goo blog サービス終了のお知らせ 

映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

基本は脚本(お話)を重視しています。
お勧めできるか否かの気持を総合評価で示しています。

映画寸評「カムイ外伝」

2009年10月12日 09時01分40秒 | 映画寸評

「カムイ外伝」(2009年 日)

  監督 崔洋一


見応え十分の忍者アクション

 

所属した忍者集団から抜けようとした「抜け忍」・カムイ(松山ケンイチ)とそれを許さず殺そうと追い回す忍者集団との戦いを描いた白土三平の劇画の実写版。


領主の馬の足を切断して奪い去った漁師の半兵衛(小林薫)と関わったカムイは、やがて半兵衛の住む漁村に暮らすことになり、そこにはカムイより先に「抜け忍」となって逃げたスガル(小雪)が半兵衛の妻として住み着いていた。カムイと彼らとの交流と、追ってくる忍者たちとの戦いが展開されるのだが、話の展開としてはかなりお粗末である。しかし忍者アクションは見応え十分である。カムイは走り、走り、そして木から木、岩から岩へと跳躍する。CGは必ずしも満足できるものではないが、よく練られた殺陣とアクションはなかなかすばらしく、松山ケンイチが役にはまって見事にこなしている。CGの跳躍にしても、一部香港映画のアクションに見られたような、戦っている両者が突然空中を飛翔して宙に浮かんだ状態で交わる、といった荒唐無稽な不自然さは感じられない。終盤の浜辺での戦いは圧巻である。


ストーリーとして、領主の馬の足を切り取るなどの半兵衛の行動が何か深い意味ありかと思わせたが全くそうではない点と、正体が判ってみるとそれまでの行動がいかにも不可解な鮫獲り船の首領・不動(伊藤英明)があまりに不自然で最大の難点である。また、最後のナレーションは空疎な蛇足となっているが、全体として、原作の雰囲気を壊さない出来映えとなっている。CGが進んだ現在、実写化不可能と言われた大作「忍者武芸帳」に挑戦してもらいたいものである。


なお、佐藤浩市と土屋アンナがちょっといかれた領主とその妻を怪演している。

 

総合評価 ④ [ 評価基準:(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0論外。物投げろ)]

 


映画寸評「リミッツ・オブ・コントロール」

2009年10月05日 15時37分48秒 | 映画寸評

「リミッツ・オブ・コントロール」2009年 米)

監督 ジム・ジャームッシュ


徹頭徹尾意味不明な独りよがり


「孤独な男」という名の殺し屋(イザック・ド・バンコレ)が、依頼人から「自らを最も偉大だと思っている男を墓場に送れ」という指示を受け、「想像力とスキル」を使って行うようアドバイスされる。指示に基づいて、殺し屋がマドリードの街とスペインの田舎を次々と移動することになる。指示された場所で待っていると、様々なタイプのメッセンジャーが現れ、「スペイン語はできるか?」と尋ねた後で、「映画」や「科学」「アート」「ボヘミアン」「格言」などについて、ひとくさり自論を述べた上で、マッチ箱に入れたメモを渡すことになる。メモには簡単な数字とアルファベットが書いてあるだけだが、これで殺し屋には次の場所が判るらしく、移動していく。


こうしてジャームッシュお得意のロードムービー風な展開になるのだが、それぞれの場面には何の関連も無く、曰くありげ、意味ありげなメッセンジャーたちも、単にそう見えるだけのことで何の奥行きも無い。殺し屋が黙って聞いているだけの薀蓄にしても、目新しさも無く面白くもなんとも無い。そしてようやく、標的のところにたどり着き、やっと主人公が初めて何らかの能動的な行動を起こすだろうと思われたが、驚くべきことに彼は「想像力」によってそれを行うのである。そして最後になぜか空港のトイレで着替えて去って行くのだが、それも含めて全編意味を成さない。


多くの批評家によると、ストーリーを追うのではなく「想像力」を刺激される作品として味わうべきとのことだが、いかなる想像力も刺激されようの無い無内容さである。確かにストーリーは滅茶苦茶でも、楽しめる場面、面白いやりとりなどが有るのなら、それはそれで良いのだが、無口・無表情が意志の強さを思わせる主人公の風貌と、脇役たちのちょっと見の個性以外は、全く見るべきところは無い。よほどジャームッシュ自身を大好きで、彼の好みや考え方を推測することのできる「想像力やスキル」を持った人たちが内輪で鑑賞するのならともかく、とても一般公開できるような代物ではない。前作「ブロークンフラワーズ」はなかなか面白かったが、今後よほどのことが無い限り、ジャームッシュ作品は見る気になれない。「制御の限界」(リミッツ・オブ・コントロール)を問題にすべきはジャームッシュのコミュニケーション能力についてであろう。この作品の評価に戸惑い「難解だ」などと言っている批評家もいるが、こんなものははっきり「くそだ」と言うべきである。

 

総合評価 0 [評価基準:(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0論外。物投げろ)]