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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

ボッティチェリ展・東京都美術館

2016年03月31日 | 【美術鑑賞・イベント】

東京アート旅の最終回は、東京都美術館で4月3日まで開催の「ボッティチェリ展」です。

近年、イタリア・ルネサンス絵画の人気ともにサンドロ・ボッティチェリの人気も上がっているように感じます。日本人になじみのある印象派人気は、以前から確固たるものがありますが、イタリア絵画が注目が浴びるようになったは最近のように思います。

今回のボッティチェリ展は、イタリア政府の全面サポートにより企画され、貴重な作品20点以上が東京に集った日本初の本格的な回顧展です。

数多くの聖母子像を描き細密な描写と赤や青、緑の鮮やかな色彩が施された華麗で気品に満ちた作品は、崇高な美の極致を感じます。また、聖書の一場面をダイナミックに描いた「東方三博士の礼拝」は、まさに傑作の呼び声高き作品で、右側に描かれた自画像から作品の自負を感じ、中央の聖母に素直に祈りを捧げる気持ちになりました。

また、弟子たちとの共同制作による工房作品には、師と弟子たちとの力量の差を感じるものの、主たる人物を自らが描ききることで、全体のバランスをたもっているように感じました。

今回、ルネサンスの巨匠たるボッティチェリの作品と共に、師匠のフィリッポ・リッピに子でありボッティチェリの最大の弟子にしてライバルであったフィリッピーノ・リッピの作品も20点あまり展示されています。フィリッピーノの人物像は、ボッティチェリの影響を強く受けながらも、着衣の柔らかな質感を色彩の微妙なコントラストで表現され、ボッティチェリとのライバルとしての実力を物語る作品です。

残すところ数日となる本展。東京での開催のみの貴重な展覧会は美術ファンにとって必見の価値を持っています。」

こちらは、国立西洋美術館の所蔵作品。秀作ではあるが、今回の展覧会での作品と大きく違いがわかります。ルネサンス絵画を多数所有する同館の常設展示もおすすめです。


カラヴァッジョ展・国立西洋美術館

2016年03月30日 | 【美術鑑賞・イベント】

東京アート旅、第3回目は、国立西洋美術館で開催中のカラヴァッジョ展です。

前回紹介したレオナルド・ダ・ヴィンチ展と次回ご紹介するボッティチェリ展に今回のカラヴァッジョ展の3展覧会は、日伊国交樹立150周年記念する展覧会で、イタリアを代表する巨匠が同時期に観賞できる貴重な展覧会となっています。

4月3日までなら、この三展覧会が観賞できますのでそれぞれの異なる画風と人生を味わえるチャンスですので興味のある方は、ぜひ鑑賞してみてください。

カラヴァッジョは、38歳でこの世を去り現存する真筆はわずかに60点あまり、その中に移動不可能な作品があり、今回の10点が集まった世界でも有数な展覧会と言われています。

また、カラヴァッジョの人生はボッティチェリやレオナルドと違い、気性の荒さ等も災いし裁判沙汰を多く、ついには殺人を犯し逃亡すると言う波乱万丈な人生を送っています。また、自分こそが真の芸術家の自負もあり、当時の居並ぶ芸術家も認めない人物でした。

しかし、彼の自負は間違いなくその芸術に現れており闇と光のコントラストの豊かさや神をも恐れぬ不敵とも思える画風は天才画家の証明となって、魔性とも思える存在に魅了されます。

トカゲに噛まれる少年や果物籠を持つ少年に観る細密に描かれた静物と陰影により柔らかに表現さる人物とのコントラスト、法悦のマグダラに観る地獄の人生からの救いを得たかのような恍惚の表情は生死の境界を感じます。そして、エマオの晩餐は光と影の表現が実に巧みで表現された人物に生き様を観るようでした。まさに、光と闇の表現においてレンブラントに並ぶ天才ぶりを感じました。

