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映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

基本は脚本(お話)を重視しています。
お勧めできるか否かの気持を総合評価で示しています。

映画寸評「全力スマッシュ」

2015年10月15日 10時46分47秒 | 映画寸評

「全力スマッシュ」(2015年 香港)
監督 デレク・クォックとヘンリー・ウォン

何のひねりも無い失敗作

香港映画であり「バトミントン版『少林サッカー』」という文句につられて面白そうに思ったのが間違いで、全くの期待外れ。

バトミントンの元世界女王だったが不祥事で転落し自堕落な生活を送っているサウ(ジョシー・ホー)が、元強盗団のラウ・タン(イーキン・チェン)らがバトミントンをやっている屋敷に迷い込んだことからチームの一員となり、練習を積んで一緒にマカオでの大会に出場する話。チーム結成に至るまで各人物が登場するたびに、もったいつけて仰々しい音楽と名前の大映しで人物紹介があり、特に強盗団の面々はよほど凶悪な個性なのかと思わせるが、結局それぞれどうということもない人間であることが判る。「少林サッカー」ではさりげなく登場した人物が、それぞれ意表を突く行動に出たり個性的なパフォーマンスを披露して笑わせたのだが、雲泥の差である。元強盗団がバトミントンを始めたというのも、何か裏があるのか、こじ付け的にでも面白い経緯があるのかと思われたが、結局、「更生したところを認めてもらうためにバトミントンで勝って見せる」というだけの理由でしかない。

メンバーの一人に元強盗仲間が新たな悪事のために接近してきて、波乱を起こすがそちらの話もお粗末極まる。結局、アル中コーチも加わって一生懸命練習したラウ・タンチームが、マカオの大会で勝ち進んでいくのだが、その間の、何のひねりも無いと言ってよい展開にはむしろ驚かされる位であり、単なるスポ根ものの不出来ななぞりでしかない。ギャグ的にも面白いと思ったのは、アル中コーチが心機一転気の持ちを表明するとき、過去の自分が「強盗・殺人・強姦…」と無数の犯罪を並べ立てて「…を、想像したが」と落とすものくらいである。「香港で大ヒット」が信じられない失敗作である。

総合評価 ②  [ 評価基準: (⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]


映画寸評「キングスマン」

2015年10月12日 21時06分26秒 | 映画寸評

「キングスマン」(2014年 英)
監督 マシュー・ボーン

ハチャメチャに見えて本格正統スパイ映画
(以下、ネタばらし有り)

007を始めとする過去のスパイ映画へのオマージュをささげつつ、ハチャメチャに見える展開をしながら、ちゃんと立派な正統的スパイ映画として成り立っているという傑作。

正義を遂行するための国際的スパイ組織「キングスマン」のエージェントであるハリー(コリン・ファース)が亡き同僚の息子エグジー(タロン・エガートン)をスカウトして、一流のスパイに育てようと過酷な訓練を始める。一方でハリーは、世界的IT富豪ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)の悪の陰謀を追求し彼らと闘っている。この2つが並行して描かれており、エグジーの訓練を通しての成長物語も新味はなくも十分見られるものではあるが、やはり前半の見どころはりゅうとした紳士ハリーの壮絶なアクションである。何と言っても協会でのスラップ・スプラッタの乱闘シーンには驚かされる。ヴァレンタインの仕掛けがあったことが後でわかるのだが、何が何だかわからない間にその場の全員がこれでもかと言うばかりに殺し合いを続けるのであり、ハリーも大勢を殺しまくって生き延びる。それを躊躇なく正面から描き切った後、ハリーがヴァレンタインにあっさり殺されるシーンのヴァレンタインの「これが映画なら…云々」のセリフも秀逸である。全編を通してこの教会の場面が最も印象的であった。

後半は訓練を終えたエグジーが、世界の滅亡ともいえる事態を招くヴァレンタインの陰謀を阻止すべく大掛かりなアクションを展開する。かなり大規模になるが、やり過ぎと思える一歩手前でうまく留まっている構成が良い。スパイアクション映画(アクション映画全般にも当てはまるが)をより面白くしようと大掛かりなものにスケールアップした結果、荒唐無稽なスーパーマン映画にしてしまう愚は過去の007でもあり、近年のミッション・インポシブルもそれに近い(余談ながらミッション・インポシブルの最新作はもう見ないことにした)。息をつかせぬ展開と共に、頭が花火のように破裂する漫画的な表現でも笑わせる。惜しむらくは、終盤の世界各地での乱闘シーンが、協会場面のような殺戮が一切ないきれいごとのような殴り合いシーンのみになっている不徹底さだ。

正に「紳士」がぴったりくるコリン・ファースがアクションを好演しており、まだ新人らしいタロン・エガートンも好印象で今後に期待が持てる。また、サミュエル・L・ジャクソンが個性的な悪役を演じているが、近年は老けて痩せたせいもあり、「パルプフィクション」のころのいかつい恐い感じからすっかり様変わりで面白い。マシュー・ボーン監督の「キックアス」は何となく面白くなさそうに思い敬遠していたが、是非とも見なければなるまい。

総合評価 ⑤  [ 評価基準: (⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]