャーからの開放を喜び、
監督やチームメイトが駆け寄り勝利の英雄を胴上げ。
アカスーソは握手の後チェアで泣き崩れ、ナルバンディアンが彼を慰めていた。

全ての観客が立ち上がり、素晴らしい試合に拍手を送っていた。
感激で泣いている者はいたのだろうか?
俺以外に。
試合内容に興奮したのか、ロシアが優勝したのが嬉しかったのか、
辛い状況にあった自分を勇気付けてくれたサフィンの頑張りに感動したのか。。。
とにかく泣けて泣けてしょうがなかった。
05年全豪OPのサフィンの優勝のとき、控え室から戻って来て
自分のチェアで喜びを噛み締めるサフィンに少し涙が出たことはある。
でも今回は、込み上げてくるものがどうにも抑え切れなかった。
隣のSゲルにバレると恥ずかしいのでそっちを向けなかった。
立ち上がって、他の観客と同じように一心不乱に選手に拍手を送ることで、
何とか気持ちを抑えてその場を取り繕っていた。
でも抑え切れずに3回泣いた。


胴上げが終わった後、サフィンは長いインタビューを受け、
その間に表彰式が準備された。凄い数の報道陣が入ってきた。
ここぞとばかりに俺は自分の席を離れ、より近くで選手を見れる場所へ移動した。
選手にカップが渡された後、タルピシェフ監督とマンチーニ監督のスピーチ。
そしてカップを囲んでの記念撮影。ロシア選手は最高の笑顔で写真に収まっていた。
アルゼンチン・チームも誇らしげに、ロシア・コールの沸く中会場を後にした。
負けて天晴れ。ナルバンディアンの精神力には脱帽だし、
敵地で苦手なサーフェスにも拘らずサフィンを最後まで苦しめたアカスーソも強かった。
アルゼンチン選手達が引き上げた後、しばらくインタビューを受ける
ユーズニー、トゥルスノフ、ダビデンコの3人。
まだ続く歓喜のコールに、会場全体に感謝の手を振ってコートを後にしていった。
唯一、サフィンだけが再度のインタビューを受け観客席近くに残っていた。

最後にサインをねだる50人ほどがインタビュー後の彼に殺到し、観客席中段は修羅場。
その波を掻き分けて、何とか彼に近づくも、無常にも目の前で彼は帰って行ってしまった。
人並みから抜け出ると、Sゲルがガッツポーズしてこちらに駆け寄ってくる。
「サイン貰って、ガッチリ握手もしましたよ」
何でお前が・・・せっかくの感動も薄れる最後のコイツのパフォーマンスに、
放心しながらスタジアムを出た。


この3日間は本当に夢のようだった。
実は自分の事では辛い状況に置かれ、土曜の夜は一睡もしていなかったりした。
テニスがなかったらどうなっていたか分からない。
サフィンはいつでも俺の心を勇気で満たしてくれる。
この日の事は、前夜からその夜まで続く出来事とあわせ、きっと忘れないだろう。
2006年12月3日(日)。
27年と11か月の人生の中で最も印象的な日。