パトロンにより制作を保証された画家とは明らかに違うカラヴァッジョの世界は天才画家の光と闇を自らの人生を持って証明しているように思います。


レオナルド・ダ・ヴィンチ展・江戸東京博物館

2016年03月29日 | 【美術鑑賞・イベント】

東京アート旅の第二回目は、江戸東京博物館で4月10日まで開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の挑戦」展です。

おそらくは、日本人が一番観たいと思う作品がダヴィンチのモナリザではないかと思います。ルーブル美術館の「モナリザの微笑」が1974年。この1点の絵画を観るために150万人の人々が訪れました。この数は、アメリカのモナリザ展の来場者数に匹敵するもので、日本人がいかにモナリザ好きかがわかります。

今回の目玉である日本初公開の「糸巻きの聖母」は、モナリザにつながる傑作といわれ、モナリザの透明感の肌艶の技法の基になっていると言われ、また、モナリザに背景に似ているところも、そのつながりを感じる作品です。

また、科学者としてのダヴィンチの貴重な直筆手稿や素描など7点の初公開作品が展示されています。

ダヴィンチの真筆絵画は15点に満たないと言われ、海外でも公開も少ない点でも今回の展覧会は、糸巻きの聖母を観るだけでも十分の展覧会ですが、予想通り作品にたどり着くまでに45分もかかり、僕のアート旅には少し難しい展覧会でした。しかし、待って観る価値は十分で、聖母子の姿にしばしうっとりとしてました。

イタリア政府の希望により都内の博物館一館のみの希望により江戸東京博物館での開催となりましたが、糸巻きの聖母の見せ方には、美術ファンとしては少し不満が残りました。

人気の絵画に鑑賞が集中するのは致し方ないのですが、この手の鑑賞には、二つの通路を設けるのが最近のパターンで人の流れる横列と中央で観賞できる縦列が作れるスペースが十分とれる場所での開催がベストではなかったのかと思います。

当館関係者の不慣れさも感じられ、経験と工夫が必要だと思います。


浦沢直樹展・世田谷文学館

2016年03月28日 | 【美術鑑賞・イベント】

東京アート旅、第1回目は、世田谷文学館で31日まで開催中の「浦沢直樹」展です。

今回の展覧会を知ったのは、たまたま観た「クロスロード」と言う番組でした。あまり漫画を読まなくなった僕も、同世代の浦沢直樹さんの活躍には興味を持っていて、番組での密着レポートから、今回の展覧会の情熱をひしひしと感じ、今回のアート旅のプランに入れました。

閑静な住宅街の一角にある緑あふれる当館の入り口には、20世紀少年の主人公がお出迎え、館内には、閉館近い時間帯にも関わらず、世代を超えて多くのファンでにぎわい改めて作者の人気が伺えます。

デビュー前の高校時代の作品原画や初期の作品や人気作品の原画が展示され、壁面には生原稿が所狭しと並べられ圧倒的な物量で観る者に迫ってきます。もとより作品としてのクォリティーは誰もが認める彼の仕事を目の前にすると、画家以上の技と小説家や脚本家以上の豊かな発想などが、作品からひしひしと感じられました。

漫画家としての地位を芸術家の領域へと引き上げた展覧会と言えます。

展覧会のテーマである「描いて描いて描きまくる」家の冠を持つ者は、まさに、この姿勢があって、その地位を確立していくのだと実感しました。

残り3日となった同展。お近くの漫画ファンや浦沢ファンはぜひ浦沢ワールドを体験してください。そして、この展覧会の地方巡回をぜひ実現してください。



日帰り東京アート旅

2016年03月27日 | 【美術鑑賞・イベント】

本日27日、恒例となっている日帰り東京アート旅に出かけました。

アート旅と言っても、東京限定の貴重な展覧会を数軒ハシゴする弾丸ツアーなので、効率にまわる一人旅です。

今回はイタリア美術を旅する展覧会で、50+を使って観賞券1枚とランチ付き13,800円の日帰りツアーです。これを利用すると、のぞみ指定で一日アート三昧の旅が楽しめるお値打ちなツアーです。ただし、50歳以上の会員登録が必要ですが、同行者は50歳未満でもOKです。人気のツアーですので早めの予約をおススメします。

