島のまにまに~インドネシアの小径~

海洋国インドネシアのあちこちでで出会う、美しい村、美しいもの。自然とつながる暮らし。

バトゥのママの手料理 ナシ・プチル

2012-07-26 | 食べもの

ジャワ島バトゥのリゾート地、ブミアジの朝。
屋台の周りにおじさんたちが群がっていた。行って見たいけれど、おじさんの砦がものものしくて近づき難い。立って待っている人やら、舗道の端に腰掛けて食べている人やら。
散歩の帰りに、勇気を出して近づいてみたら、きびご飯が見えた。

要はナシチャンプルー、ご飯の上にいろいろなおかずを載せる料理の屋台だ。
普通のナシチャンプルーは、客が好きなおかずを選んで載せてもらうのだけど、ここは奥さんがフルコースですべて盛り付ける。メニューはその1種類だけ。屋台にはいろいろ書いてあるけど、飲み物も一切売っていない。

そのおかずが、鶏や牛肉や魚や卵のから揚げなんて一切なくて、モヤシと青菜、厚揚げ、テンペ(大豆を発酵させて板状にしたもの)、おせんべいのような天ぷら、大豆加工品が入った赤いスープなど、植物性のものばかり。わずかに、煮干ぐらいの大きさの小アジのようなから揚げが1皿当たり2、3匹入る。
それがどれも本当においしそうだ。
まず、炊飯器をあけてきびご飯をお皿に盛る。その上に、野菜やテンペを載せていく。2、3種載せたところで完成かと思ったら、これでもかこれでもかと、次々におかずを追加していくのだ。赤いスープを少し載せたところでやっと終わったと思ったら、最後にゴマだれみたいなものが入った。
これで終わりだと思ったら、おせんべが3種類ぐらい載った。
丸い黄色いおせんべ状の揚げ物は実際テンプラと呼ばれていて、この町の食事には必ず載ってくる。
おかずだけでもこんなに魅力的なのに、ご飯がきびご飯ときてるんだから、私としては、ありえないほど嬉しい。

30歳にならないような若い女主人は、手際よく盛り付けていく。テイクアウトのお客さんが多く、蝋引き紙にきれいに盛って包む。そしてその屋台の清潔さは感動的だった。お鍋の周りに食べものが飛び散っていたりせず、どこもかしこもピカピカだ。まるで日本みたいに潔癖なきれいさ。女主人が1食作るたびに台拭きでぬぐっていた。

朝早くからやっているこの屋台だけど、これらのおかずは全部、彼女が家で作ってくるのだという。こんなにきちんと作ったものを、こんなに心をこめてお客さんに出している、というのが伝わってきた。ナシ・プチルというのだという。バトゥあたりで日ごろ食べているものなのだそうだ。
自分の持っている技を生かして一生懸命商売している姿には、心打たれる。その勇気と熱意とかいがいしさ。もっと良くなりたいという思い。創意工夫。すべて私の尊敬する要素だ。

もちろん、私も食べてみた。
味もほんとにおいしい。清潔なだけでおいしく感じるけど、野菜いっぱいで文句のつけようがない。
これで5000ルピア(45円)。普通のナシチャンプルーでも肉を入れなければそれぐらいだけど、これは本当にお値打ち。なんというか、ナシチャンプルー食堂では、どことなく荒っぽさや投げやりさを感じてしまうのだけど、彼女のナシプチルはすみずみまで丁寧で繊細だった。
私もブミアジの住人だったら、何度でも食べたい。取り巻いているおじさんたちも、きっと楽しみにしているのだろう。
でも朝からこんなおいしいものを食べたら、それで一日終わった気分になりそう。

ブミアジは、このナシプチルに限らず、食べものがおいしい町だと思った。町の人がそれだけ高いレベルのものを求めているのかもしれないし、物事に対する丁寧さがあるようにどことなく感じられた。

 
 
 


◆このブログ気に入ったらクリックを!ほかのブログも見られます→にほんブログ村へ



この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 穀物としてのとうもろこし | トップ | うなぎ »
最新の画像もっと見る

食べもの」カテゴリの最新記事

  • RSS2.0