ドナテッロ作の聖ジョルジョ像は
フィレンツェのオルサンミケーレ教会の壁がんを飾る
フィレンツェ職業組合の守護聖人14体の彫刻群のひとつ。
聖ジョルジョは甲冑・刀剣組合から依頼されたもので、
製作年は1415年から1417年といわれています。
トスカーナ北西部に連なる
アプアーノ山脈から切り出した白大理石で
高さは209センチメートル。
もともとはオルサンミケーレの壁に置かれていましたが、
1891年からMuseo nazionale del Bargello
(バルジェッロ美術館)所蔵となり、
オルサンミケーレにはブロンズ複製が置かれていましたが、
こちらも2008年に大理石の複製に置き換えられています。
彫りあがってまもなくから高い評価を受け、
オルサンミケーレの職人組合彫刻群の中で
最高の出来とも言われ、
もちろんドナテッロの代表作としてもよく知られています。
そのような作品であったため、歴史的にも丁重に扱われてきました。
もともと北西側の壁がんに置かれましたが、
この部分の柱には内部の螺旋階段が設置されているため
他の壁がんに比べて十分なスペースをとることができず、
奥行きが浅かったのです。
そのためはみ出した彫刻が汚れてしまうこともよくあり
後にもう少し奥行きのある壁がんに移動され、
さらに1628年には教会内に移動されています。
そして1858年に石が当たって鼻が欠けてしまったことをきっかけに
1891年にバルジェッロ美術館に映され、
現在もそちらに展示されています。
1976年には彫刻の下につけられていたレリーフも
バルジェッロに移管。
聖ジョルジョは兵人聖人であったので、
甲冑・刀剣組合の守護聖人として選ばれたわけですが、
両足を大きく開き安定感があり、
十字架を掲げる盾を前に置き
胸を張ってきりっとした表情で描かれています。
オリジナルの壁がん(北西)におかれた状態で
頭を少し左に向けているのは
当時のフィレンツェの強敵であった
ルッカ、さらにはミラノの方角に
睨みをきかせるためだったようです。
バルジェッロには壁がんごと展示されています。
聖ジョルジョの上の「祝福の神(Dio padre benedicente)」、
下の「ドラゴンと闘う聖ジョルジョ
(San Giorgio che uccide il drago)」
のレリーフもドナテッロの作品。
下から見上げることも考慮して彫り上げられた作品で
光と影によって強調される表情はエレガントでありながら強く
完璧といわれるのも納得できるような凛々しさを湛えています。
Museo nazionale del Bargello
開館時間:月曜日から日曜日 8:15-17:00
休館日:毎月第1・3・5日曜日、毎月第2・4月曜日、
1月1日、5月1日、12月25日
入場料:4,00ユーロ