ルートは以下の通り

ボッティチェリ展・東京都美術館

カラバッチョ展・国立西洋美術館

レオナルド・ダ・ヴィンチ/天才の挑戦・江戸東京博物館

そして番外編として

漫画家の浦沢直樹展・世田谷文学館

の4展覧会を観賞。感想は後日順次紹介していきます。

 

 


DVD・マーシュランド

2016年03月26日 | 【映画・ドラマ・演劇】

映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。スペインのアカデミー賞にあたるゴヤ賞を受賞した傑作ミステリー「マーシュランド」です。

 

物語は、独裁政権の傷跡がのこるスペインのアンダルシア地方。マドリードから左遷された若い刑事ペドロとベテラン刑事ファン。祭の最中に二人の少女が行方不明となり、その後惨殺死体で発見される。同様な時間がこの地域で起こっていることを知った二人は、過去の事件を手掛かりに犯人を追う内に、貧困、差別、汚職、小児性愛、麻薬密売と町にはびこる悪が、二人の事件の行く手を阻んでいきます。

そんな中で、少女の誘拐事件が再び発生。二人は事件の真相と少女を救い犯人に辿りつくと言う内容です。

二人の個性的な刑事と田舎町を舞台に繰り広げられる追走劇が叙情豊かで、住人の様々な証言で構成された巧みなストーリーと自然の美しさが見事です。派手なアクションがなくとも、重厚感のあるワイルドさと後半で繰り広げられる疾走感あふれる追走劇に飽きの来ない内容に仕上がってます。

イメージとしては、ブラッド・ピットの出世作となったセブンを彷彿とさせるのですが、事件の真相にいきわたる伏線が、最後まで真犯人が誰が原題のマーシュランド(湿地帯)に入り込み、ぬかるみに足をとられて抜け出せない感覚を持ちました。監督の意図が犯人は誰か、再度見返してみたくなる作品です。


麗しきおもかげ・名古屋市美術館

2016年03月25日 | 【美術鑑賞・イベント】

日本最高峰の芸術大学と言えば、誰もが東京藝術大学と認めるところ。その歴史と芸術家の輩出において、他大学を寄せ付けない存在と言えます。

上野公園からほど近い場所に位置する同大学は、多くのコレクションを持ち、重要文化財も多数収蔵されています。

名古屋市美術館で開催中の「麗しきおもかげ・日本近代美術の女性像」は、一部で、東京藝術大学のコレクショの中から厳選された作品50点が展示され、日本で最初の洋画家・高橋由一の美人花魁や近代日本画の父である狩野芳崖の悲母観音などの重要文化財や東京藝大出身の巨匠たちの卒業制作などで構成されています。

先日、舟越桂展を観賞したこともあってか、中でも卒業制作の北原大莞の水の行方は、木彫に彩色された女性の髪が水の流れの中に同化したモダンで幻想的な作品で、大正6年に制作され、その若き才能に驚きと感動を覚えました。

二部では、東京藝大の前身である東京美術学校の卒業制作作品が女性像をテーマに展示されいます。明治、大正、昭和の初期作品の若き画学生の卒業制作作品は、細やかで艶やかな筆致により丁寧に女性像が描かれ、その女性像には作者の個性が輝き新鮮でした。

中でも、明治38年に選ばれた三浦孝の栄誉ならずやは、砂浜に立つ着物姿のうら若き女性の足元に倒れ伏す兵士の姿と小さな紫の花が咲き、美しさの中に戦争の悲哀と時代に対する作者の静かな主張を感じる作品でした。

その他の作品にも美しい女性像の中に、若き画家たちの時代に対するアンチテーゼを感じました。

狭義なテーマでありながら、今までにない試みを感じる今回の展覧会。名品と共に日本の芸術運動の先駆者としての大きな使命を抱いた若き芸術のパイオニアにぜひ触れてみてほしいです。


