goo blog サービス終了のお知らせ 

映画批評&アニメ

◆ シネマ独断寸評 ◆

基本は脚本(お話)を重視しています。
お勧めできるか否かの気持を総合評価で示しています。

映画寸評「笑う警官」

2009年12月07日 09時03分24秒 | 映画寸評

「笑う警官」(2009年 日)

  監督 角川春樹


原作のサスペンス活かせず

 

佐々木譲の同名の傑作、北海道警シリーズ第一作の映画化である。婦人警官が殺され、元同僚の警官、津久井巡査部長(宮迫博之)が容疑者とされ、道警による大掛かりな捜査が始まり射殺命令まで出される。津久井は、道警の裏金疑惑に関する道議会の百条委員会への証人としての出廷が予定されており、事件の裏にこの事が関係していると考えた所轄署の佐伯警部補(大森南朋)は道警の判断に疑問を持つ。そして、小島巡査部長(松雪泰子)などの所轄署のメンバーと共にジャズバーに集まり私的に捜査を開始する。この設定は原作通りだが、原作と異なり、あっさりと真実にたどり着いたと思うと、実はここから原作に無い裏があるという展開になる。原作でも描かれた、警官としての使命・正義と警察組織に対する忠誠との間での板ばさみになった各警官の心情か゛しつこ過ぎるくらいに語られる。そして各人がその板ばさみの中で、ころころと立場を変えたり、思いがけない裏をもっていたり、ということになる。原作をひねって観客の意表をつこうとする狙いは判らなくは無いが、明らかにやりすぎで、その結果、佐伯チームと道警の緊迫した対抗関係が無くなり、単に次々と意外な事実が現れてくるだけになっている。


津久井の百条委員会への登場シーンの核心の仕掛けは原作通りで良いのだが、狙撃者の設定など逆効果となっている。またバーのマスターの描き方はストーリー全体から完全に浮いてしまっている。そして最後に、物語りが終わったあとの、死者も含めた登場人物が集まったジャズ演奏シーンは、全くの蛇足であり、観客に対して「今までのことは単なるお芝居だったんですよ」と言っているようなものである。

 

総合評価  [評価基準:(⑥まれにみる大傑作)⑤傑作 ④かなり面白い ③十分観られる ②観ても良いがあまり面白くはない ①金返せ (0論外。物投げろ)]