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映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

基本は脚本(お話)を重視しています。
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映画寸評「ランナウェイ / 逃亡者」

2013年10月29日 07時44分23秒 | 映画寸評

「ランナウェイ/逃亡者」2013年 米)
 
監督 ロバート・レッドフォード

逃亡の目的に拍子抜け
 
(以下、ネタばらしあり)


ベトナム反戦運動から発展した過激派「ウェザーマン」という組織が、1969年にミシガン州の銀行を襲い、警備員を殺してしまう。逃走したメンバーの一人シャロン・ソラーズ(スーザン・サランドン)が、30年後に逮捕されたことから、同じくメンバーのニック・スローン(ロバート・レッドフォード)にもFBIの手が迫ってくる。スローンは素性を偽って「ジム・グラント」という名前で弁護士となって別人としての生活を送ることに成功していたが、危険を悟って逃亡する。そして、どうやら彼は逃亡するのみではなく、目的があり、それを果たして帰ってくるつもりらしい。そこでサスペンスが生まれる、という設定なのだが‥‥。

スローンはメンバーの一員ミミ・ルーリー(ジュリー・クリスティ)に合うのが目的で、彼女の消息をかつての仲間たちに聞いて回る。彼らはそれぞれ現在の生活を築いており、30年前の仲間たちとの連絡は控えていたのだ。その過程で彼らそれぞれが、過去の友情を忘れることなくスローンに接するのが、この映画の原題にもあるメインテーマとなっているのである。しかし、それは過去の活動を十分に総括できている訳ではないし、各人の評価もまちまちである以上、表面的な対応としてしか現れない。もちろん、同じ世代の多くの元活動家と同様に、当時の活動とその後の生活の整合性は見い出せぬままで、開き直ることもしない状況なのだが、それをそのまま映画として提示する意味がどれだけあるのだろうか、と思ってしまう。結局、レッドフォードの当時に対するノスタルジーでしかないのではないか。もっとも、当時の状況を知らない若い世代に、ベトナム反戦運動や革命・体制変革を目指す当時の若者の、真剣だった思いを伝えようとする意味はあるのかもしれない。当時の過激派と現在の「テロリスト」とは違うのだ、ということを。それは、ソラーズが事件を追及している地方紙の記者ベン・シェパード(シャイア・ラブーフ)に、面会で話すシーンに端的に描かれている。

しかし、ストーリーは結局、スローンの目的がミミ・ルーリーに自首を勧めて自らの無実を証明しようとしていることだ明かされ、なんのこっちゃと、拍子抜けである。警備員を殺してしまったことと、活動への評価は異なるとは言え、仲間の自首で自分が助かろうというレベルの話なのか。これが、逃亡しながら真実を明かそうとしていたことの真実だとは。また、銀行襲撃のメンバーにスローンが居なかったのであれば、なぜソラーズはそのことをもったいぶって隠したままにするのか。いかにも何か裏があると思わせるだけではないか。ついでに変なのは、ルーリーが自首するだけでスローンが即座に釈放されたことである。襲撃に加わっていないとしても組織の幹部だったのは事実なのに。しかも身分詐称には、公文書偽造当の罪状もあるはずであろう。釈放後、スローンが娘と寄り添って歩く後姿でのハッピーエンド的な結末もいただけない。逃亡過程のサスペンスも、全く期待ほどではなくても一部面白かったのだが、それらも興ざめである。

また、映画から推測するに、ウェザーマンのメンバーたちは20代だったと思われるが(あるいは違うのか?)、そうすると30年後は50代ということになる。それを演じる俳優が皆70歳前後というのは、やっぱり無理が有ろう。特にいかにも老けたという感じのレッドフォードには違和感が付きまとった。

総合評価 ② [ 評価基準(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる  ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]