「(再来年の)共通一次というものを受けてみたいのです」
会社の上司と専務の前でそう告げたのは1988年10月頃であったと思う。
簡単にいえば、当時「『管理監督業務』をしていた私は勉強時間確保のために、たいてい17時半ごろには退社できていた『現場作業』をやらせて欲しい」と考えたのであった。
だが、社長は「それならなおさら『管理監督業務』を続けたほうが、体力的な負担が無くて良い。早く帰れるように応援するから」と答えた。
幸運なことに社長も働きながら学士入学をした経験があり、「勉強したい」という欲求についての理解があった。
「『共通一次(大学共通第1次学力試験)』は翌1989年1月で終わりになり、『大学入試センター試験』に変わったので、受けたくても受けられないのでは?」とツッコんだ方は意地悪・・・。
結局はその『大学入試センター試験』を受けずに、中学1年の頃に夢見た某私大の2つの学部で3回試験を受けたが、すべて敗退であった。
もっとも受かったところで、授業料を払っていける目途もなかった。
それに気づき、2回目と3回目は某夜間学部の前期と後期の試験を受けていたけれども。
暗い気持ちで迎えた1990年の春、気持ちを切り替えて専門以外の資格に手を出してみたものの、気持ちは落ち着かず勉強どころではなかった。
それでも、1年数か月間もの間、会社に気を使って夜早く帰れるようにしていただいたことを考えると、リベンジしたくてもできなかった。
まあ、なんだかんだいっても後に私は見事その大学の二部に入学することができ、今につながっている。
当時所属していた会社の応援がなければ今の私もない。
大学で勉強したくてもできない方は多い。
お金がなければ勉強もできないのであるから。
私の妹たちもそうであった。
その反面、私の親族の中にも奨学金を借りて、希望する私学の高校に通った輩もいる。
おまけにちゃっかりと超有名企業グループの某社に就職している。
奨学金を返しながら、私も羨望のかっちょええお車に乗り、バイクも持っていたりするのであるから、実にしっかりとした人生設計をしていたことになる。
(もっとも仕事は大変だとは思うし、ずっとそこにいるかどうかはわからないけれども。)
そのように、お金がないからと諦めない方も多い。
とはいえ、多くの方々は奨学金返済で苦労するのである。
つまり、大学に行く方々のすべてが裕福なうちに生まれ育ったわけでもないということ。
さて、私は幸運にも働きながらではあるが大学を卒業できた。
当時のクラスメートにも社会人学生はけっこういた。
また、私の交友関係にも、社会人になってから大学に入った方もけっこういる。
さらには日本語教育の恩師に当たる方々も働きながら大学院に通っていたのである。
しかし、すべての方が奨学金を利用したり、社会人学生を選んだりできるわけでもない。
文科省が昨年2022年12月に発表した大学進学率は56.6%であるし、東京都教育委員会が2022年7月に発表した高校進学率は98.53%となっている。
中学や高校を卒業して社会に出たほうが良い世界もあるし、別に行きたくもないのに行く必要もないと個人的には思っている。
それでも(本人に高校や大学への燃えるような進学の意思があるか否かはともかくとして)勉強したい方はこれだけいるのである。
そんなことをあれこれ考えた『大学入試共通テスト』の2日目となる日曜日であった。
考えただけで、何がどうという分析結果を出したわけでもない。
ただ、「当時21歳の私が夢見た大学入試の共通テストは良い方向に進んでいるといいな・・・」という想いがある。