フリオ・ゴンザレス展・三重県立美術館

2016年03月24日 | 【美術鑑賞・イベント】

先日の舟越桂展と同時開催のフリオ・ゴンザレス展を鑑賞。

フリオ・ゴンザレスは、20世紀前半を代表する彫刻家で、僕自身もその名前を記憶に残すことはなかったのですが、スペインでアールヌ―ボの芸術運動に触れ、後に、その大半をフランスで過し、ピカソ、モディリアーニ、モンドリアンなどの画家たちを青年時代から親交を持ち、当初は絵画作品もあったそうですが、彼の彫刻の中でも革新的であった鉄の作品により、彫刻家としての地位を確立したそうです。

デフォルメされた仮面や手、抽象的な形づけられた立体作品は、鉄と言う素材を単なる塊を加工するだけではなく、鉄板、鉄管、棒、釘、ボルト、ビスなど、20世紀の工業化の時代を反映する素材を巧みに組み合わせ形づける、それまどの捏ねる彫る等の技法とは違う斬新的な試みで制作されています。

それは、舟越桂の作品が父保武と異なる木彫によるに対して、フリオ・ゴンザレス作品は、金工職人であった父の流れをくむ、鉄の作品にその特色があらわれています。

父と子の系譜を観れば、桂作品とフリオ作品は、まったく異なる系譜に思われるのですが、桂の作品には、父の精神的な部分を受け継ぎ、フリオの作品は父の伝統技法を革新へと進化させたように思います。二人の偉大な彫刻家の作品が同時期に展示されたことは、二人の親子の芸術の系譜を感じられます。


映画・リリーのすべて

2016年03月22日 | 【映画・ドラマ・演劇】

トム・フーパ―監督、エディ・レッドメイン主演の映画「リリーのすべて」を観賞

英国王のスピーチ、レ・ミゼラブルと話題作を届けて来たトム・フーパー監督。今度は、世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの日記を基に理解者でる妻と織りなす愛の物語を作りあげました。

舞台はデンマーク。風景画家のアイナーと肖像画家の妻ゲルダの充実した生活をおくる中で、ゲルダの女性モデルを務めたことで、眠っていた幼き頃からの女性としての意識が再び目覚め、アイナーは、女性リリー・エルベとして生きようとします。

夫アイナーを愛するゲルダは、妻以上の愛でリリーを包み込み性的適合手術にのぞむリリーを支えていく。性別を超えた深い愛の物語が展開されていきます。

リリーを演じるのは「博士と彼女のセオリー」で主演男優のオスカーを昨年受賞したレディ・エドメイン。連続受賞も予想された彼の演技が秀逸で、男性から女性に変化する心と体を見事に演じ切っています。その美しさは、もはや性別を超えた存在のように感じました。

妻のゲルダを演じたアリシア・ヴィンキャンベルは、勝気な妻として、愛する夫が夫でなくなる苦悩と葛藤を奥底に秘めながら、たった一人真の理解者として連れ添い愛を貫く姿に心打たれました。

二人に間に紡がれた愛の物語は、名作のひとつとして語り継がれていくに違いありません。


舟越桂 私の中のスフィンクス・三重県立美術館

2016年03月21日 | 【美術鑑賞・イベント】

舟越桂の彫刻作品との出会いは、僕がアートの仕事に携わる初めの頃で1990年代初期からの作品と記憶してます。日本彫刻界の巨匠・舟越保武を父に持つサラブレットは、父の作品とはまったく対照的に、西洋人の顔立ちに大理石の澄んだ眼の風貌と相反する半身像楠に彩色を施しデフォルメされた半身の作品を観て、静謐さの中に、心の奥底から突き動か去れるような衝撃を持ち、僕は、すっかりこの人のファンになってしまいました。

その後、東海地区の美術館のコレクションや大がかりな展覧会には足を運ぶようになりました。

今回の展覧会も、兵庫県立美術館からの巡回展ですが、舟越作品の素晴らしさは、同じ作品を何度見ても新鮮な感覚を持ちます。初期の作品には、日常の中の普遍的な事柄をテーマにした作品が多く、より具体的な人物像が展開されていますが、時を経るにつれ思想性が高まり、非現実的な人物へと変遷し行きます。

