ツレヅレグサ

雑記と愚痴と、時々小説

Nightmare City Another Story(3)

2006-05-05 22:19:25 | 小説
       ***BGM:403「Braze of life」***

原作:みーや様「Nightmare City」「Nightmare City Catastrophy」

         Nightmare City Another Story

   第三話『抵抗』

 前回のあらすじ・・・
ネットワーク上に存在する街「Nightmare City」。
そこのとある工場で働いていたaaaとギコは、管理人の計画の一片を見てしまった。
ギコは恋人のしぃとともに逃亡する事を決意したが、管理人はそれを許そうとはしなかった。
彼は自らの分身であるダークモララーを生み出し、ギコの捕獲と計画の実行を命じた。
次々と追跡を始めるAAたち。そして巻き起こるいくつもの戦い。
そしてaaaはギコを援護するため、ダークに戦いを挑んだ。
果たしてギコたちは逃げる事が出来るのか?そしてaaaの運命はいかに?

 俺はダークと対峙した。ダークの剣は血の色に輝き、不気味さをかもし出していた。
「どうした。怖気づいたか」
「そんなわけないだろ。いくぜ!」
俺はそう言って刀の仕掛けを作動させた。その瞬間、刀身を青い炎が包みこんだ。
「!?」
「見たか。これが俺の力だ!」
俺は刀をヤツめがけて振り下ろした。それと同時に、炎がヤツに向かって一直線に飛んでいった。
まるで低空を飛ぶツバメのように飛んでいく。これが、海燕の名の由来だ。
ダークは剣で俺の攻撃を防ぎ、俺に向かってそのまま斬りかかった。おそい。
俺はヤツの剣を受け止め、なぎ払った。しかしすぐにヤツは体勢を立て直した。
「なるほど。お前は使えそうな人材だな」
ヤツはそう言って、何かを投げつけた。それは俺の片方の耳に刺さった。
「なんだ?」
 俺は耳に手を当てた。そこには何か機械のようなものがついている。
「AAの遠隔制御装置だ。これでお前もわれわれの仲間となるのだ」
ヤツは笑みを浮かべて言った。その瞬間、俺は足の力が抜けた。
床の上にひざをついた俺を見て、ヤツは勝ち誇ったように笑っていた。
チクショウ。そう思ったとき、俺はいい方法を思いついた。
そうだ、こんなものぶっ壊せばいいじゃないか。俺は刀を握る手に力を入れた。
そして機械のついた耳のあたりに向かって、刀を振った。ビンゴ。
機械は俺の片耳の半分とともに、床に落ちた。さっきまでの足の脱力はなくなっていた。
「そこまでして抵抗するというのか・・・。ふん。
 いいだろう。お前がそのつもりならこっちもそれなりにやってやろうじゃないか」
ヤツは剣を構えた。俺も立ち上がって再び剣を構えた。
「いくぞ」
ダークはそう言って俺に斬りかかった。俺もヤツに斬りかかった。
ぶつかり合う刃が火花を散らす。今のところは互角だ。
だが、いきなりヤツが消えた。俺は押えを失ってバランスを崩した。
「瞬間移動だと?」
俺は思わず口に出していた。この世界はネット空間だから、どんな非科学的な事でも可能に出来るのだ。
そして、ヤツは俺の背後に現れた。俺はとっさに刀で攻撃を防いだが、ヤツに弾き飛ばされた。
「所詮はわれわれに勝てるような奴ではなかったか」
「くそっ!」
俺に向かって伸びる斬撃をかわす事は出来なかった。俺は背中を斬られながら、ビルの外に放り出された。
「・・・さて、逃亡者を討ちにいくか・・・」
俺はこんなところで死ぬのか?俺もそのときはそう思った。下へと落ちていく状況の中で、俺は意識を失った。

 ・・・。

 どれくらい時間がたったのかわからない。
気づいたら、俺は耳に包帯を巻かれてベッドに横たわっていた。どうやら病院・・・ではないらしい。
俺は上体を起こし、背中に痛みを感じた。だが痛みの度合いからすると、それほど深くはなかったようだった。
そのとき、部屋に誰かが入ってきた。敵か!?俺は身構えた。
「起きたんですか、aaa氏。私が思っていたより早い回復ですね」
その学者風の話しかたをする奴はこの街に一人しかいない。
「教授!?無事だったのか?」
「ええ、何とか」
その後から毒男が二匹部屋に入ってきた。おなじみの『マンドクセ』顔をしていた。
「彼らが窓の外を見ていたときにあなたが落ちるのを見つけたんですよ」
と教授は俺に説明した。まさに偶然に救われたというわけだ。
「ここは私の研究所なので何でも置いてあるんですよ。もちろん武器とかもね」
「で、ここに篭城してるってわけか?」
「その通り。とりあえずシステムの使いになっていないAAたちが集まってるの  で、当分戦力はもつでしょう」
話を聞いているうちに、頭がはっきりしてきた。と同時に大事な事を思い出した。
「教授、ギコがどうなったか知らないか?」
「そうですね・・・、あ、そういえばAAの一人が彼が湾岸沿いの道を走ってるのを見たそうです」
それだけで十分だ。俺はベッドから出ると、教授にエアバイクを借りた。
「つかまってなきゃいいが・・・、間に合ってくれ!」
俺は祈るような気持ちで湾岸沿いへと向かった。

