読書の森

A.デュマ『モンテクリスト伯』



最近テレビドラマとなった、アレクサンドルデュマの名作『モンテクリスト伯』の人気は未だ衰えてないようだ。
復讐劇と言っても陰湿な印象も受けず、スリリングで豪華な不思議な小説だ。

善意の若者エドモンダンテスが、他の者の嫉妬と保身から、有りもしない罪を着せられる。
それだけでない。
親とも恋人とも引き離され、絶海の孤島の暗い牢獄で獣のように閉じ込められる。

不潔で狭く暗い岩牢、僅かで貧弱な食事、
薄い寝具、その他に何もない。
そこに20歳から34歳まで、騙されて放り込まれてしまった。。
前途も真っ暗、愛しい人とも離れ離れ、ここに堕とした相手を憎まずにはいられないだろう。

同じく無実の罪で牢獄に入れられた博識の神父と出会い、ダンテスは人間として成長していく。
そしてここから物語は密度の濃い目の離せないものになる。
神父の死、死体とすり替わる脱獄、洞窟の莫大な宝の発見、ダンテスの変身、ドラマティック過ぎる展開だ。

貴族に成りすましたダンテスは、非常に冷静に計画的に復讐劇を成し遂げていく。

復讐の後に残るのは苦い悔恨でなく、明るい未来への船出で、ダンテスは若い恋人と共に大洋の旅に臨む。
この復讐は明らかに犯罪であるが、許されるかなと思ってしまう。



豪華で大胆な復讐劇は、しばしば人を殺す事の残酷さまで消してしまうようだ。

私たちの心の中には、多かれ少なかれ自分を傷つけた人や貶めた人に対する憎悪の感情がある。
不当だ、許せない、いや理不尽だ、と思っても直接行動に出る訳には絶対いかない。

そんな時にフィクションの中に胸のすくような復讐劇があるとスカッとする。

フィクションの世界で遊ぶ楽しみが、憎しみを癒してくれると思う。




さて『モンテクリスト伯』の場合もそうだが、彼は被害者だった。
理不尽な目に遭ったのである。

今の世の中、理不尽な目に遭いながら、悪い事をしたと世間に見られる人間は結構多いのではないかと思う。
さぞかし口惜しい思いをしているだろう。

そこでモンテクリスト伯に習う事はただ一つである。
諦めない、冷静でいよう、心と身体を大切にしよう。
状況や周囲はいつまでも同じではない。
小説みたいな復讐なんて、出来ないけれど時が解決してくれる事がきっとあるから。

読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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