フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会
(Chiesa di Santa Maria Novella)と
ヴィーニャ・ヌオーヴァ通り
(Via della Vigna Nuova)の
ルッチェライ宮殿(Palazzo Ruccelai)の中間辺りにある
旧サン・パンクラツィオ教会(ex Chiesa di San Pancrazio)。
古文書などでは931年建設とも
シャルル・マーニュ大帝
(Carlo Magno:カルロ・マーニョ)による建設ともいわれる
古い教会ですが、
早い時期に神聖性を取り除かれ、
さまざまな用途を経て
現在はマリノ・マリーニ美術館
(Museo Marino Marini)となっています。
この教会の一部のみ未だ神聖性が取り除かれることなく
聖なる場として保管されているのですが、
それがルッチェライ礼拝堂(Cappella Ruccelai)です。
ここにジョヴァンニ・パオロ・ルッチェライ
(Giovanni Paolo Ruccellai)が永眠する墓碑があり、
それがサン・セポルクロの小神殿
(Tempietto di San Sepolcro)。
ジョヴァンニの友人であり、
インテリ仲間でもあったレオン・バッティスタ・アルベルティ
(Leon Battista Alberti)が依頼を受けて
サンタ・マリア・ノヴェッラ地区で手がけた
最後の作品になります。
ルッチェライ家の宮殿に最も近い教会
(サン・パンクラツィオ教会)に設置するするために、
1457年に着工し1467年に完成、
ジョヴァンニが亡くなったのは1481年です。
エルサレムにあるイエスキリストの聖墳墓の
縮小サイズで作られ
よくバランスの取れた美しい古典様式の建築物です。
コリント様式の柱で支えられた長方形の建物の外壁は
白と緑の大理石を駆使して生み出された
30枚のパネルで飾られていますが、
この幾何学模様すべてが異なる模様となっています。
幾何学模様に混じって、四面各面にひとつづつ
幾何学模様ではないエンブレムも組み込まれています。
当事の主要人物に関わるエンブレムです。
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の
正面ファサードにもあしらわれている
「風をはらむ帆」はジョヴァンニ・ルッチェライのエンブレム。
他には花冠から3本の羽毛が出ている
コジモ・イル・ヴェッキオ(Cosimo il Vecchio)のエンブレム、
ダイヤの指輪に2本の羽毛の
ピエロ・デ・メディチ(Piero de' Medici)のエンブレム、
そして3つのダイヤモンドリングを組み合わせた
ロレンツォ・イル・マニフィコ(Lorenzo il Magnifico)のエンブレム。
小さな入り口から内部に入ることもでき、
石棺の上には
「横たわるイエスキリスト」の彫刻が置かれています。
小神殿の内部はピエロ・デッラ・フランチェスカ
(Piero della Francesca)の弟子であった
Giovanni da Piamonte(ジョヴァンニ・ダ・ピアモンテ)による
2枚のフレスコ画
(「死せるキリスト」と「キリスト復活」)で飾られています。
数年前までは
日時限定でも一応一般公開されていましたが、
現在は経費削減による人員不足で
一般には公開されておらず、
興味がある人は
近くのサンタ・トリニタ修道院
(Convento di Santa Trinita)の修道士にお願いして、
彼らの時間があれば案内してもらえることになっています。
ただし、最近になって文化省の介入もあり
フィレンツェ司教区会とマリノ・マリーニ美術館が同意し
同美術館内から隣接する礼拝堂へアクセスできるように
入り口を整えるという案が浮上しています。
これが実現すれば、
近代芸術とルネッサンス建築を同時に鑑賞できる
不思議な空間が成立することになります。
まだ時間はかかりそうですが
頓挫することなく実現することを願って。