「クローズ EXPLODE」(2013年 日)
監督 豊田利晃
「けんか映画」に夾雑物が多すぎる
高橋ヒロシの漫画を原作とする映画の3作目。古くは「けんかえれじー」などから続いて日本映画に1ジャンルをなす「けんか映画」。
悪名高い鈴蘭高校に鏑木(東出昌大)が転校して来た時、けんか勢力の頂点(てっぺん)を目指す争いは、強羅(柳楽優弥)がリードしながらも混沌としていた。そこに黒崎工業高校や、黒崎を退学し少年院帰りの藤原(永山絢斗)らがからんでくる。やがて、藤原らが高校生を敵視し、両校のけんかグループを片っ端から襲って痛めつけたことから、彼らと鏑木の対決に向けて状況が煮詰まっていく。そして藤原らのトップとしては、藤原が新たに所属した暴力団の死んだ幹部の息子である、鈴蘭の新入生加賀美(早乙女太一)がいるのだが、彼の位置づけはわかりにくい。あるいは、自分が漫画も前2作も見ていないせいなのか。東出は群れずに陰のある男を好演しており魅力的なのだが、最後に鏑木が勝つまでの、数々のけんかシーンは鏑木以外の面々のものがほとんどで、物足りない。
これらのけんか映画の魅力は、死者や重度身障者が出てもおかしくないようなけんかを、「高校生のけんか物」という枠組みの中で疑似スポーツ的に描き、けんかを通して、青春のエネルギーや根性・友情などを表現するものとしてあると思われるが、本作は変に現実の要素を絡ませた、その他の夾雑物が多すぎる。足を洗った元暴力団の健一が勤めることになった中古車販売店を、力ずくで立ち退かせようとする暴力団の話や、そこに所属した藤原のあいまいな位置づけと心情の描写など。さらに父親の死で子供の時に鏑木が預けられた児童施設の話や、半端に吐露される各高校生の家庭の事情など。また、高校生が出入りするロックのライブをやっているクラブのシーンも度々入り、無駄に冗長なものになっている。けんかや集団乱闘のシーンは、なかなかに見ごたえがあるのだか、途中で何度もだれてしまう。余談ながら、仲村トオルのデビュー作「ビーバップハイスクール」の1作目・2作目がすっきり面白かったのを思い出した。群れずにいた鏑木が最後に勝った後は、結局皆で群れて「鈴蘭の鏑木だー」と叫ぶのもしっくり来ない。
なお、映画の最後に「未成年の喫煙・飲酒は違法」「放火は犯罪」と、とってつけたように言い訳字幕が入ったが、それを言うなら全編を通して暴行罪・傷害罪のオンパレであろう。
総合評価 ② [ 評価基準(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ② 観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0 論外。物投げろ)]