映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、ニューヨークの都市計画に変革をもたらした女性の闘いを描いた「ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命」です。
1950年代のアメリカでモダニズムを背景に自動車中心の都市計画が行われた時代に、1961年に「アメリカ大都市の死と生」という著書が刊行されました。その著者は、カナダ在住の一主婦であるジェイン・ジェイコブス。建築家でもない彼女が世界的な影響を与えるまでに至った、ニューヨークの都市計画撤廃運動の軌跡を描いたのが本作です。
モータリゼーションの流れの中で、低所得層の住宅街であるスラムを破壊し、巨大な団地群が全米で次々に建てられました。やがてその流れはアメリカ都市計画の負の遺産となりゴーストタウン化するのですが、よく目にするダイナマイトによる巨大建築物の爆破は、実はそうした背景によるものでした。
現在のニューヨークは、そうした全米の都市計画から逃れ、高層ビルと雑多な街並みが共存する個性的な町として世界中の人々を魅了しています。そんな今を守ったのが、実はジェイコブズと町に住む市民による運動によりもたらされました。
都市計画の帝王であったロバート・モーゼスと建築家集団に、真っ向から挑み、町の本来あるべき姿を論じたジェイコブズ。彼女が持つ都市の理念は、人々の生活の呼吸がもたらすコミュニティーが根本で、失われつつある町のコミュニケーションの大切さに気付かせてくれます。
大型商業施設の誘致による商店街の空洞化により町がゴーストタウン化する日本でも、ジェイコブズの理念が必要であるように思います。そして、地方でも人口の流入流出により、以前のコミュニティー継続は難しくなってきました。ジェイコブズが持つ視点は、とても大切であり新しいコミュニティーの形成が必要になってきます。
その意味でも、普遍的なコミュニティーの理念を学ぶことができる有益な作品といえます。