今まで読んできたワークショップの本で、一番厚く、読むのに3,4日かかってしまいました。精読に分類したので、読み通しました。歯ごたえ、読みごたえともに十分です。ワークショップ(プロセスを大事にする、必ずしもアウトプットは望まないタイプに分類する方)の評価が書いてあるほか、ワークショップに関する38の質問に丁寧に回答が書かれているのが、とてもお勧めです。
「このワークショップどれくらい準備したの?」と聞かれたら「all my life」と答えたい
「DW」は何の略と聞かれたら「Dream Weaver」よりも「Document Wall」といえるようになりたい
と思いました。
以下、抜粋■
ワークショップとは
・「参加型グループ学習」といい、一般的には学習の方法
・学びが人の序列化の装置になってしまっている状態から、学びを救い出し、学びの喜びという原点に立ち返らせる可能性がある
・関係性のデザイン(伊藤俊治氏 2003)の中では、ワークショップを「多様性な差異をどう自覚し、どう活性化し、どう編集していくのかの鍛錬の場」とし、希薄な日常に差異を生じさせ、かき混ぜ、集団全体の生命力を回復することの必要性を問いかけている
・ワークショップとは特定の部分的な問題解決を図っているようにみえて、実は「全体に配慮し/された学び」で、いわば「総合性の高い学習なのではないかと考えた
・ワークショップに参加した子供たちは自ら学び、表現する中で、その能力を伸ばすだけでなく、相互に学びあい、認め合う中で自己表現していきます。「学習者が知識を蓄積するだけではなく、社会や文化などに埋め込まれた学習を再構成する」社会文化的な学びの体験
・「つくって、かたって、ふりかえる」の、つくったものをナラティブに語ること、そして自分の体験を一度客観的に振り返り、客観的に見直すこと、それが次の創造、明日の私を作っていく
・広石英紀(2005)は「参加・協同型学習として、「意味生成の自由な学び」として定義し、その特徴として参加・体験・相互作用をあげている。ワークショップの学びは、参加者によって生起する相互作用=互いの違いが想像力を生むことを大切にするので、参加者によって常に変動し、あらかじめ学びのデザインを完全に記述しておくことは不可能で、参加者自身が能動的に意味づけを行いながら、学び自体を作っていく学び
・加藤、堀(2008)ビジネス分野では、会議や研修を能動的に進める手法としてワークショップを活用・「多様な人たちが主体的に参加し、チームの相互作用を通じて新しい創造と学習を生み出す場」として定義
・「生きることにリアルさ」「体験重視」「双方向的コミュニケーション」「創造性の探究」
・学習という活動を教員から学生への一方通行的な知識伝達ではなく、日常様々な活動における道具や他者との対話的な相互行為を通じて、学習者の考え方や振る舞い方が変化していく長期継続的なプロセスとみなす
・状況的学習論では、たとえ教員の意に反する結果となったとしても、学習者自身が主体的に変容していくこと自体が重要
ワークショップ企画の3つの出発点
- 人との出会い
- ものとの出会い
- テーマの醸成
創造的活動マップ
- 縦軸:可能性の軸 対象を知る/対象の可能性を感じる/対象の可能性を実現する
- 横軸:抽象度の軸 身体/心/頭
異文化連携の3段階モデル
- 始動フェーズ 始まりのデザイン
- 多様化フェーズ 継続のデザイン
- 意味づけフェーズ 発見のデザイン
TKFモデル
- 「つくる」 表現する
- 「かたって」 他者との相互交渉の中で自分の作ったイメージを説明しつつ、吟味する
- 「ふりかえる」 行為の後の省察
イタリアンミールモデル
- アンティパスト
- プリモ
- セコンド
- ドルチェタイム
- プリモ
- エスプレッソ
ワークショップで注意すること
ワークショップは、新しい自分を発見したり、何か今までの自分を変えようと思ってやってくる無防備な人に、「協同や表現」は利用の仕方によっては、自己の内面を傷つける可能性があることに注意を向ける
ワークショップデザインの流れ
- 条件の整理
- コンセプトメイキング (コンセプト→モチーフ・アイテム)
- WS詳細のデザイン
ワークショップの4要素
- 活動 a.企画の心構え b.準備
- 人 c.参加者 d.組織と役割 e.チームで共有する
- 空間 f.活動のランドスケープ
- 道具 g.マニュアル
ドキュメントウォールにかかれるもの
- 準備
- ワークショップ実施中
- 終了後の振り返り
リフレクションムービーの撮影者に求められる視点
- 全体を眺める視点
- メタ視点
- 近接視点
ワークショップのレポート
- 経験のパッケージング
- プロセスの中にある光を捉える
- 目的を明確にする
- 緩やかに構成をイメージする
- スタッフの認識の共有化
- レポート素材の収集と記録
- メディアを吟味する
ワークショップを評価する観点
- 目的と方法の適合性 : ワークショップのねらいと方法がうまく合っていたかどうか
- 活動のプロセスの力動性 : 参加者がねらいを理解し、十分楽しんでいたかどうか
- 参加者同士の相互作用性 : 参加者同士の関わり、コミュニケーションが十分高められたかどうか
- 感覚・身体による積極的関与性 : 体験性の観点から、感覚・身体を十分活かすものであったかどうか
- 参加者の活動全体に対する満足度 : 活動終了後に満足度が高まり、リピーター意欲につながったかどうか
- 企画自体の社会的貢献性 : 社会的にもモデル化できるようなものであるかどうか
ファシリテータとは
・お節介のレベルのバランスを考えていくこと
・ともに取り組む姿勢が大切。参加者と同じ立場に立って、活動に参加していくという意識
・ファシリテータ同士もカバーしあうことが大切
・ファシリテータが意識していきたいこと ・人と出会い、仲間を作ることについて、基本的に前向きだったり、自分にとって必要と考えていたりする。何か面白いことに常に興味を持っている人
- 答えは君(参加者)の中にある
- (参加者や主催者の立場に)なってみる
- 伝えたことより、伝わったこと
社会教育 で述べられている特徴
- ワークショップに先生はいない
- お客さんでいることはできない
- 初めから決まった答えなどない
- 頭が動き、心も動く
- 交流と笑いがある
ワークショップの分類 中野:2001
http://blog.goo.ne.jp/aki-nagi-kae/e/89f6325e9a3620f4a264e1b3f6830217
- アート系
- まちづくり系
- 社会変革系
- 自然・環境系
- 教育・学習系
- 精神世界系
- 統合系
ワークショップの分類 中西:2006
- 自己啓発系
- 身体開放系・身体表現系
- 社会的合意形成系
- 想像力開発系
ワークショップの分類 堀・加藤:2008
http://book.akahoshitakuya.com/b/4532314038
- 組織の問題解決や発展を目的とした組織系
- 社会が抱える課題について考える社会系
- 個人の教育、学習、成長と目的とした人間系
- これらの3つを合わせた複合型
ワークショップの歴史
・ジョン・デューイ 1859-1952
:(1)理論化、(2)実践、(3)観察、(4)反省を指摘しながら、よりよいものを求めていく反省的思考
・1960年代 ハルプリン
:RSVPサイクル Taking Part Process Workshop
(1)資源 resources
(2)スコア score
(3)価値評価 Valueaction
(4)実行 performance
レッジョエミリア
「文化的意味を生成し与えられる空間」としてのアトリエ
- 全体としての柔軟性
- 関係性
- 浸透性
- 多感覚性
- 操作可能性
- 共同体
- 生成
- 物語
- 豊かな規則性