しかしながら、その作品は決して大きな変化がなく、緩やかでよどみない水の流れのように美しい内面的な変化が、多くのファンを魅了する要因だと感じます。

硬い楠を使いながらそのフォルムは和かで暖かく、施される色は、清らかで深く、うつろな瞳は遠く未来を見つめている。向かい合う時と作品から何とも言えない精神的な豊さを享受できる。

彫刻家・舟越桂と言う無二の存在をこれからも楽しんでいきたいと思ってます。


"郷ひろみ"という生き方

2016年03月19日 | 【エッセイ・コラム】

日本の歌謡界で今もなお、真のアイドルと言えるのは男性では郷ひろみ、女性では真松田聖子だ。そのアイドルとして、ぶれない生き方が、時代を超えて支持されるているのだと思います。

 

小学生から中学生にかけて、僕たちの世代は歌謡曲のど真ん中にいました。当時の郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎の新御三家の中で、一番の人気を誇っていたのが郷ひろみ。男の子にとって、郷ひろみの存在は、女子の憧れの中で、羨望の的であり、憎々しい存在でした。

成熟から遅い男子は、後に山口百恵、桜田淳子、森昌子の花の中三トリオから、スター誕生から生まれる女性アイドルにより、憧れの存在を見つけていきます。

歌謡曲からJポップへ時代がシフトする中で、かつてのアイドルたちはジャニーズを除き、その存在を青春の記憶へと追いやり、時代から消え失せていく中で、その輝きを増していくのが郷ひろみと松田聖子でした。

昨日のドキュメンタリ番組「郷ひろみという生き方」は60歳にしてアイドルであり続ける彼の生き方をくまなく示した貴重な番組でした。1981年の休業宣言でのNY生活で得た声を通して確信したと言うアイドルとしての自らの存在を証明するストイックな生活に、独特な歌唱と声質の裏にあるソプラノ歌手を彷彿とさせる発声法、秘密裏に行われた歌手としての宿命ともいえるポリ―プ切除と治療、2015年2月に行われたサントリーホールでのオーケストラをバックに行われたコンサートの舞台裏など、郷ひろみが郷ひろみであり続ける魅力の秘密が詰まっていました。

60を超えてなお、エンターティナ―の王道を歩き続ける郷ひろみ。いよいよ日本の歌謡史に唯一無二の存在としてその輝きを増していくに違いないと思います。


DVD・皇帝のために

2016年03月18日 | 【映画・ドラマ・演劇】

映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、韓国ノワールの最新作「皇帝のために」です。

日本では、最近人気も衰えつつある韓国映画。個人的には香港ノワールについで韓国ノワールは、かつての日本の任侠ものに近く心躍ります。

今回は、アイドル的存在だったイ・ミンギが、野心みなぎる闇組織のトップを目指す元野球選手イ・ファンを演じ、そのしなやかで鍛え抜かれた体で、スタントなしのアクションに挑んでいます。また、闇組織のボス・チョン・ソンハを演じるのは、ノワールの大作「新しき世界」でもおなじみのパク・ソンウンが演じ、二人の交流と対決を中心に血肉踊る内容となっています。

物語は、ノワール作品の王道とも言うべき抗争と裏切り、過去の因縁が交錯する展開ですが、イ・ミンギ初の濃密なベッドシーンや飛び道具を使わず、全て小刀を使用した迫力ある抗争劇が小気味よく展開されています。日本ではその過激さでR18指定となり、上映館も少なかった作品ですので、ノワール好きには必見の作品です。

 


二人の写真家の軌跡を追うドキュメンタリ―作品2編

2016年03月17日 | 【映画・ドラマ・演劇】

映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は写真家にスポットをあてたドキュメンタリー作品を二編紹介したいと思います。先ずは、無名の女性写真家の軌跡を追った作品「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」です。

 

 ある青年が、ガレージオークションで落札した大量のネガ。そのネガを現像した一部の作品をブログにアップすると大反響を呼び、メディアが取り上げたことで写真集出版、NY、パリ、ロンドンで展覧会が開催されることに、15万枚以上の作品を手がけながら、生前1枚も世に出すことがなかった女性ヴィヴィアン・マイヤーの生涯をたどるドキュメンタリーです。

