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映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

基本は脚本(お話)を重視しています。
お勧めできるか否かの気持を総合評価で示しています。

映画寸評「ロスト・バケーション」

2016年08月01日 08時13分05秒 | 映画寸評

「ロスト・バケーション」(2016年 米国)
監督 ジャウマ・コレット=セラ

秀逸な状況設定だが難点あり

女子医大生のナンシー(ブレイク・ライブリー)が、メキシコの地元民しか知らない美しいビーチで一人サーフィンを楽しんでいる時、サメと遭遇し、岸から200メートルの岩礁に取り残されてしまう。サメはナンシーを襲おうと周回し続け、しかもナンシーの居る岩礁は満潮になると水没するもので、満潮までの時間が表示される。と、いった形で状況設定が序盤ですべて提示され、さあどうする、というタイムリミット付きのシンプルなサスペンス・スリラーである。

サメ物の傑作「ジョーズ」が、サメを追っていく過程でサメが徐々に全貌を表す不気味さを描いているのに対し、こちらはシンプルな設定で最初から主人公の恐怖心を描き、観客に感情移入させる、というところがミソである。主人公が男たちでなく、ビキニの女性というのも効いている。絶体絶命の中で、ナンシーは生き延びるための知恵を絞る。医学生の知識を活かして自らの傷へも対応し、サメの周回状況や周囲の事物への観察を続ける。また、ビーチにやってきた人間がサメに襲われるのを見る羽目にもなり、助けを呼ぶ声も届かない。この過程で観客のハラハラ感は途切れない。

ラストの成り行きは、一か八かの賭けにしても、余りに偶然の僥倖に頼り過ぎ、という感じでありもう一工夫できなかったかと、やや悔やまれる。それよりも一番の難点は、満潮までの時間である。満潮は1日2回あるので、夕刻から始まった話ならば夜中に一度満潮になっているはずである。なぜ、こんな簡単で重要な事実を無視できるのか。ついでに細かく言えば、撮影の都合があったのか、満潮までの潮の満ち方もかなり不自然である。ずっとあまり変わらなくて、満潮時間が近づいて一気に満ちてきた感じだ。せっかくの秀逸な状況設定で、よくできたサスペンスなのに、残念である。やはり「ジョーズ」の完成度の高さを再確認させられる。

総合評価 ③  [ 評価基準:(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]