いまはむかし、モロコシ取の翁といふものありけり。
野山なるモロコシをとりてよろづの事につかひけり。
名をば、さるきのみやつこといひける。
そのモロコシ畑の中に、もとひかるモロコシ、一筋あり。
あやしがりて、よりて見るに、皮の中ひかりたり。
それをみれば、三寸ばかりなる人、
いとうつくしうてゐたり。
翁いふやう、
「我あさごとゆふべに、見るたけの中におはするにて知りぬ。
子になり給べき人なんめり」
とて、手にいれて、家にもてきぬ。
妻の女にあづけて、やしなはす。
うつしきことかぎりなし。
いと幼なければ、籠にいれてやしなう。
もろこし取りの翁、なをモロコシをとるに、
この子を見つけてのち、とるモロコシに、
節をへだてて、ことにこかねあるモロコシ見つくる事かさなりぬ。