 それとちょうど同じ頃。
ギコとしぃは街の名物であるサンライズブリッジに差し掛かっていた。
「ギコ、ここを越えれば出口よ」
しぃがギコを励ました。2人は車一台通らない橋を必死で走っていた。
しかしその橋脚の上にはダークモララーが待ち構えている事に気づいていない。
「見つけたぞ・・・」
ダークは残酷な笑みを浮かべた。
ギコとしぃは橋脚の下を通り抜け、後半分で向こう側というところまで来た。
そのとき、ダークが二人のほうに向かって飛び降りた。
そして着地の寸前に斬撃を飛ばし、衝撃をやわらげた。
それによって半径6メーターほどがクレーターのようになった。
「なんだ・・・?」
ギコはダークのほうを見て、そう思った。
「おろかな逃亡者よ。われわれからは決して逃れる事は出来ないというのに」
 ダークが剣を構えながら笑った。それはまた残酷さをあらわにした笑いかただった。
「さあ選べ。ここで愚か者として死ぬか、われわれに従うか」
「そんなの決まってるだろ。お前を倒して先に進む」
「愚か者め。私の能力の前に跪け!」
ダークがギコに向かって斬りかかった。ギコはしぃをかばうように地に伏せる。
刃が彼らの頭上の空間を切り裂いた。
「くそっ!」
ギコは先ほどぶった切られた交通標識を取ると、長刀のように構えた。
「ここで負けるわけにはいかないんだっ!」
ダークが再び剣を構えた。再び斬撃が襲う。ギコは標識でダークの刃を受け止めた。
「ほう・・・」
ダークが笑いながら標識をぶった切った。先の看板がなくなった標識を、ギコは槍のように構えた。
「なかなかがんばるな・・・」
ダークとギコが跳躍し、橋脚の上に乗った。ここから落ちれば命はないだろう。
「さあ、これで終わりにしようじゃないか」
ダークが斬りかかった。ギコが突こうとした。ぶつかり合う2つの刃。しかし、真剣の前にギコは敗れ去った。
落ちていくギコ。しぃが悲鳴を上げる。
「ギコおおおおおおお!!!」
「結局はザコだったか」
ダークは彼の血の付いた剣をしまうと、下に飛び降りた。
「さて、ヤツは死んだ。残るはしぃ、お前だけだ」

 水が冷たい。ギコはそう思った。もうもがくだけの気力は既になかった。
彼はしぃと水遊びしたことを思い出した。いまさら思い出すなんて。
彼の体と意識は、徐々に暗い水底に沈んでいこうとしていた。
 そのとき。
「それが望んだ結末か?」
どこからか声が聞こえた。その瞬間、ギコは実験の映像を思い出した。
「お前の望んでいたのは、こんな結末だったか?」
いや、違う。俺は絶対しぃを守るって決めたんだ。だから
「ならば、お前に力を授けよう。いや、お前の持っている力に気づかせるという方が正しい」
俺の力?ギコは目を開けた。
「お前の力。それは」
その瞬間、ギコは一気に上昇した。

 しぃはあとずさった。ダークは笑いながら彼女を見つめている。
「そんなに逃げる事はないだろう、試験体001α」
「うそよ、そんなの!」
「お前はわれわれと同じ、デバイスに縛られた存在なんだ。君が逃げる事は不可能だよ」
「・・・」
「君もわれわれとともに歩む事が一番幸せじゃないのか?」
 そのとき、大きな水柱があがった。
そして現れたのはギコ。
「ち、まだ生きていたか」
ダークが剣を再び展開した。そしてギコの手にも、水のような剣が現れる。
「何?まさか貴様も能力を持っていたのか」
「よくわからないけど、お前だけは許さない!」
再びぶつかり合う刃。しかし、今度はギコのほうが優勢だった。
ギコにはじき飛ばされ、ダークは何とかバランスを保った。
「くそっ。さっきよりも強くなってるじゃないか」
ダークがそう思ったとき、ギコが斬りかかった。
「うおおおおおおおおお!!!!」
バシュッ。防ごうとしたダークのわき腹が切れた。血が地面にたれる。
「くっ・・・。ここはいったん退くか」
そして、彼は一瞬のうちに消えた。
そのとき、ちょうど俺のエアバイクが上空に到着した。結構激しくやったようだが、二人とも無事だった。

  次回予告

とりあえずは逃げ切ったギコたち。
しかし運命に縛られたしぃは街に残る事を決意する。
引き裂かれる運命の中で、ギコはどうするのか?
次回『決別』
悲しき運命を打ち砕け、しぃ!!


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