緑のカーテンとゴルわんこ

愛犬ラム(ゴールデンレトリバー)との日々のあれこれと自然や植物、
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穿越(せんえつ)小説って?

2016年02月06日 | ドラマ

日経新聞夕刊に「プロムナード」というコラム欄があります。毎日持ち回りでいろいろな方が書いているのですが、面白い内容のものが多く、私はよく読んでいます。

2月5日夕刊には、社会学者の難波巧士という方が「田植小説って、何だ?」というタイトルで書いています。

筆者はこの時期は大学の指導教員として卒論や修士論文の審査をしているので、たくさんの論文を読み口頭試問を行ったりしているとのことで、その修士論文のなかに「穿越小説」をテーマにしているものがあったそうです。「穿越小説」とは、中国でタイムスリップ物のことをいい、ここ十数年来若い女性を中心に人気になっている小説のジャンルのことだそうです。穿越時空、現代の若い女性が時を超えて過去にタイムスリップをして有名な歴史のただなかに入り、そこで歴史上の人物と恋愛をしたり争いに巻き込まれたり、現代の知識を生かして成功したりしていく内容の小説が多数書かれているそうです。

最初の頃の穿越小説はいろいろな王朝が舞台で、特に清の時代の王族とのラブ・ロマンスものが多かったのですが、どんどん舞台がひろがり宮廷以外に大家族内の争いに巻き込まれる「宅闘系小説」や農家の娘に生まれ変わる「田植小説」などいろいろなジャンルが生まれているそうです。タイムスリップして農家のむすめになり、いろいろな出来事にあうってていったいどんなタイムスリップ物になっているのでしょうか?まさに「田植小説って、何だ?」ですね。

あまりの人気ぶりに数年前に中国政府から歴史を歪曲するとして禁止令が出たとか、そのせいで「田植小説」などが出てきたのでしょうか?かの国では「上に政策有れば、下に対策有り」のお国柄だとのことで、国からのお達しなどにはめげない人々の工夫があれこれあるようです。

私が以前見ていた中国ドラマ「宮廷女官若㬢(じゃくぎ)」(原題「歩歩驚心」)がまさにそうした穿越小説をドラマ化したもので、清王朝の康熙帝の時代に現代女性がタイムスリップして、歴史上有名な壮絶な後継者争いの渦中に巻き込まれていく話でした。

康熙帝の十何人もいる皇子のなかで誰が次代の王となるか、現代からタイムスリップした主人公は歴史上のできごととして結末を知っているのですが、それを誰にも告げることはできず、しかも自分自身がその政争のただなかで皇子たちとの恋愛に翻弄されていくドラマで、ハラハラドキドキの面白い内容でした。

原作本も大評判になりベストセラーになり、ドラマはそれこそメガヒットで日本の私たちやいろいろな国々で多くのファンを掴んだようです。

タイムスリップする話は以前からいろいろ面白いものがあります。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「仁」、「ドラえもん」だってそうですね。ロマンチックなものでは「ある日どこかで」というラムパパご贔屓のアメリカ映画もあり、数多くの小説、映画、ドラマに取り上げられている一大ジャンルです。

今現在の中国の若い女性の心を捉えているタイムスリップ小説、その流行にいったいどのような社会的な背景があるのかを探るのが論文の主旨らしく、社会の表層だけを捉えるのではなく、その底にある人々の心理や背景を研究していく学問なのでしょう。

そうした学問を学んでいる人たちには、今盛んに騒がれている芸能スキャンダルなどはどのように捉えられ分析されるのでしょう。日経のコラム欄の最後には、卒業していく学生たちが卒論や修士論文で苦しんだ経験が社会に出てからの長い人生のどこかで生きてくるだろうと書かれていて、さらに今年の学生たちは卒論提出の期限間際に「離婚届、もう出した?」とLINEで連絡しあっていたともありました。件の芸能スキャンダルで「離婚届」のことを「卒論」と言い換えていたことを逆輸入して使っているのですね。

社会に出てからも大学や学問との縁を切らずにいてほしいという筆者の願いがこの猥雑な日常の中で叶うのはなかなか難しいでしょうが、一歩引いた地点や深い観点から社会や出来事を見ていくスキルは人として大事なことのように思えます。

 


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