「カムイ外伝」(2009年 日)
監督 崔洋一
見応え十分の忍者アクション
所属した忍者集団から抜けようとした「抜け忍」・カムイ(松山ケンイチ)とそれを許さず殺そうと追い回す忍者集団との戦いを描いた白土三平の劇画の実写版。
領主の馬の足を切断して奪い去った漁師の半兵衛(小林薫)と関わったカムイは、やがて半兵衛の住む漁村に暮らすことになり、そこにはカムイより先に「抜け忍」となって逃げたスガル(小雪)が半兵衛の妻として住み着いていた。カムイと彼らとの交流と、追ってくる忍者たちとの戦いが展開されるのだが、話の展開としてはかなりお粗末である。しかし忍者アクションは見応え十分である。カムイは走り、走り、そして木から木、岩から岩へと跳躍する。CGは必ずしも満足できるものではないが、よく練られた殺陣とアクションはなかなかすばらしく、松山ケンイチが役にはまって見事にこなしている。CGの跳躍にしても、一部香港映画のアクションに見られたような、戦っている両者が突然空中を飛翔して宙に浮かんだ状態で交わる、といった荒唐無稽な不自然さは感じられない。終盤の浜辺での戦いは圧巻である。
ストーリーとして、領主の馬の足を切り取るなどの半兵衛の行動が何か深い意味ありかと思わせたが全くそうではない点と、正体が判ってみるとそれまでの行動がいかにも不可解な鮫獲り船の首領・不動(伊藤英明)があまりに不自然で最大の難点である。また、最後のナレーションは空疎な蛇足となっているが、全体として、原作の雰囲気を壊さない出来映えとなっている。CGが進んだ現在、実写化不可能と言われた大作「忍者武芸帳」に挑戦してもらいたいものである。
なお、佐藤浩市と土屋アンナがちょっといかれた領主とその妻を怪演している。
総合評価 ④ [ 評価基準:(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0論外。物投げろ)]