「友よ、さらばと言おう」(2014年 仏)
監督 フレッド・カヴァイエ
銃撃戦主体でサスペンス性は薄い
飲酒運転での交通事故により服役した後、警備員をしている元刑事のシモン(ヴァンサン・ランドン)と、現役刑事のフランク(ジル・ルルーシュ)がマフィア一味と戦う話。シモンの9歳の息子がマフィアの殺人現場を目撃したことからマフィアに追われる。シモンは出所後、心を閉ざして離婚し息子とも別居して自堕落な生活を送っていたのだが、息子を助けるために体を張って戦うことになり、一旦は危ないところでマフィアから息子を守ったものの、今後も命を狙われ続けるのは確実なので、シモンはフランクと共にマフィアに逆襲しようとし、彼らのアジトであるクラブに乗り込む。そこからは激しい銃撃戦の連続である。その後も、息子と元妻をフランクの姉のところに匿うために、超特急列車TGVでパリに向かうが、またも車内で襲われ銃撃戦である。
結局、銃撃戦と合間の格闘を大上段に描いた形であり、サスペンス性は薄い。銃撃されながら逃げ回るが、弾が当たるか当たらないかという以外のサスペンス上の工夫はほとんど見られない。最もはらはらさせるのは、息子が最初にマフィアから逃げ回るシーンだろうか。このシーンも長々と走って逃げるのをマフィアの一人が追うのだが、走る速さの差が余りにも不自然である。さらに細部の粗も目立つものとなっている。フランクは自宅に呼んだコールガールに自分が刑事であることが判る書類を不用意に見られてしまうし、列車に乗るためにフランクのアパートから出る時には何の警戒もせず護衛もつけないばかりか、捕えて椅子に縛り付けてあるマフィアの手下が聞いている中で、逃亡先の相談を行うなどはひどすぎる(またどういう訳かこの手下は解放されて、シモンらの姉の元への移動をボスに報告するのだ)。シモンらを見送った後、列車にマフィアが同乗するのを見たフランクが車で列車を追うのだが、超特急はそんなに遅いものなのか。
心を閉ざしたシモンを気遣うフランクや、シモンと妻子の交流などの情感はそれなりにうまく表現されており、全体としても見応えはあるが、カヴァイエ監督の優れた前作「この愛のために撃て」のようなサスペンス・アクションを期待していた身としてはがっかりである。原題は「後悔する」といった意味のようだが、その元になっているらしい交通事故の真相など、なんだかとってつけた感じの不自然さである。
前作共々、原題とは関係ない、もったいつけた邦題だが、アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンの「さらば友よ」以来、マフィアの絡むフランス映画には特に「友よ」をつけたがるものなのか。
総合評価 ③ [ 評価基準(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]