都会で生活する様々な人々の向けられる視線や想像を超える街中にある断片的な光景は、まさに無名の天才写真家として称賛に値する傑作ばかりです。

作品のクォリティーもさることながら、彼女に関わった人々の証言による明らかになる香子を知ればしるほど彼女のミステリアスさは増し、作品の魅力をさらに深みを増し、ヴィヴィアン・マイヤーと言う女性に魅了されます。偶然の出会いにより発見された無名の天才写真家の作品を観賞しながら、同時に彼女の美への探求心を感じとってください。 

もうひと作品は、巨匠ヴィム・ベンダー監督が一枚の写真の出会いにより結実した、世界的に有名な写真家セバスチャン・サルガドの軌跡を追った「セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター」です。

数々の賞に輝き報道写真家の地位を確立した神の眼を持つ写真家が、ある戦地での体験を境に環境活動家となり大自然の偉大さを撮り続ける軌跡を描いています。サルガドの作品と監督自らが同化していくようなモノクロームの世界が魅惑的でサルガドの静かなる主張が心震わす作品となっています。

無名と有名の二人の写真家が織りなす光と影の世界をぜひ堪能してみてください。


DVD・アメリカン・ドリーマー 理想の代償

2016年03月16日 | 【映画・ドラマ・演劇】

映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。NYのオイルビジネスにかけた男の夢と悪夢の30日間を描いた「アメリカン・ドリーマー 理想の代償 」です。

舞台は1981年のニューヨーク。犯罪と暴力が氾濫するこの町で、クリーンなビジネスを信条にビジネスを展開してきた移民のアベルとその妻に、同業者の暴力による嫌がらせやオイルトラックの強奪、脱税疑惑などが襲い掛かる。アベルは、家族への脅迫にも屈せず銃も持たず見えない敵と戦っていくと言うものです。

監督は、ロバート・レッドフォードが海難者を演じて話題となった「オール・イズ・ロスト ~最後の手紙」のJ・C・チャンダー。ビジネスへの揺るぎなき信念を持つ夫と支える妻が、困難を乗り越えていく過程を静かに深く描き切り成功劇を人間劇へと変化させた重厚感のある作品です。

夫アベルを演じたのは、コーエン兄弟監督の「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」の主役を演じたオスカー・アイザック。実は、本作のオファーは、妻役のアナを演じたジェシカ・チャスティンがジュリーア―ド時代に同級生だった彼を監督に直訴したことで実現。名門演劇学校出身者の二人だけに、その演技を随所に光るものを感じました。

最近では、アメリカンドリームも色あせてきているアメリカでのサクセスストーリー。移民の夫婦が最大の危機と最大の賭けに出て如何にして成功を収めていくか、二人の間で交わされる言葉と行動に家族としてビジネスパートナーとして熱い感情がスクリーンに美しくあふれていました。


DVD・フレンチアルプスで起きたこと

2016年03月13日 | 【映画・ドラマ・演劇】

映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、カンヌ国際映画祭ある視点部門・審査員賞など外国映画賞で最多15冠に輝いた「フレンチアルプスで起きたこと」です。

42歳のスエーデン監督オストルンドによる長編作は、日常の中で起こりうる人間の危機に対する行動と心理を家族と言う身近な共同体に投影した、気づきそうで、なかなか気づかない視点で描いた傑作です。

フランスの高級リゾート地にスキーバカンス出かけた4人家族が人口的な雪崩により夫が家族をほっておいて逃げ出したことで、妻と二人の子供との間でぎくしゃくし始め、家族の間に生じた溝を埋めようともがく様を描いています。

和気あいあいでバカンスを楽しんでいた家族に起こるハプニングの中で、夫、妻、子供たちのそれぞれの感情のぶつかり合いが、誰もが身につまされる出来事で、そこで出会う人々の交流が加わって事態は悪化、家族の行く末を我がことのように心配する体験を味わうことができ、感情や心理状態を照らし合わせながら共感を生む作品だと感じました。